人生が変わる瞬間

1Kに住んでいる。この部屋には住みはじめて5年くらい。いまこの瞬間、今までで一番部屋が荒れ放題で、めちゃくちゃ汚い。今までも“そう”だったが、今年に入ってから冗談抜きで家帰ったらメシ食って寝るだけの生活をしている。思考が「仕事」「寝」くらいの選択肢がなくて、何もやる気がない。元気もない。
その一方で、年末年始に引っ越してきた隣人がめちゃくちゃうるさくて元気である。顔を合わせたことないけど声の感じ的にたぶん若い男性。通話かなんかしてるんだと思う。私も夜遅くに帰るので多少の騒音はお互い様だしな〜と思っていたが、昨晩は明け方4時近くまでダミの笑い声が響いてきて、さすがの温厚な私もうるせえ!!!!!ブン殴るぞ!!!!!!!、!、!!!!!!!!!モードになって殴り込みそうになった。でも殴り込みませんでした、もうなんのやる気もないし、人生がどうでもいいからです。

こんな私ですが、それでも年始はおっブ(おっさんずラブのこと)実況しよう!と言っていたものの、1話で出来なくなり、超特急のぴあアリのために入ったU-NEXTもロクな恩恵にあずかれないまま無料期間が終了して退会してしまった。おすすめしてもらったけど、なんも見れなかった。読もうと思った本も読めてない。全話無料だからまた読まなきゃ!と思ったらゴールデンカムイも全然読めてない。えどがいくんの話が終わった所だからメチャクチャ冒頭。友達に無料だから読んで!と言われたらナントカっていうまんがも読めてない。10日前は「マジでえ、ケンティーがセクゾをやめるっていうのはァ、大谷翔平がドジャースをやめるみたいなもんですよ」と上司に訴える気力はあったが、いまはケンティーの熱愛になにかを言う気力どころか考える気力もない。たしかにドルオタやめたいと言いましたが、人間って「ドルオタやめたい」「2024年はドルオタをやめるぞ」から20日足らずでこんなになるもんなんですか?なにより「人生の6割の力でドルオタしてるからその6割がなくなるとやばい」を体感してしまった。今さらながら初夢を見たが、好きな男がテレビに出るから録画したのにHDDの容量が満杯で途中までしか録画できてない夢だった。起きてから本当にHDDが満杯で、整理しようと思ったが、もう何を消せばいいのかわからん。見るのか見ないのかもわからん。何を録画したのかもわからん。おもろくてウケる。

私は、食べものの好き嫌いは激しいくせに料理という行為に興味がないうえ(「きのう何食べた?」の調理シーンを読み飛ばす女)、さらに「同じものを食べ続ける」ことを苦痛に感じないため、自炊するときはオールシーズンで鍋を食っている。大根・にんじん・なんか群生してるキノコ・豚肉がスタメンで、控えのベンチはいない。鍋のポーションだけ変える。
野菜は食えって言われたから食ってるが、なにぶん野菜の好き嫌いが激しく、嫌いな野菜の下処理をしたくない。でも根菜は好きだから食べる。ゴボウが野菜の中では一番好きだけど、半分に切って湿らせて保存して…って思ったらメンドクセーってなるから食べてない。そこまでの愛情がゴボウにかけられないので、もしかしたらゴボウのことがそんなに好きじゃないのかもしれない。
レンコンも好き。だけど他と比べたら高いから買わない。値段で諦めるから、レンコンのことも好きじゃないのかもしれない。
大根は半分に切ってあるやつ買えば冷蔵庫に入るし、人参も冷蔵庫にそのまま入れられるので大根と人参で鍋を食っている。大根と人参のことはわりと好きなのかもしれない。
群生してるキノコ(エノキというらしいです)は下の方切ってバラせばいいよね、と楽だから食べてる。特に好物ではない。でも味がしないけど鍋味になるところは好きかもしれないから、エノキのことは好きなのかもしれない。
冬は、デケェ白菜をもらうことがある。私は葉物野菜が「葉と芯に植物感がありすぎる」という理由で嫌いだが、白菜は「火を通せば芯もきにならない」と言う理由で鍋にぶち込めば食べられる。しかし白菜を“もと”から千切り(デカすぎる白菜は実家に持って行って半分にしてもらう)、切る行為がめんどくさい。
野菜の下準備の部分、つまり野菜と向き合うのが苦手なのだ。葉物野菜の芯の部分に包丁入れてグルってやって切る『向き合う』行為が、とくに苦手である。
己の名誉のために言っておくが、鍋以外のものが作れないわけじゃない。しょうが焼きとかチンジャオロースとかも作ろうと思えば作れる。ただ、大根・にんじん・エノキ・豚肉、の自炊流れ作業がしみついているため、これを乱されるのが嫌なのである。そう考えると鍋以外が作れない、と言われたら「そうかも…」になる。ちなみに彼氏とかが料理食べたい!って言ったら困らない?と聞かれたことがあるが(令和だぞ〜)、料理が趣味の男と付き合えば全く問題がないため、この点で困ったことはない。
しかし、たまに「私の人生はこの1Kで一生、知らん男の騒音をBGMに鍋食って、死んで、完結するんだろうなあ」と思う瞬間があり、その瞬間だけはメチャクチャ怖い。なんだかんだ鍋ローテーションが乱されるのが嫌だから、今までは自分のことを変化を恐れるタイプだと思ってたけど、私は変化が怖くないっぽい。自分のことなのに知らんこといっぱいあるから、世の中は知らんことで溢れてるよなァと思った。

