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お風呂そうじの3000文字。

夜明けの息吹を感じる
はじまりの朝。

お日さまが折り返し地点の
昼下がり。

お月さまと宵闇の
静けさをむかえる夜。

それぞれの時間で
異なる表情を
見せてくれる

バスルーム。

春の昼さがり部屋のなかの
日差しはやさしくて。

うとうとと、心が眠くなります。

お風呂そうじの時間です。

お風呂そうじは
お料理や、お洗濯とちがって

目に見えて何かが
出来上がるようには
見えにくいけれど。

お風呂は
眠れなかったときにも
明日が見えないときにも

いつだって
何度だって
どんなときだって

わたしを生き返らせてくれる時間です。

大切なお風呂だから
お風呂そうじも
大切にしたい時間です。

お風呂そうじの
時間は嫌いじゃありません。

どちらかというと
好きな時間です。

驚くかもしれないけれど
ワクワクする時間です。

バスルームの前に立つとき

わたしの目の前には
ぼんやりと霞むガラスの
ドアがひろがっていて

ガラスを通りぬけてくる陽彩の光が
まるで魔法のように輝いています。

その光の向こうに広がる
ステージへの期待で
胸が高なります。

曇りガラスの向こう側には
ステージはないけれど

それでも
バスルームは

体を伸ばせば
天井までも

わたしの両手が
わたしの両足が
届く小さな世界です。

だからミルク色をしたバスルームは
私のスペシャルな場所です。

バスルームのドアを
開け放つ瞬間は

新しい一日が始まる
瞬間のように特別です。

朝、ブリーツカーテンを開いていくように
バスルームのドアを開きます。

ドアを開け放つ
その瞬間

外界から遮断された
バスルームから

吹き抜ける一陣の風が
わたしの体を通りぬけていく。

それは自然の風よりも
ライブ会場に入るときの
空気感にも似ていて

ドアを開けた目の前には
小さなステージ。

いつもの見慣れた
バスルームの光景が広がっています。

見慣れた光景だけど
光にあふれる
平日の昼間のバスルームは
ちょっとだけ別世界です。

それはラッシュ時間帯に
慌ただしい人々を眺めながら

ゆったりとカフェで
楽しむような

平日の忙しさを
忘れさせてくれる

日常だけど、非日常な時間です。

平日の昼間

お風呂に入りたいな
気持ちよさそう。

バスルームに座りたいな
気持ちよさそう。

でも誘惑に負けないで。

今日はおそうじの時間です。

心が眠いけれど

ゴム手袋を身に着けて
バスブーツに履き替えて

一歩一歩バスルームへと
足を踏み入れます。

「こんにちは」

バスタブや壁、天井に
心の中で声をかけながら

これからお掃除だよ。

バスルームの鏡に
向かって立つと

湯船に入るときとはちがった
私の姿が映し出されます。

お風呂に入るときは
私が主役。

おそうじのときは
お風呂が主役。

鏡そうじのときは
鏡が主役です。

鏡のなかの私と
目を合わせると

自分自身を受け入れて
愛する勇気をもらいます。

お風呂そうじ
すたーと。

私はシャワーヘッドを握って
シャワーを流しながら
温度を確かめます。

バスタブの湯シャンの時間です。

透明に濡れた液体が
バスルームを滴らせていく。

人の体は90%は水分でできている
あんまり実感はありません。

でもバスタブに
シャワーをかけているときは

90%の水分って感じがして。

それは湿度かも
しれないけどね。

つづいては
お風呂のシャンプーの準備です。

お風呂の洗剤の出番。

シュッシュシュッ
シュッシュシュッ

等間隔に

ときには
適当に

お風呂を
泡だらけにしていく。

それは水鉄砲で
遊ぶ子供のような
心地よさ。

泡だらけになったら
シャンプーの時間です。

ゴシゴシ
キュッキュ

ゴシゴシ
キュッキュ

スポンジで
反復していく
リズムが気持ちよくて。

ひとつの動作に
意識を集中させると

私の心が少しずつ少しずつ

日常から離れて、感覚が
研ぎすまされていきます。

バスルームはさまざまな音で
あふれていることに気づく。

水が落ちる音
水が流れる音

水が吸い込まれる音

スポンジが
お風呂の表面をすべる音

換気扇の回る音

ブラシでこする音

遠くからは
小鳥さんのさえずり声も
きこえてきます。

そのすべてが
