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【検証】帰国者・入国者向け宿泊施設の待遇と「鎖国」「棄民」政策を考える / 改善を訴えたらネットリンチされる謎


1. 日本への一時帰国と、僅か2泊3日での出国

オミクロン株の流行拡大ながら、やむを得ず日本へと一時帰国

昨年12月14日に、ロンドンから日本に一時帰国しました。
持病の潰瘍性大腸炎のため投薬や検査で約3ヶ月ごとの受診を要するのと、病状が安定していなかったので、年末年始を利用して日本に戻ってきました。

英国でも、国民保健サービス(NHS)により無料で医療を受けられるものの、過去に5-ASA製剤への重篤なアレルギーとステロイド剤の副作用に苦しめられたため、基本的には日本国内にいる主治医の受診を治療方針としています。英国の医療水準は高くとも、たとえば体調を崩しているなか、ほうほうの体で症状を細かなニュアンスも含めて第二言語たる英語で正確に伝えられる自信もないし、また万が一(薬剤アレルギーや副作用はもちろん、医療ミスその他)を考えると強い不安があります。
また、潰瘍性大腸炎は慢性疾患ですから、海外旅行傷害保険が適用されません。よって、たとえば入院した場合の救援費はカバーされないし、ロンドン市内の日本人向け医療機関での医療費は高額であっても自費(NHSが利用できない「プライベート・クリニック」の扱いのため有償)になってしまいます。
よって、日本国内での治療に拘り、そのために一時帰国する高い合理性があります。特に、昨今は潰瘍性大腸炎の症状が安定しておらず、医師に相談したいという事情もありました。

さらに、治療のためだけに航空運賃を払って帰国するのも勿体ないので、ついでに日本国内で必要な物品や資料を調達したり、国内を旅行したり、友人と会ったりしようとも考えていました。

当初は乗り継ぎ便の利用を予定していたものの、経由地の法令や方針に振り回される可能性を踏まえて、割高ながら直行便を選択しました。また、持病や体調もあるので、フルフラット座席で横になれるビジネスクラスを選択しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まって以後、ロンドンから東京に向かうフライトは3回目。1回目は2020年03月中旬に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が猛威を振るい始めたロンドンからの退避。2回目は昨年2021年10月下旬に衆議院議員総選挙での投票のため。

いずれの帰国でも、日本への帰国に伴う宿泊施設での待機は求められませんでした。しかし、今回はオミクロン株の流行に伴う水際対策の強化により、英国からの帰国は6日間の宿泊施設での待機が求められました。
※2回目の帰国のとき(昨年10月)も英国からの帰国は3日間の宿泊施設での待機が一応は求められていたものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを2回接種した証明書があれば宿泊施設ではなく自宅での待機が認められていました。しかし、オミクロン株の流行のためこの措置は停止となり、かつ待機期間が6日に延長されました。

つまり、今回は私にとって初めての宿泊施設での待機です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まる前も含めて、日本と英国を往来する機会は何度もあったものの、ここまで気が重い一時帰国は初めてでした。
(この後に体験した宿泊施設その他での待遇に鑑みると、このように心理的な負担を大きくして「帰国を諦めさせる」卑劣な意図もあるように感じます。)

先述した2回の一時帰国と同じく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴って機内サービスは一部が省略されていたものの、いつもと概ね同じように、飛行機は羽田空港に到着しました。

羽田空港に着いたら宿泊施設までの「ミステリーツアー」へ

羽田空港での手続の流れは詳しい記事を見つけたので、こちらをご覧いただくのが早いと思います。特に、空港ターミナル内は撮影禁止の区画も多く、この辺りはプロに任せたいと思います。

いつも利用していて、慣れているはずの羽田空港。飛行機を降りてから預け入れ荷物を受け取って到着ロビーに着くまで、普段なら約15分。しかし、今回は諸々の手続や確認があるため、約2時間。先述の記事だと約6時間を要したようですから、それに比べれば短縮されました。それでも、普段に比べれば約8倍。
この手続において、JAL SKYのグランドスタッフさん(検疫所の職員のように振る舞っているものの空港の入構証には「JAL SKY」の記載があり、どうやら調達情報によると検疫所が「検疫業務に係る支援業務」を航空会社に発注しているようです)から宿泊施設を割り振るための受付や、食物アレルギーその他に関する質問があり、申告しました。

また、昨年10月の一時帰国と比べても、特に検査実施(唾液の採取)から結果の通知までの時間が長くなったように感じます。この待機場所では軽食および飲料水の配布がありました。併せて、クレジットカード(コンタクトレス決済)および電子マネーに対応した自動販売機も設置されていました。

