記事一覧
おひな様をかたづけよ!(短編小説)
真夜中ーーー
家族が寝静まった家の廊下をトウマは息を殺しながらゆっくりと歩いていた。
今よりもっと幼い頃から、まるで我が家のように行き来してきたはずの離れまでの道がやけに長く感じたのは、きっと明かりが無いからだけが理由じゃない。実際、これはトウマにとって、かつてない冒険だった。
同時に、きっと明日の朝には、家でも、学校でも、これまで優等生として通してきた自分には、もう戻れなくなってしまうような行
『客観性の落とし穴』を読んで、思いがけず小説について考えることになった
意図せず、昨年ベストセラー新書である『客観性の落とし穴』を購入し、読んだところ、これはまさに小説についてのことが書いてある!と思ったので、客観性というキーワードから、小説について考えてみることにした、というのがこの記事を書こうと思った理由である。
と言いながら、私自身、どこがどう『客観性の落とし穴』と小説が結びつくのかをスパッと一言で言い表せるほど考えを纏めきれていないので、章ごとの私なりの要約
Only in dreams(掌編小説)
入り口側のドアの向こうで、キーンと高い音が鳴り続けていることに、部屋に帰ってきた瞬間には既に気づいていたかも知れなかった。
ーーー劣化のせいだろう、竜一は思った。
23時をまわったくらいだったと思う。
最後に時計をみたのは、まだ明るい時間帯だった。
テレビはあっても、ろくにスイッチは入れない。
だから、みたい番組がない。
みたい番組があったのは、もう随分昔のことだ。
だから今では、換気扇の異音に
●REC(ショートショート)
という訳で見てのとおり、何万年も生きてんスよ、コイツ。
と、諦めたように、吐き捨てる感じでディレクターらしき男が笑った。
蹴り飛ばしかねない勢いだった。真っ白のスニーカーのつま先がエメラルド色に発光する粘り気の強い液体でべっとり汚れてしまうことが躊躇の理由だろう。
撮影が押しているであろうスタジオ内にはピリついた雰囲気が流れているであろうことが充分に見てとれる。ちらちら出入りする撮影スタッフた
映画『枯葉』をみたら”スタイル”について考えていた
映画『枯葉』をみた。良い時間だった。
感想とか考察とか、考えること自体もはや無粋だ。
こういう気持ちになってしまう映画は他にもある。
例えば、ニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』、クエンティン・タランティーノの『パルプフィクション』、ポール・トーマス・アンダーソン『リコリスピザ』など。
物語自体に強い主張がなく、何気ない感じで、映画としては比較的、特別なことが起こらないところが共通
わだす、チョコ、渡す。(掌編小説)
「なぁ、おめ、きょうはなんの日かしってっかぁ?まぁさか、しらねぇわげねぇよな、いぃトシしてよ。あぁあ、とぼけでもムダだ、そのニヤげたツラはごまかせね。わだすぐれぇんなっと、おどこがなに考えてっかぐれぇ、手に取るようにわがんだ。あれだ、…ヒャクセンレンマ?っちゅうやつだっぺ。あんだもこの辺のもんなら、あだすの名前(なめぇ)ぐれぇ、きいだごどあっぺ?」
花恋はmajiでkoiしているつもりだった。
春が来る(掌編小説)
地球は回っている。
それを初めて知った時のことをもう、ユウコは思い出せない。
勿論、それを知ったそのときも地球は回っていたし、こうしている今も回っている、ユウコの生まれる前から、ずっと回り続けている。それは、間違いない。
でも、それは知識だ、ユウコは思う。知っていることと、できることは違う。
これも、ユウコが誰かから聞いた言葉だった。なんか、偉そうな人が言っていた。偉そうな人の言う言葉には、説得力
コント作りにおいて考えたこと Part1
今日みたコント、千原兄弟のタイピングのコント、巨匠の学校のコントなど。
まず、コント作りにおいて始めに(始めにじゃなくてもいいかもしれないけど)考えるべきは、前提となる状況、フリの部分で、そこが決まればその逆のオチを考えることで骨組みは出来上がる。今書いていて思ったのは、コントならではの強みというか醍醐味は、複数の人間による(ひとりでもいいけど)やりとりが作り出す”状況の面白さ”であるということ。