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リーダーは作れないが、育てられる。~リーダーとマネジメントの違い~

よく「リーダーとマネジメントの違いは何か」という問いを目にすることがあります。

私も自分でそれを説明する立場になるまでは、「なんとなくチームを牽引する人」というイメージで、その違いを言語化することができませんでした。

しかし、HRを管掌する立場になり、素晴らしい書籍に出会い、多くの先人からの教えを受け、ようやく自分の言葉で語れるようになってきました。

今回は、「リーダーとマネジメントの違い」「優れたリーダーを輩出するために、他者は何が出来るのか」といった点に触れていきたいと思います。


「リーダーシップの旅」が語るリーダー論

リーダーとマネジメント、その曖昧な境界線

早速ですが質問です。以下のように評される人物は、リーダーでしょうか?マネジメントでしょうか?

フォロワーを束ね、ベクトルを合わせて、求められる方向に導く




答えは、「マネジメント」です。少なくとも私はそう理解していますが、社内で研修をやった時も約8割の方は「リーダー」と答えました。

唯一絶対の答えはありませんが、ここで言いたいことは「それだけ両者の境界線が曖昧」であることです。

この章では、「リーダーとは何か」について、私がリーダー論を考えるときに特に参考にしている「リーダーシップの旅」という書籍の内容をベースに説明していきたいと思います。

①リード・ザ・セルフ(自らをリードする)

本書では、「リーダーシップの旅」は3段階に分かれるとしていますので、簡単にそれぞれの段階を見ていきましょう。

・自らの抑えられない「好奇心」と「使命感」に押され、「夢」を持ち、不確実性の伴う「旅」に出ている状態。
・言い換えると「どうしてもやりたい」という気持ちがあり、「吹っ切れ」ている状態。
・この時点ではまだフォロワーはいない。

この段階が「リーダーとマネジメントの違い」を規定する、最も重要な段階です。

  • 「なんだかよく分からないけど、どうしてもやりたい・成し遂げたい」という想いに突き動かされているか?

  • 「他者に評価されたい」とか「会社にやれと言われたからやる」とかではなく、「自分起点」になっているか?

この質問に対して「YES」であるならば、貴方は既に「リーダーシップの旅」に出ています。

②リード・ザ・ピープル(人々をリードする)

・「リード・ザ・セルフ」を体現する自分に「エネルギー」を感じ、「自発的に」ついていこうとするフォロワーが現れている。
・自分自身は責任感を覚えながら、先頭を歩み続けている。

この段階は、自分自身は「どうしてもやりたいこと」をやっているだけなのに、それに対して何故か応援してくれる人が現れている、という状況です。

  • 自分の夢が周囲の人たちに伝播し、その夢が彼らの夢になっているか?

  • そのフォロワーたちがあたかも「自分の夢」のように貴方の夢を語っているか?

この本の著者の一人である野田 智義氏はこの状態を「リーダーとフォロワーの共振現象」と表現しています。

比喩的に表現するならば、「自分はただまっすぐ歩いていただけなのに、振り返ったら、何名もの人が同じ道を歩いている状態」ですね。

③リード・ザ・ソサエティ(社会をリードする)

・フォロワーの数が増え、大きなうねりとなり、巨大なパワーをもって社会を変革している。

そして、この「リード・ザ・ピープル」のうねりが極めて大きくなった状態、それが「リード・ザ・ソサエティ」という最終段階になります。

例えばキング牧師が20万人の前で語った「I have a dream」。あの主語が「We」ではなく「I」であるのは、まさに「リード・ザ・セルフ」の延長線上にあの歴史的演説があることを表現しています。

多くの人が「リーダーになんてなれない」と思ってしまうのは、この「リード・ザ・ソサエティ」まで辿り着いた人をイメージしてしまうからです。

でも、その人だけが「リーダー」なのではなく、「言語化出来ないけど、どうしてもやりたいこと」を持ち、それに向かって突き進んでいる人はみなリーダーである。この書籍はリーダーをそのように定義しています。

リーダーはmanageはせず、emergeする存在

冒頭の表現が「リーダー」ではない理由

ここまで読んでいただくと、冒頭の表現がなぜリーダーではないのか、ご理解いただけたかと思います。

フォロワーを束ね、ベクトルを合わせて、求められる方向に導く

リーダーは「束ねる」ことも「合わせる」ことも「導く」こともしません。これらは全て"manage"です。

先頭を走り、自分の夢を語り続ける。

ガンジーが塩の行進をしているとき、一番後ろで遅れかけている人や、辞めようとする人に「行けるよ、大丈夫」と声を掛けたでしょうか?

