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意思決定との向き合い方。ベストはないがベストエフォートはある

この note は プロダクトマネージャー Advent Calendar 2022 の12日目の記事です。

こんにちは!ひまらつです。

プロダクトマネージャーをしていると、日常的に意思決定が求められます。プロダクトの方針から細かい仕様まで、その内容は大小さまざまですが、どの意思決定も大変でとてもエネルギーが必要です。

このnoteでは意思決定の何が大変で、その大変さにどう向き合えば良いのか、最近自分が考えてることを整理してみたいと思います。

そもそも、なぜPdMが必要なのか

個人や少人数のチームでサービスを開発しているとき、PdMは必要ありません。規模が小さいうちはメンバー同士で目線を共有できるため、やることが明確だからです。

サービスが成長してチームの規模が大きくなってくると状況が変わります。エンジニアやマーケティング、デザイナー、セールスなど、関わる人数が多くなり、それに伴い意見も多様になってきます。例えば機能追加のとき、「エンジニア的には保守運用を考慮した実装にしたいが、マーケ的にはインパクトを最大化したい」といったように、立場によって異なる意見が出てくるようになります。

全員が自分の領域からプロとして意見を述べる

さらに、サービスが成長=ユーザーが増えているので、要望の数自体も多くなっています。すべての要望に応えることはできないので、どの問題を優先して解決するか、判断することも必要になってきます。

このように意思決定が複雑化してくると、全体を見つつプロダクトの方向性を判断する役割が必要になってきます。こうしてPdMという役割が求められます。

どう意思決定するのが良いか

では、複雑性の高い状況で、どう判断するのが良いのでしょうか?
アンチパターンから述べると、避けるべきなのは「合議制で決めること」です。

合議制は各所の意見を聞き、それぞれの意見をちょっとずつ採用する方法です。全員の意見が汲めてその場は丸く収まるかもしれませんが、そうして生まれるアウトプットは誰も望んでいないものになります。

「いろいろな背景を理解した上で、PdMが決める」とするのは良い選択肢です。いろんな人に意見を聞くが、最後はPdMが決める。角のとれた丸い意見ではなく、誰かの課題に刺さる尖ったものを作りやすくなります。

ベストはないがベストエフォートはある

「PdMは決める役割」とは言いつつも、何かを決めるのは難しいものです。
自分が知らない情報、分かってない知識があるかもしれません。プロダクトの方向性など大きな判断で間違えるとダメージが大きいし、時間をかけて開発したものが水泡に帰すかもしれません。

こうした失敗を恐れすぎると何も決められない状態になります。そこで、自分がおすすめしたい心構えが「ベストはないがベストエフォートはある」です。

複雑性が高い昨今の状況で、「ベスト」を達成するのは非常に難しいです。ユーザーのすべては理解できないし、市場も明日には変わってるかもしれない。判断の精度を高めていくには大量の調査や情報が必要で、時間がかかります。すべての意思決定に好きなだけ時間をかけられるわけではないので、意思決定の精度とスピードの折り合いをどこかでつける必要があります。

「ベストエフォート」とは、その時にできる最大限良い判断をしようと努めることです。プロダクトや市場の状況、関係者の意見などを踏まえつつ、意思決定のタイミングで最善と思えるものを判断します。
後に新しい情報や知識が増え、その時下した判断が間違ってることが判明しても、それは悔いる必要はありません。そこから修正するか、次の判断に活かします。

複雑な状況下では、考えすぎるよりも行動することで道が開ける場合も多いです。100点の「正解」に固執するのではなく、70点や80点でも前に進みながら学習していくことを大事にしたいと思っています。
(特に自分は新米PdMなので、打率よりも打席数を増やしたいと思っています。)

良い意思決定をするためにできること

ベストエフォートとは「間違えても仕方ないよね」と、いい加減に判断することではありません。意思決定の精度を高めるためにできる限り努力し、その上でわからないことは動きながら見つけていこうとするマインドです。
意思決定の精度やスピードを高めるために、なにができるでしょうか?