さらに、バスの乗車グループに別れて空港ターミナル内を移動するため、結果が通知されてから動き始めるまでの時間が新たに追加されました。この間も、先ほどの待機場所と区切られているものの、グランドスタッフさんに伝えれば軽食および飲料水の補給や自動販売機の利用が可能でした。

その後、私を含め20名前後のバスの乗車グループはグランドスタッフさんの引率で空港ターミナル内を移動して、検疫・入国審査・預け入れ荷物受け取り・税関を経て到着ロビーへと向かいました。引率はグランドスタッフさんからバス会社の職員さんらしき人物に引き継がれ、ザ ロイヤルパークホテル 東京羽田の前にある駐車場でバスに乗り込みました。なお、この時点で宿泊施設の情報は知らされていません。

景色や太陽も眺められない宿泊施設と、アレルギーその他に配慮されない食事

羽田空港を出発したバスは環状八号線から首都高速 湾岸線を川崎・横浜方面へ。羽田空港に到着した場合の宿泊施設は事前に絞り込んでいたので、この時点でアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーと察しが付きました。しかし、行政からは何一つとして情報提供がなかったので、あくまで「推測」でしかありませんでした。

はたして宿泊施設はアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーだったものの、実際に到着するまで行政からは何も知らされていませんでした。つまり、なぜか強制的に「ミステリーツアー」に参加させられていたのです。

地下駐車場でバスから降りて、そのまま地下1階にある長机で入所の手続となり、『滞在のしおり』を配布されました。しかし、一方的に説明されるばかりで、質問しようとすると「すべて書いてありますから!」「ちゃんと読んでください!」の一点張り。口を挟む余地はありませんでした。
なお、『滞在のしおり』によると、弁当は「一律に配食」で食物アレルギーへの配慮はなし。あくまで「アレルギーのある方はご注意ください」と記載があるのみで、もし気づかなかったら誤って食べてしまいかねません。代わりにUber EATSを利用しようにも「注文した食品は宿泊施設に到着した翌日にならないと各部屋まで届かない」対応で、自費で出前を頼むこともできませんでした。だから質問しようとしたのに、その機会すら早口でまくし立てるスタッフさんに奪われました。

宛がわれた部屋は11m2のシングルルーム。プライベートで好んで泊まる客室ではないものの、何かの予定で1泊を過ごすには十分でしょう。しかし、約1週間の滞在、それも一歩たりとも外に出られない境遇に鑑みると明らかに狭すぎます。

付言すると、このアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーは「意図的に客室を狭くした」設計だし、この記事でホテル評論家の瀧澤信秋さんが述べているとおり、アパホテル自体ビジネスホテルでも狭い部類です。つまり、この部屋は「いくら何でも狭すぎる」のは客観的に明らかです。

また、VODを開くと歴史修正主義の強すぎる映画『凜として愛』もありました。もちろん、アパホテルの経営者や従業員の思想信条や主義主張は自由だし、それは努めて尊重されなければなりません。しかし、アパホテルへの滞在を強いられることで、公費が歴史修正主義者の言説に支払われる必要性や正当性を生んでしまうのは非常に苦痛でした。だから、たとえば「観なければ良い」「嫌なら見るな」とか、そういう問題ではありません。

さらに、配布された弁当にはアレルギーへの配慮がなく、はたして空港で申告した食材が入っていました。いったい何のために空港でアレルギーその他の質問があり、何のためにアレルギーを申告させられたのか理解できません。空港で申告を済ませたなら「宿泊施設に伝わっている」と安心するのも当然でしょう。さもなければ、わざわざ空港で質問する意味がありません。また、『滞在のしおり』を配布されたときにアレルギー対応の詳細を尋ねようとしたものの、先述の通り、口を挟もうとすれば遮られ、質問できる余地はありませんでした。

しかも、客室の窓から見えるのは建物の内側のみ。せめて外の景色を眺めて落ち着いたり一息ついたりしようにも、それすら許されません。もちろん、客室を選ぶ余裕がない事情は酌量するとしても、冬場は日照時間が極端に短いロンドンから帰国して太陽や空すら見られないまま約1週間を過ごすのは精神的に大きな負担です。日光も浴びられないとしたら時差の調整もできないし、自律神経も狂いかねませんでした。

自由・人権を守るため、日本ごと宿泊施設から「脱出」

このままでは心身ともに健康が損なわれるし、人として本来的に有している「自由」や「人権」すら危ういと判断せざるを得ませんでした。
WHO憲章は健康を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」と定義しています。人を詰め込むことしか考えていない僅か11m2の狭い部屋で、約1週間も太陽や景色すら眺められないとしたら、心身ともに健康を損ないかねないのは明らかです。むしろ、薬剤アレルギーや副作用のリスクを冒してでも、もしくは完全な自費診療であっても、ロンドンに戻って治療を受けるメリットが大きい、とすら考えられる状況でした。