そんなわけで、今日も明け方4時までクソ隣人がうるさかったせいで、あまり眠れなかった。そのせいで早くから起きていたため、買い物に行った。
よく行くスーパーは朝8時から空いており、9時くらいに行った。この「9時にスーパーに行く」というのには理由がある。開店直後の8時に行くと仕入れたものが並び切っておらず、しかし10時には激混みなので(田舎なのでみんなスーパーしか行くところがない)、土曜の9時に行けばいいのである。これも今の部屋に住んで5年で得た研究成果である。
9時のスーパーには、新鮮な野菜や肉がある。やすい牛乳も完売してない。カレー用の国産和牛が売っている。いくら私がバカ舌でも国産和牛のうまさはわかるので、今夜はカレーにするつもりであった。
カレーを作る際は、前述の「野菜スターティングメンバー」含まれている「人参」以外の野菜、つまりジャガイモとタマネギに向き合うことが苦手なため、いつも「これに肉とルー入れればOK!」みたいな出来合いのやつを2パック買ってカレーを作って、2〜3日食べている。この出来合いのカレー野菜パックのやつは300円するのだ。高けェ〜〜〜。300円、「この手間賃は300円だな」というところのちょうどいい価格設定だと思う。
近くを見回すと、この野菜パックの隣にタマネギやジャガイモが並んでおり、それぞれ3個ずつ買って、にんじん3本と合わせて300円くらいか?と足りない頭で計算した。そもそもこんなところにこんな野菜が売ってることを知らなかったので、暗算ができなかったが、なんとか出来た。300円パック×2袋=600円だけど、自分で作ったら300円浮くかも。


そんなわけで、ほんとうに何年かぶりに、大根と人参以外の野菜を買った。自分でもビックリした。


よく、環境や現状を変えるには、「壁を破って!」とか「変化を!」みたいなことを言う。無理である。そんな気力はないからだ。
でも、変化ってそうやってドラマティックなものでも劇的に起こるものでもなく、たぶんこんな些細なきっかけで起こした「いつもと違うこと」なのかもしれない。これがめぐりめぐって大きな変化になるのかもしれない(バタフライエフェクト)…と思うと、鍋しか作ってなかったし、大根と人参以外買うこともないと思ってたけど、鍋以外が作れれば変わるんだろうか?
もう私の人生に変化なんてないと思ってたけどたぶん人生の変化は劇的に起こるものではなくこうやってほんの些細なきっかけでゆるやかに起こるものなのかも。それなら勝手に決めつけるのはよくないかも、って思った。この前、「人生にほんの少しだけ期待をして生きましょう」みたいなのをみて、いや期待ってなんやねんって思ったけど、もしかしたらこういうことなのかもしれない。期待とは少しちがうから期待はしないけど、決めつけはしないで生きていく必要があるよなあって思うた。
鍋以外を作ろうと思って行動した今日は、もしかしたら私の人生において今後大きなターニングポイントになるのかもしれない。


そう思ったら力がみなぎってきて、解約しようと思ってたジムに行って筋トレして、管理会社に隣人の騒音について電話しました。これでもうるさかったら殴り込みに行きます。

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