Hikaru IWAKAWA

岩川 光(いわかわ ひかる) 音楽家:ケーナ奏者、作曲家、マルチ奏者、ケーナ製作家 h…

Hikaru IWAKAWA

岩川 光(いわかわ ひかる) 音楽家:ケーナ奏者、作曲家、マルチ奏者、ケーナ製作家 https://hikalucas.wixsite.com/hikaruiwakawa

最近の記事

「ホンモノのケーナ奏者」になった時の話

 2008年、北京オリンピックの最中、僕はボリビアのラ・パスにいた。高校の修学旅行で韓国に1週間行った以外は海外経験がなかった当時の僕にとって、初めての、しかも単身での海外長期滞在がこの富士山より標高の高い町だった。当時は、メール1通送るのにわざわざ往復1時間バスに揺られて中心街まで出かけて行ったと記憶している。  この町で色んなことを覚えた。そして、日本ではなかなか起こらない出来事に数多接したおかげで、大概のことには物怖じしなくなった。ドアが1枚無いタクシーや、銃で撃たれて

    • 大切なこと

       経験談が続いたので、ここでひとつぐっと抽象度を上げた話を書いてみたいと思う。  僕はこれまでお客さんとの距離が割と近い場所で演奏することが多かったし、たまにインタビューなんかをしてもらう機会もあったりするので、自身について他者から色々と訊ねられて、答えなきゃいけない時がしばしばある。「ケーナを始めたきっかけは?」なんてのはこれまでに数千回は訊かれていることだから、もう決まったいつもの内容を、所々端折ってみたり、少しばかりドラマチックに語ってみたりしながら、自分自身も飽きな

      • 3人のホルヘの話

         「石を投げればホルヘに当たる」と言われるほど、たくさんのホルヘがいるスペイン語圏のアルゼンチンで、僕にとってかけがえのない大切なホルヘが3人いる。そのうち2人は日本はおろかアルゼンチンでさえ知る人ぞ知る存在だが、最後の1人はケーナを吹く人やアルゼンチン音楽が好きな人にはおなじみかもしれない。  ホルヘ・ロレフィセさんは音のマッサージ師である。 あんなことやこんなこと、そのほかにも(これもいつか書くが)コロンビアのシャーマンに全身燃やされるなどとんでもない経験をいくつもした

        • コンドルと繋がった時の話

           エステバンさんとのツアーはまだまだ続いた。  サン・マルコス・シエラスでの生まれ直すような不思議な体験から10日も経たぬうちに、今度は1500km離れたパタゴニアの町サン・カルロス・デ・バリローチェにいた。南米アルゼンチンにとっての南は、日本にとっての北だから、津軽衆の僕には澄んだ空気と水の清らかさが肌になじみ、初めて訪れたようには感じられなかった。着いた瞬間に「ここに住みたい」と思ったほどだった。    ところで、サン・マルコス・シエラスで出逢ったコメチンゴンの爺さんとは

        「ホンモノのケーナ奏者」になった時の話

          パチャママと出逢った時の話

           2017年10月末、僕は音楽考古学博士のエステバン・バルディビアさんとのツアーでアルゼンチンのコルドバ州プニージャ地方にある集落サン・マルコス・シエラスにいた。  初めて訪れたその村は、しばしば「アルゼンチンで最もヒッピーな場所」と言われるだけあって、到着した瞬間から異様な興奮を僕に与えてくれた。裸足で歩く人々、パロ・サントとマリファナが混ざった異様な芳香、あちこちで揺れるハンモック… 通りでは「鶏卵10個やるから玉ねぎを3キロくれ」などといった会話が聞こえた。  エステ

          パチャママと出逢った時の話