「自由」「人権」と述べると「わがままだ!」と言い掛かりを付けられるかもしれません。しかし、たとえば思想や信条、もしくは職業やキャリアの選択において、他人から口を出される筋合いはありませんよね。自由や人権とは本来、原則として他人が侵せない極めて崇高なものです。日々の「きょう何を食べるか」といった選択だって「自由」に含まれるし、健康で文化的な生活も「人権」です。かつ、この「自由」「人権」の概念は不可分です。だから、たとえば私の食事メニューような「当たり前にできる日々の小さな選択」だって私の自由だし、それを制限するのは「人権侵害」です。

もちろん、水際対策や隔離で自由や人権が一定程度は制限されてしまうのも、現実的には無理もありません。だから、自由に外出させないとか、MySOSアプリで位置情報を追跡するといった措置は必要性・合理性・相当性のある私権制限で、受忍限度の範疇でしょう。
しかし、その私権制限の範疇は必要最低限でなければなりません。なぜなら、先述の通り「自由」「人権」は国家権力であってもいたずらに侵すべきではない崇高な存在であり(たとえば「公権力を縛る」役割を有する日本国憲法に「基本的人権の尊重」が明記されているのは国家による不当な人権侵害を予め制限するのが目的ですよね)、必要性・合理性・相当性を超えた私権制限は単に「不当な人権侵害」に他ならないからです。

よって、たとえば「弁当で和食と洋食すら選べない」のは度を超えた自由の制約と言えます。なぜなら、食事を自由に選んだからといって新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が拡散されるわけでもないし、人が死ぬわけでもありません。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を防ぐための水際対策なわけで、防疫とは関係ない(防疫上の必要性を欠いた)私権制限は本来「あってはならない」のです。施設運営の都合で「完全な自由」は認められないとしても、さすがに一切「選べない」のは「自由や人権を踏みにじられている」と感じます。しかも、冷たくて大して美味しくもない弁当。

もっと言えば、たとえ弁当が美味しくなくとも、自分で選んだものなら多少は納得できるでしょう。しかし、選択の余地なく「不味くとも黙って食え」と押し付けられるだけでは不満が噴出するのも当然。他人の判断ではなく、自分の意思と責任で「選べる」のが重要であり、それは本来なら誰にも侵せない崇高な「自由」「人権」なのです。「いやなものはいや」だし、それは「わがまま」ではありません。

そこで、この境遇を脱する方法を考えることにしました。
日本への帰/入国に伴って提出を求められる『誓約書』には「公共交通機関の不使用」との項目があります。しかし、公共交通機関とは「不特定多数が利用する電車、バス、タクシー、国内線の飛行機等」。裏を返せば「国際線の飛行機」は利用できることが分かります。実際に、昨年10月下旬の一時帰国でも、投票を終えた直後の11月上旬に、入国後14日目を待たずして英国に戻りました。

念のため、翌日(15日)になって電話で厚生労働省に確認したら「私たちは出国を妨げることはできません」と回答があり、宿泊施設や自宅での待機期間であっても出国できることが分かりました。その旨を、検疫所職員が詰めている「本部」に問い合わせる(『滞在のしおり』に記載の「コールセンター」に内線電話で用件を伝えて「本部」への取り次ぎを依頼する)と、確かに出国のためなら宿泊施設からの退所を前倒しできると確認できました。
ただし、退所に先だって出発当日の朝にPCR検査を受けて、その結果を確認する必要があるため、最短でもその翌日(16日)午後にならないと退所できない、とのことでした。どうやら、この宿泊施設でのPCR検査は陰性証明書を発行できないようで、退所してから渡航のために改めてPCR検査を受けて、さらに陰性証明書の発行を待つリードタイムを考えると、16日の夕方以降のフライトでなければ間に合いません。いつも羽田空港からロンドンに向かうために乗る便は午前の出発。そこで代わりの便を探したところ、カタール航空のフライトが時間的に都合良く、かつ安価でした。初めてカタール航空に乗って、乗ってロンドンへと向かうことにしました。

しかし、15日の夕方に予約を済ませ、運賃を払った直後に、空港でスマートフォンにインストールさせられたMySOSアプリに「濃厚接触者の可能性がある」との通知があり、さらに夜になって保健所から「同じ飛行機に感染者がいたため、濃厚接触者として扱われる」との連絡がありました。当時は「感染者と同じ飛行機に乗っていた全員を濃厚接触者として扱う」対応でした。