多様な「観点」を仕入れる

書籍「多様性の科学」では、かつてのCIAの組織の問題などを振り返りながら、人間の認知の限界について述べられています。

人間は間違えやすい生き物です。どれだけ賢い人でも価値観や環境、バイアスなどの影響を受け、問題のすべての側面を理解することはできません。

自分一人の頭で深く考えてもこれは解決されません。必要なのは観点を獲得することです。チームにいる各職種のメンバーと話し、それぞれの観点を共有します。観点を増やしていって、図中の枠の中をできるだけ埋められるようにします。

観点について、少し具体例に書いてみます。
私は仕事でB向けのSaaSのプロダクトを担当しており、そのプロダクトは主にエンジニアとマーケターの方に使っていただいてます。その場合、以下のような観点があるといえます:

  • エンジニア、マーケターなど、利用するお客さんの職種ごとの観点

  • 事業会社、制作会社などお客さんが身を置く業界の観点

  • ツール選定者、決裁者など導入に関わる役割ごとの観点

チームと話したりユーザーにインタビューしたりして、自分に足りない観点を普段から探して補完しておくと、意思決定がしやすくなります。

「何を決めればいいか」を把握する

意思決定のタイミングでは「今、何を決めればいいか」を明確にしておくと決めやすいです。逆に、これがないと「色々情報は出たけど、それでどうするんだっけ…?」と微妙な感じになります。

例えば何かを決めるミーティングをする際、議事録の先頭に「このミーティングで決めること」を明記するなど、やること自体はシンプルです。決めることを明確にしていると、会の進行もやりやすくなります。

ミーティングで話していると盛り上がって全然関係ない話題に逸れることも多いので、自分へのリマインドとしても役立ちます。

「決められない」を決めるのもOK

判断のための情報を集めても決め切れない時があります。「本当にこれで決めて良いのかな…」となんとなく不安で、決断ができない時です。

こういうときは、「あと何の情報があれば決められるか」を考えると次の一歩を動き出しやすくなります。
データが不足してるから決められないのであれば、データの探索を行う。判断が大きすぎて怖いのであれば、小さく始めたり、インタビューでニーズを追加検証する。「今この時点では決められない」を決めるのも意思決定の一つだと思っています。

「何が足りないか」という切り口で考えてみると、実は情報は揃っていて、ただ不安なだけだったんだな、と自分の内心を理解できる時もあります。その時はベストエフォートの考えでとりあえずやってみて、動きながら検証していくのもアリだと思います。

余白をつくって直感しやすい状況を作る

意思決定は創造的なアクションなので、良い判断をするために直感が働きやすい状況を整えることも大事です。

Netflixの人気番組「アート・オブ・デザイン」で、Instagramのデザイナーのイアンが特集されている回があります。日本を訪れるシーンで、彼はこう言っています。

次のアイデアがひらめくとかそんなことは望んでいない
ただ刺激を感じ心にスペースができればいい
戻った時に息をつけて新たなつながりを感じる
そんな余地があればいい

Netflix「アート・オブ・デザイン」シーズン2より

「心にスペース」とは抽象的な言葉ですが、感覚としては理解できます。机に座ってタスクに追われている時よりも、公園を散歩しながら考えている時の方が閃きやすい、みたいな感覚は誰もがあるのではないでしょうか。

余白の作り方は人によって異なるかもしれません。よく言われるのは瞑想や散歩でしょうか。植物に囲まれた場所がいいとか、少しざわついたカフェの方がいいとか、人によって好みは分かれるでしょう。
大事な判断をする際は、できるだけそういった環境に身を置くようにしています。

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございます。PdMになってから、意思決定をする機会がとても増えました。明確な正解がない場合も多く、何かを決める難しさを日々感じています。この note では意思決定との向き合い方について、最近考えていることを整理してみました。

完璧に正解を出し続けるのは無理で、それを自分に求めるとしんどくなってしまいます。ベストエフォートの精神で判断し、長い目で見て判断の精度を上げていければ良いのかなと思っています。

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