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神激!再録音源を語るVol.2

こんばんはひいろです
ようやく「光彩パラノイア」と「月影フィロソィア」の二枚を入手したので、いずれ新旧聞き比べも行う予定でいますが、とりあえずは前回と同じ様に神使轟く、激情の如く。が投下した再録音源達の中から3曲をレビューしていこうと思います

ありふれてしまった全ての常識人へ[宣戦布告]

その活動の最初期から神激が誇るとどめの一撃も、装いを新たに生まれ変わりました
素直にエモ/スクリーモやメタルコアの成分を凝縮した純度の高さと、そこに足された少しの遊び心が強いコントラストを描いています

「推しジャンプ」や「Mix」等を曲中に予め組み込み、さらに曲中の定番としてサークルピットの形成を強制するなど、所謂「地下アイドル」やライブハウス界隈に於ける文脈をメタ的に内包させている点が、神激というグループを語る上でも非常に重要な楽曲であると言えるでしょう

ライブに於ける「ノリ」は本質的には自然発生し、淘汰収斂していくものでしょうが、演者側から提供されることも少なくありません
最近はあまり見かけなくなったように思いますが、ヴィジュアル系に於けるバンド公式の「フリ講座動画」のように、一曲を通してノリ方のお手本を提示する事もあります

こういったものに対しては「ロック(ライブ)らしくない」というような反応も付き物ですが、メタフィクションが成立する事と同様に、ライブの楽しみ方としていわば「メタライブ」もあってしかるべきと考えます
結局のところ卵が先か鶏が先かといった問題でしかなく、「ライブの熱狂」といった観測結果に変わりはないからです

この「メタライブ」、「メタアイドル」的視点は神使轟く、激情の如く。の重要な一面であると言えるでしょう
「アイドル」である自分、という視点でやシーンに対する皮肉を盛り込んで書かれた歌詞が多数存在していることがその査証です
この「宣戦布告」に於いても、 公的な書類に『職業:アイドル』と高らかに書き込む旨が歌われ、「ちやほやされるためだけにリスクを負ってベット」している奴らをこき下ろしています

個人的に好きな部分は一通りの「アイドルノリ」パートを終えた直後に襲いかかるヘヴィなパートです
入りの激重ブリッジミュートだけでも素敵ですが、重低音に載せて毒を吐くアイドルらしからぬ点がそそります

どうでもいいことが大切を思い出させる[発狂的発散案件=惰性]

「瞬間的成仏NEXT YOU→」が過去のメンバーを描いた曲ならこちらは今の姿を捉えた楽曲です
メンバーチェンジを踏まえて歌詞が大幅に書き換えられ、再録された楽曲の中では一番姿を変えた曲でしょう

先に紹介した「宣戦布告」とは打って変わってポップな曲調ですが、ハードなロックサウンド一辺倒ではないところも神激の魅力の一つであります
セクション事にドラムが上手く表情をつけており、曲が進んでいくにつれて、デジタルな打ち込みソング風からバンドサウンド主体へと変化していくのも聴き所でしょう

少し展開を追ってみましょう
EDM的アッパーな歌い出しはキックとクラップ主体で始まります
そのままビートが速くなっていく、と思いきやタムのロールが入ってきてイントロに移行します
イントロは意外とヘヴィなギターのリフの裏で生っぽい4つ打ちビート、スネアの音がそれっぽいのが肝でしょう
Aメロはキックのみのシンプルなビートで打ち込みっぽさを演出し、BメロのいわゆるPPPHのH部分でスネアが顔を出します
この辺りまではバンドサウンド感は薄めでデジタルな表情をしています
サビでギターが入ってくるとともに4つ打ちでバンドアンサンブル主体に
サビは構成も二段構えで後半部分はより疾走感のあるビートに変化します
こういう表情の変わり方は好きですね
ラップバトルのパートを経て再びAメロに入りますが前回と違いこちらは2ビートで打ち込み感はなりを潜めます
この後はバンドサウンドの顔で結末まで
複雑な展開はしませんが、一筋縄ではいってないのが神激らしさですよね

個人的に好きな部分は「TiNAは特になにもない!」後の涙染あまねパート
歌い出しと同じメロディを、先ほどとは打って変わるヘヴィなギターリフに乗せている点がいいですよね
リフが少しDjentyな雰囲気を醸しているのもポイント高いです

無色無機質な世界に彩をつける手段を[新世界エクソダス]

死ぬこと意外怖くはねぇ
だって私は『アイドル』

ベイエリア・クランチの雄、EXODUS
あのメタリカのギタリスト、カーク・ハメットが所属していたバンドでもあります

……失礼、違いましたね
印象的なドラムロールから始まる疾走感満載の楽曲です
初出はかなり初期の頃で、今回はVer.3になります

ギラギラしたシンセサウンドとタイトなバンドアンサンブル、途中でラップパートとトランスっぽいパートを挟みますが、奇をてらわずストレートに攻めてくる、神激の中では逆に珍しいのではと思います

全編を通して聴く者を叱咤し、また鼓舞するようなワードが散りばめられ、非常にメッセージ性の強い詩ですが、やはりこの曲の肝はラストでしょう
丸々引用させていただきます

今逃げたいって奴も
今死にたいって君も
前すら見えないあの子も
後悔だらけのあなたも
馬鹿にしてきたてめえも
憧れてきたあいつも
置いてくことなく笑顔に
だって私は『アイドル』

ここはライブで聴くとグッと来ます
前半四篇は聴き手である我々に向けられたもので、どれかがきっと「あなた」の心に刺さるでしょう
様々な事を抱えて日々生きていくものですが、その人生の中で笑顔を与える存在が『アイドル』であると宣言しています

しかし、個人的に気に入っているのは次の二篇、「馬鹿にしてきたてめえも」と「憧れてきたあいつも」
ここは歌い手自身の心待ちです
まず前者
所謂アンチや理解を示さなかった者たち、業界の他者、それこそ本当に馬鹿にされてきたのでしょう
そいつらに「置いてくことなく笑顔に」と歌える強さが私には眩しいです
そして「憧れてきたあいつも」
バンドなのかアイドルなのか、その相手は分かりませんが「憧れてきた」相手であるなら、おそらく今はまだその相手には自分たちの存在は伝わっていないのでしょう
まずそこに自分の姿を知らしめ、そして笑顔にさせる存在になる、ある種の宣戦布告ですよね
「だって私は『アイドル』」だから
ここ、2019年のO-EASTワンマンで実久里ことのの「私たちはアイドルだ!」と力強く叫んだ映像を観て個人的に神激のライブに足を運んでみよう、と思ったので思い入れも強い曲です

おわりに

といった感じで今回もさらっと見ていきましたがどうでしょうか
意外とこの3曲のレビューは難産でした
特に発狂は時間かかりましたね
ですがその分宣戦布告のメタ性であったり発狂のドラム分析だったりと内容に幅のある記事にすこしでもなったのではないかと思っています

次回も引き続き再録音源のレビューを行う予定ですのでよろしくお願いします

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