そこで翌日に出国を予定しておりフライトを予約して運賃も払っている上に、そもそも厚生労働省から「出国を妨げられない」と言われている旨を告げると、わざわざ保健所の職員さんが都道府県庁に確認を取ってくれ、「確かに、都道府県庁としても『出国を妨げられない』との見解で、これは濃厚接触者であっても同様だ」との回答を改めて得ました。

翌日の朝になって、PCR検査のために唾液を採取・提出したあと、今度は本部から「濃厚接触者だから出国できないんじゃないか?」と確認がありました。保健所および都道府県庁の「濃厚接触者であっても出国を妨げられない」との判断を伝えると、「濃厚接触者になった場合の搭乗の可否」をカタール航空に問い合わせるように指示を受けました。そこで、電話で問い合わせたところ、カタール航空としては「感染者だった場合は搭乗を断るものの、濃厚接触者の場合は特に規定がなく、空港カウンターでの判断となる(なお、空港カウンターが開くのは午後になってから)」と、また念のため問い合わせた厚生労働省としても「濃厚接触者であっても、やはり出国を妨げられない」と、それぞれ回答がありました。
その旨を本部に伝えると、「そうでしたか、それでは退所していただいて構いません」とのことで、航空券の確認で客室を訪れた職員さんにフライトの詳細を提示したり、PCR検査の結果通知の電話を受けたりと諸々の手続が進み、ようやく宿泊施設を前倒しで出所できる運びとなりました。

到着したときと同じ地下1階で手続を済ませ、同じ車寄せからバスは発ちました。地下駐車場を出た直後に車窓から久しぶりに眺めた空はいつもより高く、青く感じました。そのままバスは横羽線を経由して湾岸線へ。ベイブリッジから横浜市街を見渡しながら、羽田空港へと向かいました。
なお、『滞在のしおり』に、家族やハイヤーの迎えは「羽田空港 第3ターミナル」に呼ぶように記載があり、かつ徒歩での退所もできないとあったため、羽田空港に到着したら何らかの手続きがあると思っていましたが、実際にはバスを降りたらそのまま解放されました。わざわざ宿泊施設から空港まで移動しなければならないルールは何のためだったのか未だに不明です。

羽田空港にある検査センターでPCR検査を受け、迎えに来てくれた友人の運転で成田空港へと向かいました。首都高速 羽田線から久しぶりに眺める東京の街並み。沈んでいく夕陽を背景に佇む東京タワーが見えたときは数時間後に東京を発つにも関わらず、「ようやく東京に戻ってきたのだ」と実感させられました。
斯くして、予定よりも遙かに短い一時帰国を終え、初めて訪れたドーハを経由して、ロンドンへと再び飛び立ったのでした。

なお、当時の英国では日本からの入国には自宅で到着後2日間の隔離と、出発前および到着後のPCR検査の受検、また出発前のPassenger Locator Formの提出が求められたのみで、このような宿泊施設での隔離はありませんでした。
(ちなみに、現在ではオミクロン株の流行以前から求められていた到着後のPCR検査もしくはラテラルフロー(迅速簡易検出法)検査の受検およびPassenger Locator Formの提出すら不要になりました。)

私が出国したのを良いことに「嫌なら帰ってくるな」と言い掛かりを付けてくる人たちがいるかもしれません。しかし、私は何度でも必要に応じて帰国します。残念でした。
後述するように「帰国は権利」。だから、政府や世論がどうであれ、また感染状況に関わらず、邦人は大手を振るって帰国して良いのです。特に、多重国籍を認めていない本邦において、いざとなったら在外邦人は好きでも嫌いでも「日本に帰る」しか選択肢がありません。

ただし、だからといって「それなら政府や国家を批判するな」は筋違い。検疫・入国管理や邦人保護をはじめ公共サービス全般はどんなイデオロギーの持ち主だろうとも、つまり日本を批判していたとしても、その個別具体的な事情とは関係なしに提供されるものです。さもなければ「政府や国家を礼賛する人たちしか権利を享受できない」「政府や国家にとって都合の悪い国民は切り捨てる」社会となり、国民が等しく享受できるはずの「言論の自由」や「内心の自由」を容易に否定してしまいます。まるで党や軍を批判できない中国や北朝鮮と同じですよね。
よって「批判するなら帰国するな」もしくは「帰国するなら批判するな」との考えは明らかに「自由」「人権」を無視しており、専制政治や全体主義そのものです。極めて危険な思想です。だから、「批判していても帰国して良い」「帰国しても批判して良い」のです。それが本邦が是とする「自由民主主義」です。