不思議と心地よくて

お掃除が進むにつれて
少しずつ少しずつ
きれいになっていくのを
感じることが楽しくて。

お次はバスタブから
床へと作業を移して。

同じようにスポンジで
丁寧にこすっていく。

ときにはブラシもご一緒に。

床のマス目を
一つ一つ

■口口口■口口■口口
口口■口口■口口口■
な床のマス目を

口口口口口口口口口口
口口口口口口口口口口
なマス目にかえていく

繰り返しのなかに
平穏という宝物を見つけていく。

掃除を進めるなかで
ふと思う。

日常には、こんなにも
楽しい瞬間が溢れているのに

忙しさに、つい見過ごして
しまうことが多いことに。

お風呂場にはスマホは
持ち込まないから
自然とデジタルデトックスにもなります。

いつもお風呂そうじを
丁寧にできる日
ばかりじゃないから

あんまり時間を
かけられない日
だってある。

疲れていて
やりたくない日
だってある。

だからこそ
お昼下がりの

お風呂そうじの時間は
特別なんだ。

バスルームが
泡だらけになっていくと

シャワーで流すのが
名残り惜しいような
気持ちになるけれど

泡を流したあとの
表情をみて見たいから

めいっぱいの
シャワーで洗い流していく。

洗いおわったあとの
バスルームは

なんだか入ったときよりも
かがやいているように感じました。

ミッションコンプリートです。

深い満足感に
包まれながら

バスブーツと
ゴム手袋を脱いで

額にうっすらとにじむ汗を
タオルでふいて
いつもの私のもどる準備をする。

バスルームから出ると

ちょっぴりお腹がすいて
おやつが近づいたような時間です。

新しい季節になると
リズムが崩れそうになったことがある。

お風呂にゆっくり入れないくらいに
慌ただしくて

けれど
お風呂に入る時間と
お風呂そうじの時間に

時間をかけられるくらいの
早さで生活をしていたら

少しずつリズムを
取り戻していくことができた。

お風呂そうじが
楽しいと感じるのは
きっと向き合う時間だから

想いをかけた分だけ
充実した気持ちになって
返ってきます。

今日もお風呂そうじが
できたことに感謝しながら

私は、次のことへと
心を向けていく。

きっと活動の終わりには
気持ち良いバスタイムが
待っているはずだから。

日常は、新しい発見や
喜びで満ちあふれている。

それは
何かを買ったとか
何かを見たとか
誰かに出会ったとか
じゃなくても

お風呂そうじ一つで
喜びに満ちあふれることが
できるんだ。

最後に、大切な言葉の魔法です。

お風呂の掃除ができた!すごい!わーい!

お風呂そうじできたってすごいこと?

すごいことです。

わたしは起きることができなくて
ベッドのなかで手をグーパーできた。
すごい!という日がありました。

バナナの皮をむけた。
エライ!という日がありました。

何をすればいいか分からなくて
自信がなくなったときには
お風呂そうじをした日がありました。

あるアニメの中に
家の外に出ることが
できなくなった女の子が登場します。

今でも、深く心に残っているのが
「今年の目標」と書かれたノートを開くシーンです。

・外に出る。
・お散歩する。
・電車に乗る。
・プリンを買いに行く。
・パンダを見に行く。

ノートに書かれていた「今年の目標」に
ポロポロと涙があふれてきて
止まらなかったことを覚えています。

女の子が書いた「今年の目標」は
いまの私が当たり前のようにできることです。

でも、私にも、できなかったときがありました。

今、当たり前にできている、
たくさんの事は、けっして当たり前じゃなくて。

苦しいときに
思い描いた

今日という日常は

そのときには
どんなに望んでも
叶えられなかった未来だから。

だからこそお風呂の
掃除ができる日常は

お風呂の掃除ができた!
すごい!わーい!なんです。

お風呂の掃除ができたあなたにも
できた!すごい!わーい!です。

山根あきらさんの企画に参加させていただきました。

最後までお読みいただきありがとうございます。
みなさんの毎日が素晴らしいものでありますように。

前回のお風呂そうじが300文字だったので
3000文字に挑戦してみました。
長めなので、読みにくいかもしれないです。

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