塩の行進があれだけの人数になったのは、こういった役割を果たすマネジメントのお陰もあったかもしれませんが、リーダーに期待してはいけないのです。

つまり、リーダーは生み出せない

この論理を正とする場合、論理的帰結として「リーダーを生む」ことが不可能であることになります。

「よく分かんないけど、どうしてもやってみたい・成し遂げたいこと」は自分の中からしか生まれません。他者や社会・世間が起点となった時点でそれは「よく分かんないけど」とはなり得ないのです。

ペンシルベニア大学のR・J・ハウス氏は、自分の声に従ってリーダーとなった人を"Emergent Leader"と表現し、他者から選ばれた"Elected Leader"や "Appointed Leader"と明確に区別し、Emergent Leaderこそが真のリーダーである、としています。

では、他者は企業は、何も出来ないのか?

となると、「素養があるリーダーが入社し、育つのを見守るしかない」という身も蓋もない結論になってしまいますが、実はそんなことはありません。

以下に、「リーダーが生まれ、育ちやすくなる」ために企業側が出来ることを紹介します。この中で特に③が、あまり気付かれていないのではと思っています。

①自己との対話を進める(社内コーチング)

「リード・ザ・セルフ」の旅に出るためには、自分がどうしてもやりたいことを表現してくれる「自分の内なる声(inner voice)」に耳を傾ける必要があります。

ですが何の手助けもなく、このinner voiceを聴ける人は少なく、また聴こえても色んな事情から無視してしまうこともあります。

そのため、社内にコーチング機能を持ち「自己との対話」を促すことで、「リーダーシップの旅」に出かける人を増やすことができます。

なお、セルソースでは下の「CellSource HR Balance」を使って1 on 1を行っており、各個人のPurposeやMissionを言語化してもらっています。

この結果、自らのやりたいことに気が付き、最終的に転職した方もおられますが、私はとても社会的に意義がある、素晴らしい結果だと思っています。

https://www.cellsource.co.jp/recruit/workstyle/

②アンラーニングさせる(社内コーチング)

本書では、組織が破滅に向かう一つの理由に「過去への過剰適応が、現在の環境との乖離を生むこと」が挙げられていますが、個人もまさにそれで、年を取れば取るほど、経験を積めば積むほど、過去の価値観や成功体験に縛られます。

①と同じ手法になってしまいますが、社内コーチが時に「厳しい問い」を投げかけることで、過去の呪縛から解き放たれ、新たな自分になることで、「どうしてもやりたいこと」が見つかる可能性が高まります。

③「ポテンシャル・フォロワー」を増やす(相手を絞らずにリーダー研修をやる)

リード・ザ・ピープルの定義は「フォロワーの有無」が基準でした。

つまり、逆説的になりますが、「フォロワーの存在がリーダーシップの程度を規定している」と言えます。

こちらの動画を見たことがある方もおられるのではないでしょうか。

最初の一人が踊っているときは、皆が冷ややかな目線を送っていますが、二人、三人となったところから一気にムーブメントが起こります。

つまり、「フォロワーなき世界にリーダーは生まれない」。

皆さんも経験あると思いますが、「私はこの人についていきたい」や「夢に賛同する」といったことを表現するにも勇気がいります。特に日本人はそのあたりを恥ずかしがることが多い。

そんな時、「リーダーの気持ちが分かり、フォロワーの重要性が分かっているメンバー」で溢れる組織だったらどうでしょうか?

一人リーダーが自然発生したら、一気にフォロワーが集まるかもしれません。そのリーダーが一人で潰れてしまったり、いなくなってしまう未来とは企業の成長力が雲泥の差です。

なので、「リーダー研修」を「自然発生済のリーダーだけ」に絞る必要は無いのです。逆に、そうでない方が寧ろいいのです。

「私はフォロワーである」と表現することが勇気の連鎖となることを知ってもらい、全員がリーダーにもフォロワーにもなれる、そんな組織に出来たら最高ですね。

どんなリーダー研修をやればいいのか、という所はまた今度に。ご興味ある方はご連絡ください。

おわりに

このnote記事は、私が主宰する社内のリーダー研修で、対象メンバーから問われたことで生まれたものです。

その問いに対して自分で改めて考えを深め、得た気付きを纏められました。

自分がやっている研修の中でも「問うこと」というテーマが含まれているのですが、今回改めて「問い」の力を感じました。

「問う力」が鍛えられた会社は、恒常的に勝ち続けるのではと感じ、「"問う力"が高まる仕組み」を考えてみたいと思いました。

いつもよりだいぶ長文になってしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました!

では、また来週お会いしましょう。

細田 薫


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