2. 各論点の検証と改善案の考察

羽田空港に到着してから宿泊施設での隔離を経て成田空港から出発したプロセスを振り返ったところで、私もしくはアンケート回答者の体験その他から抽出できる論点を検証して、具体的な改善案を考えていきたいと思います。
現在ではオミクロン株の流行拡大に伴う水際対策の強化は解除されたものの、今後、新たな変異株その他によって再開される可能性も否めないため、このプロセスには依然として意義があります。

空港での長い待機時間: デジタル化およびホテル増床

先述の通り、私が羽田空港に着いてから到着ロビーまでは約2時間を要しました。平時に比べれば遙かに長いものの、先ほどの記事やアンケートへの回答を見ていくと、この数字はかなり短いようです。
羽田空港、成田空港および関西国際空港ではいずれも平均で3時間を超え、報道やアンケート回答のなかには空港で10時間以上も待たされたケースもありました。

特に、検査実施から結果通知までのリードタイムが長く、この部分だけでも2時間を超えていました。最短で30分の抗原検査に何時間も掛かっており、ここが大きなボトルネックになっていると推定できます。

グラフ1. 到着空港ごとの各リードタイムおよび有償での待ち時間短縮希望の比較

河野太郎 衆議院議員がTwitterで待機時間の短縮を報告しているものの、帰/入国者からのアンケート回答を見る限り、必ずしもそうとは言えないようでした。

1月上旬の時点で羽田空港と成田空港の両方において、依然として平均で約6時間の待機が求められているようで、混雑解消に向けた進捗状況は必ずしも芳しくないようでした。

グラフ2. 羽田空港および成田空港における到着時期ごとの各リードタイム比較

また、到着から検査実施までの工程には1. 質問票WebのQRコード作成および確認、2. 誓約書、質問票、健康カードおよび陰性証明書の確認、3. アプリのインストールおよび追跡機能の確認といった手順があり、多少の時間を要するのも理解はできます。
ただし、私と同様に英国から帰国した丸山穂高 前衆議院議員が指摘したように「デジタル化」の議論を進める必要はあります。

質問票Webを入力、かつQRコードを生成させておきながら、同じ内容を紙に再び記載させるのは単なる無駄です。また、先述の通り、長い待ち時間による混雑も解消が必要です。

これに関しては河野太郎 衆議院議員が入国手続きのデジタル化の進捗状況をTwitterで報告しており、実際に「Visit Japan Webサービス」がリリースされました。

さらに、アンケートの回答を見ると、抗原検査の結果通知からバス乗車までに約1時間を要していました。確かに検疫・入国審査・預け入れ荷物受け取り・税関を経て到着ロビーといった手順があるものの、通常であれば10-15分程度の手続きですから、バスや宿泊施設の割り振りに手間取っていたと考えられます。
実際に、河野さんも、宿泊施設が空くのを待つ時間がボトルネックになっていると指摘しており、ホテル増床の必要性を訴えていました。また、出発に先だってWebで申告できれば到着までの移動時間に準備を待てるでしょう。長いフライトを経て、多くの荷物を持っているのにひたすら待たされるのは苦痛であり、この待ち時間の短縮・解消は明らかに必須です。

宿泊施設ごとの「ガチャ」「当たり外れ」: ホテル増床に伴う「最低ライン」の引き上げ

グラフ3. 宿泊施設ごとの満足度および有償アップグレード 希望度比較
(回答数が多かった宿泊施設のみ抽出)
※APA=アパホテル(&リゾート)、VFG=ヴィラフォンテーヌ グランド

アンケートへの回答やSNS上の反応を見るに不満が大きかったのは宿泊施設ごとの「ガチャ」「当たり外れ」でした。

満足度の質問への回答を見ると、アパホテル系列や政府系施設は低くヴィラフォンテーヌ系列や関西国際空港周辺のホテルは高い傾向にありました。また、やはり満足度が低い施設ほど「お金を払ってでも良い宿泊施設にしたかった」との意向が強く表れました。

・アパホテル系列: アパホテル&リゾート 両国駅タワー、アパホテル&リゾート 横浜ベイタワー、アパホテル 東京潮見駅前およびアパホテル TKP日暮里駅前
・政府系施設: 税務大学校、警察大学校、国立保健医療科学院
・ヴィラフォンテーヌ系列: ヴィラフォンテーヌ グランド羽田空港、ヴィラフォンテーヌ グランド東京汐留
・関西国際空港周辺のホテル: ホテル日航 関西空港、プレミアムホテルりんくう

たとえば警察大学校の寮は浴槽や温水洗浄便座すらない狭い部屋。これでは不満が出るのも当然。
なお、館内は「写真・動画の撮影およびSNS投稿は禁止」で、Webに情報があまり出回っていません。しかし、届いた施設内の画像を見る限り機密になりそうな要素はなく、撮影や投稿を禁止する理由はなさそう。もはや「過酷な境遇を世に訴えさせないためではないか」との声も見られました。

