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➋暦年齢より生命バイオリズム


樹木が年輪を刻むように、人も年齢を重ねていきます。老衰と老成のちがいは、生きざまによって鮮明に現れます。


思わず居住まいを正した、テレビのドキュメンタリー番組を観ました。
元日草々に大地震に見舞われた能登の珠洲市仁江海岸で、「揚げ浜式」塩づくりを営む被災者を追ったドキュメントです。


主人公の山岸順一翁は88歳。国の重要無形文化財に指定された伝統の製塩法を伝承する「浜士」(はまじ)と呼ばれる職人です。二棟ある工場の一つは地震で傾き、海水を汲み取る海岸は、海底が隆起して100m先まで遠のきました。


被災した状況と88歳という高齢から、廃業を決意するのが自然の流れですが、山岸翁は継承者がいなくなった400年の伝統技術を絶やさないために、工場の再建と事業の継続を決意されたのです。工場の修復費用は4000万円の高額ですが、融資を仰ぐのに怯んだ様子はありません。


公務員を定年退職したのちに起業されたそうですが、揚げ浜式製塩法は、「潮汲み3年、潮まき10年」と言われるほど、熟練の技術と重労働が要求されます。江戸時代初期から連綿と続く地場産業の火を消してはならないとの使命感と郷土愛が、第二の人生に挑むきっかけになったそうです。

塩田に海水を撒いて乾燥させた塩は、塩分濃度を高めてから濾過し釜焚きをします。その燃料も、山岸翁は自ら軽トラックを運転して、重さ20㎏以上もある廃材を山積みにして運んでいます。

伝統産業を絶やしてはいけないという使命感が、体力の源泉になっていると想像します。潮風にさらされ、深く刻まれた顔のシワが加齢の重みを物語っています。


人の年齢は暦ではなく、目標と使命感によって熟成されることを痛感させられました。

 「人は得るもので生計を立て、与えるもので人生を築く」
       (ウィンストン・チャーチル)

#能登珠洲市 #揚げ浜式塩田法 #山岸順一 #暦年齢 #使命感  

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