アラサー、人生で初めて帽子を買う

やっっっすい麦わら帽子だけども。



ルッキズムという言葉が広まって久しい。
容姿の美醜で優劣をつけるのはおかしいと頭では分かっている。
それでも人間は皆、外見が美しくなりたいと願ってしまう。
背が高くなりたい、細くなりたい、鼻が高くなりたい……などなど。
私は、背は低く、痩せてもおらず、鼻も低い。
外見の美しさの自信など何もない。
ただ、実はひとつだけ、現代日本で一般的に望ましいと言われる外見的特徴を有している。

顔が、小さい。

世の中、小顔メイクやら、小顔効果やら、顔を小さく見せたいという人々の願う言葉に溢れている。
そういう人からすれば、生まれつき顔が小さいなんて羨ましいと思うだろう。
私からすれば、顔は普通の大きさでいいからもう少し鼻が高いほうが、とか考えてしまうのだけど。
人間というのは無いものねだりだ。
この顔が小さいというか、首から上のパーツが小さいというか、というのは見た目はともかく、実は生活面で少し困ることがある。
少し、なんだけれど、確実に困る瞬間がある。
顔や頭に身につけるもののサイズがとにかく合わない。

最初に直面したのはメガネフレーム問題だった。
メガネ屋で何も考えずに手に取って身につけると、すぐずり落ちる。
首を動かしたら吹っ飛んでいく勢い。
いつぞや、zoffになんとなく立ち寄ったら女性店員がすっ飛んできて「お客様、なんてっ、お顔が小さい!!お客様でしたら、こちらのコーナーからお選びいただくとよろしいかと!もしくはデザインが良ければキッズから選んでいただいても……」と、長々と説明された。
そんなに小さいんか、、、と少なからずショックだった。
最近は、JINSが形状記憶フレームを出してくれるなど、顔が小さい人間にもメガネを選べる機会が与えられてありがたいことである。

次は2020年以降コロナ禍のマスク問題。
普通サイズのマスクでは大きすぎる。
横にマスクがはみ出るわ、上も下もガバガバだわ、ウイルスも細菌もPM2.5も花粉も入りたい放題。
必ず、子供用とか小さめとか書いてあるものを購入しなければならないため、我が家は夫用の普通サイズと妻用の小さめサイズの箱が両方玄関に並んでいる。
マスクの供給量が落ち着いて以後は、カラーバリエーションや機能性を重視した、差別化商品がスーパーやドラッグストアに並ぶようになったけれど、全部普通サイズ。
どれひとつ、買えやしない。
いや、別に、カラフルなマスクを付けたいとも思ってないけど。
一番安くてコスパの良いやつでいいけど。
でも、ねえ、うん。
という何とも言えない気持ちでドラッグストアのマスクコーナーに佇んでいる。

これは顔や頭の大きさと関係あるのか分からないが、口も小さい。
顎関節症で縦に開きにくいというのはたまに聞くけど、私は単純に横幅が小さい。
おかげさまで歯が入りきらず、口の中の歯並びはとっ散らかっている。
最近、ついに決心して矯正歯科に行き始めたけれど、とにかく器具が入らない。
これほど口が小さいことを恨んだことはないけれど、そもそも口が小さくなければ歯並びはもしっちゃかめっちゃかにはなっていないのだ。


などなどと、顔や頭が小さすぎても困ることはあるのよ、という話を続けてきたが、本題。
帽子がとっても似合わない。
いやいや、メガネやマスクがつけられないとか、歯医者の治療が難しいとか、そんなのに比べたら似合わないなんて大したことないでしょ、って思うだろう。
私もそう思う。
それでも、何となく友人とショッピングモールに行って、何となく帽子屋に立ち寄って、何となく被って見るたびに、(帽子が歩いてるな……)と虚無の顔になって、そっと元の場所に戻すのだ。
ということで、ファッションアイテムとして帽子を買うことは一度もなかった。

ただ、帽子はファッションアイテムだけでなく、実用品としての面もある。
日差しから頭や顔を守ってくれる機能だ。
日除けのための道具として、帽子の他にメジャーなものが日傘である。
私はずっと日傘を使ってきた。
……というのは、ちょっと嘘で。
日傘の最大の難点は手が塞がることだ。
普段からリュックサックで生活し、すべてのボトムスにポケットをつけることを義務化しろと喚き、両手が空いていることを大切にしている私からすると、日傘をさすのは実は結構ストレスだったりする。
なので、ものすごく暑い時期以外はなかなか使う気持ちになれないのだ。

最近、一日一時間ほど散歩をしている。
ダイエットに励んでいるので、運動量の確保という意味でもあり、太陽光を浴びてセロトニンを増やしたいというのもある。
ただ、紫外線をがんがんに浴びるのはさすがに望ましくない。
日焼け止めは塗ってるけれど、日傘をさす?
いやいや街中とはいえ一応ウォーキングですよ。
何より日傘をさすことが億劫。
やっぱり、帽子を買うべきか。

別にニートで、誰かに会うわけでもない。
※ニートというのは正しくない。失業給付の申請やハローワークの登録は先日終えたので、元気な失業者である。
似合ってなくてもいいんだから。
近所のショッピングセンターの適当な店で、適当な麦わら帽子を買った。
1600円(税抜き)、帽子好きな人からしたら、はあ?って言われそう。
一応、大きすぎず、でもつばは広がっているので、顔や首を少しは守ってはくれそうだ。
想像通り、頭の大きさに対して緩いので風で飛ばされそう。
一緒に100均で帽子と服を留めるクリップを買った。
100均の子供用品コーナーに置いてあったのは秘密である。
実際に、被って歩いてみると、そこそこ便利だった。
まだ強風の日に遭遇していないからかもしれないけれど。
ということで、実用性全振り、スニーカー、ポケットのついた動きやすいズボン(あえてボトムスなどとおしゃれなことは言わない)、そして麦わら帽子というお散歩スタイルが誕生。
これで行くのは、近所のショッピングセンターと公共図書館だけだから許していただきたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?