また、私が収容されたアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーは浴槽や温水洗浄便座こそあれど、アパホテルの経営目標のために「意図的に客室が狭く設計された」宿泊施設。先述の通り、11m2の客室は1-2泊ならともかく、間違っても約1週間も缶詰めにされる部屋ではありません。

一方で、満足度が高いホテルを比べると、たとえば客室は最低でも最低でも18m2。バス・トイレ部分の数m2を差し引けば、客室部分の面積は約2倍と言って良いでしょう。

一時期は成田空港に到着した帰/入国者は仙台や福岡の宿泊施設にチャーター機で飛ばされたことも相まって「隔離ガチャ」との言葉も生まれました。

客室が広く綺麗なホテルに泊まれるのも、もしくは浴槽や温水洗浄便座すらない政府系施設に連れて行かれるのも、また地方にチャーター機で飛ばされるのも、いずれも同じく「帰国・入国する権利」をただ行使しただけの帰/入国者。自分にはどうしようもない運、いや「政府の対応のばらつき」によって、待遇が「天地の差」だとしたら、こちらも不満が湧くのも当然です。

「あの帰/入国者は快適なのに」との不満が出るのも「当たり外れ」が大きいからです。積極的な「ホテル増床」宿泊施設の「最低ライン」引き上げで、浴槽や温水洗浄便座すらない政府系施設や11m2しかないホテルではなく、帰/入国者が心身ともに健康に過ごせる宿泊施設の確保が必要です。

※議論は逸れますが、これらの政府系施設に研修で訪れた国家公務員は浴槽や温水洗浄便座すらない環境での生活を強いられるわけで、この環境の改善も、水際対策とは別の観点で必要だと感じさせられます。

事前の情報共有の欠如: 公式での情報提供

先述の通り、どの宿泊施設に連れて行かれるのすら、帰/入国者には知らされませんでした。実際に、私の場合もアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーに到着して、ようやく宿泊施設が分かりました。「いざ着いてみないと分からない」対応も「ガチャ」と批判された所以です。

また、宿泊施設の情報のみならず、そこでの生活(たとえばAmazonやUber EATSの利用可否、食事のメニューほか)や配布される消耗品すら事前に分かりません。宿泊施設に着いてから『滞在のしおり』を配布されたものの、これから日本に向けて出発するタイミングでは情報を得られません。これでは「何が用意されている・されていないか分からない」わけで、もはやキャンプや夜逃げの支度をせねばならなくなってしまいます。河野太郎 衆議院議員は厚生労働省にWebでの情報開示を要請しているものの、いまのところ動きはありません。

「帰/入国者の体験談がSNSやブログに載っている」「検索すれば良い」と言われるかもしれません。しかし、これらの情報は公式発表ではなく、内容の正確性や網羅性が担保されていません。当時とは詳細が変わっているかもしれないし、たとえば自分と同じアレルギーその他の事情を抱えている人がいるとも限りません。オミクロン株の流行拡大で日に日に水際対策の方針が変わっていたなか、「もはや1ヶ月前の情報すら安易に信頼できない」状況でした。よって、「個人の体験談に頼る」のはリスクが大きすぎます。
さらに、あくまで個々の体験談に過ぎませんから情報が散逸しており、「これからあり得る事態」を正確かつ広範に把握するにはいくつもの投稿や記事を読まなければなりません。何より、Webに掲載されている帰/入国者の体験談が間違っていたとしても、誰も責任を取ってくれません。
SNSやブログの情報は「参考」になれども、信頼するにはあまりにも脆弱すぎます。だから、行政が責任を持って「公式情報」を提供しない限り、帰/入国者は安心して渡航の準備をできません。

振り回されてばかりの帰/入国者: 宿泊施設やハイヤーの費用やキャンセル料どうする?

先ほど述べたように、12月はオミクロン株の流行拡大に伴って水際対策が日に日に変わっていました。宿泊施設で待機を求められる指定地域や日数が増えたり、逆に対象外になったり。アンケートへの回答にも「対応がコロコロ変わって着いていけない」「朝令暮改で振り回されてばかりだ」との声がありました。

また、12月と1月は年末年始と重なることから、多くの在外邦人が一時帰国します。企業によっては人事異動の時期とも重なるでしょうから、駐在員の帰任も考えられます。事前に宿泊施設や送迎を予約していたなか、水際対策の変動でキャンセルを余儀なくされ、キャンセル料の支払いを余儀なくされた報告も相次ぎました。

さらに、水際対策の強化によって当初予定していた旅程が延びたことから、空港の駐車料金が嵩んだとのケースもあるようです。

これらは各事業者(宿泊施設やハイヤー業者)や代理店(予約サイトや旅行代理店)の方針にもよるため政府の介入が望ましいとは一概に言い難いものの、帰/入国者たち本人の責めに帰すべき理由ではなく、むしろ政府の意思によって発生させられた費用ですから、補償も含めて何らかの対応が必要でしょう。

公共交通機関が使えないから露呈する「東京中心主義」: 札幌までどうやって帰る?

