【短編小説】MOON DREAM
彼は引くこともなく、真っすぐな目で私を見ている。
「ほんと?センセ」
私は彼の髪に手をかけた。彼はぐっと机に寄りかかる。
香水のほのかな匂い。彼の汗の匂いと一緒に。眩しい。私は目が見えないのか。
太陽が沈んでいく前の光だ。
このまま暗闇になったらどうだろうか。
窓の外を見る。
彼と私だけの世界。
眩しい。
くらくらする。
始業のチャイムが鳴っても、彼はいない。
私は彼のことを日記に書くときは「彼」と書いている。
私にとって彼は生徒ではない。
もう、“男“だ。
何百人といる中