先述の通り、帰/入国者は到着後14日間の「公共交通機関の不使用」を誓約させられました。公共交通機関とは「不特定多数が利用する電車、バス、タクシー、国内線の飛行機等」。なお、いま国際線の旅客機が離発着しているのは羽田空港、成田空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港のみ。

つまり、たとえば北海道や沖縄県に住んでいたら、到着後14日間はプライベートジェットでも使わない限り自宅に帰れませんでした。また、これらの空港から距離がある地域(例: 東北、北陸・信越、中国・四国や九州南部)に自宅がある場合も、帰宅のためには長距離をレンタカー・自家用車やハイヤーで移動しなければなりませんでした。
さもなければ、到着空港から公共交通機関を使わずに移動できるホテルに自費で滞在を強いられます。
その後、公共交通機関の不使用が求められる期間は7日間に短縮され、ホテルでの滞在を要する日数は減ったものの、それでも「地方在住」が費用面で大きな足かせになっていた事実に変わりはありません。

通常であれば新幹線や高速バスで移動できた地域であっても、長距離をレンタカー・自家用車で移動したり、運転免許を持っていなければ家族や友人に依頼したり、もしくは高いハイヤー運賃を払わなければならないわけで、近くに空港のない地域に住む人たちの負担は極めて大きい構図でした。

先述の「隔離ガチャ」では帰/入国者をチャーター機で福岡や仙台に連行していました。それなら、たとえば九州地方や東北地方に住む帰/入国者を優先的に福岡や仙台に振り分けるとか、そうでなくとも福岡や仙台に向かうチャーター機に(もちろん機内で距離を取った上で)希望する退所済み帰/入国者を便乗させるとった方策は考えられます。また、成田空港を利用する帰/入国者向け専用車両「KEISEI SMART ACCESS」のように、帰/入国者に特化した列車、高速バスやチャーター機の運行も、検討されるべきです。
(通常の公共交通機関での移動を制限するなら、それに見合った代替手段の確保は「制限する側の責任」です。)

現状では羽田空港、成田空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港から帰/入国者自身の運転、または家族・友人もしくはハイヤーの送迎で帰宅できる想定でないと、一定期間のホテル滞在が必要です。いずれにせよ、帰/入国者および家族・友人の費用や労力に多大な負担を要しており、一部の帰国者からは「東京中心主義だ」との批判もありました。

Feedback Loopがない現状: 誰に意見を言ったり改善を求めたりしたら良いのか不明

帰/入国者からは「これらの不満や改善要求を言う相手がいない」との声もありました。「帰国・入国する権利」をただ行使しただけでで自由や人権を奪われて協力を強制される一方で、水際対策による社会の受益に見合うだけの待遇を受けられないのなら不満が大きいのも当然。実施する主体である行政に愚痴の一つも言いたくなります。また、たとえば以下のように「消費期限の切れた弁当が配布されたケース」もあるわけで、この粗末な取り扱いに憤って不満をぶつけるのは「わがまま」でも何でもなく、むしろ「極めて真っ当」です。

そうでなくとも、たとえばアレルギーや体質・持病に配慮がないとか、子ども向けの食事や設備の欠如といった現状に改善を求めるのは極めて自然です。自分と類似する境遇の帰/入国者に同じ苦労をして欲しくないし、自分が次に帰/入国したときを考えればなおさら。至極当然の要求です。

しかし、たとえば空港で帰/入国者に直接の対応をしているのは空港の女性グランドスタッフ(地上職員)と外国人労働者たち。調達情報によると、検疫所が航空会社(ANAおよびJAL)と人材派遣会社に外注しているようです。確かに、たとえば羽田空港だと検疫官は約20名で帰/入国者の人数を考えれば捌ききれませんから、外注それ自体は当然でしょう。でも、これでは「水際対策を実施している側」が帰/入国者のニーズを拾い上げるのは難しくなります。実際に、担当者の検疫官に直接の不満を述べたり改善を求めたりできない・しにくい構図を「行政が雲隠れしている」と指摘する意見もありました。
また、帰/入国者に直接対応する業務を女性や外国人労働者といったマイノリティに任せている構造への批判もありました。

つまり、帰/入国者が当事者として直面した課題やニーズに直面するのは航空会社や人材派遣会社に所属する現場スタッフたちのみ。彼(女)らは「検疫所から委託された業務を遂行するだけの立場」に過ぎませんから、水際対策のオペレーションやロジスティクスに関わる根本的な事項を検討・改善する権限を持っていません。そのため、帰/入国者の切実な実情は「水際対策を実施する側」の検疫官や、予算・基本方針を司る厚生労働省本省には届きにくい構図です。

したがって、「食事や宿泊施設がどうであれ、それを決める立場の人たちに不満や改善要求を言えない」ために「不満を口にすることすら許されていない」との感覚を与えてしまっていたのが現場の実情です。「帰国・入国する権利」をただ行使しただけの帰/入国者から自由や人権を強制的に差し出させておいて、不満や改善要求がきちんと検討されないなら、その憤りは極めて正当です。

帰/入国者の「隔離」そのものが予防拘禁: 隔離の是非を都度検討するべき

そもそも、この「隔離」の是非こそ考えなければなりません。
この「隔離」自体は言うまでもなく「私権制限」。よって、その是非を慎重に見定める必要があります。

かつて「感染対策」を理由に、政治・社会による「暴走」やヘイトが許されていました。「ハンセン病」への差別や偏見、そして「隔離」政策です。感染対策が「絶対的な正義」とされてしまった結果、感染者へのヘイトやバッシングが正当化され、いまなお禍根を残しています。この歴史を忘れてはなりません。

いまでも「感染対策」の建前は反対しにくく、感染リスクを少しでも高める行動は「絶対的に悪」とされてしまっています。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染を予防する」との「善」のためなら私権制限すら積極的に支持され、その風潮に批判や疑問を挟もうものなら「そんなことを言っている場合ではない」と封殺されてしまいます。
しかし、「そんなことを言っている場合ではない」との声が強まるからこそ、その反対しがたい「善」が奪っていく自由や人権を見つめ、考えなければならないはずです。

その検証プロセスを怠った結果が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行している地域からの帰/入国者には「申し訳なさそうな態度」が求められ、多少でも待遇改善や権利拡大を訴えれば叩かれる悲惨な現状でしょう。

一方で、帰/入国者たちに「日本に来るな」との言葉を浴びせて「申し訳なさそうな態度」を求める人たちも、たとえば同じ入国者であっても在日米軍にはだんまり。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は国籍や職業を選ぶわけではありませから、たとえば「在日米軍であっても入国させるな」との主張であれば、まだ一貫性があります。しかし、「一般の帰/入国者は嫌がらせ的な対応で日本に来させるな」「でも在日米軍は黙認」との態度は明らかに矛盾しており、合理性を欠いています。

実際に、各空港で米軍関係者は優遇されていました。韓国やドイツから民間機で日本に到着した米軍関係者は抗原検査こそ受けるものの、その結果を待つことはありません。何時間も検査結果を待たされている一般の帰/入国者を尻目に、米軍基地からの送迎バスに乗って帰って行きます。
※検査結果は各検疫所から在日米軍に情報共有され、在日米軍が独自に検疫措置を取るようです。

帰/入国者の日本到着を陰湿な態度で阻止しようと試み、その「帰/入国する権利」を頑なに認めようとしないなら、ぜひ同じ言葉を在日米軍にも投げるべきです。しかし、私を含む帰/入国者をバッシングして「嫌なら来るな」との言葉を浴びせてくる人たちから、なぜか在日米軍への批判は聞こえてきません。

「在日米軍の活動は本邦の防衛・安全保障に必要だから」との擁護もあるでしょう。もしくは「日米地位協定で在日米軍の活動を妨害できないから、日本政府は入国を認めなければならない」との見解も頷けます。
しかし、同時に、事情を抱える帰/入国者にとっても「出入国は必要」だし、「帰/入国する権利は妨げられないから、日本政府は帰/入国を認めなければならない」のです。在日米軍と同じように、一般の帰/入国者の出入国は当事者にとって必要だし、政府として認めなければなりません。

「一般の帰/入国者は叩き、在日米軍は黙殺」の態度は「片手落ち」で、「政府や米軍を叩く勇気がないだけ」の弱腰な態度に他なりません。立場の弱い帰/入国者だけ叩くのは単なる「弱いものいじめ」で、これでは「ネット弁慶」ですらありません。

3. 改善要求への「ネットリンチ」や「帰/入国者叩き」を論破していく

私やアンケート回答者の体験に基づく論点を検証したところで、次に私への誹謗中傷や批判に反論していきたいと思います。

帰国するな!: 邦人の帰国は「当然の権利」。そこまで言うなら、在外邦人が抱える費用やリスクに責任を取れ。

まず、「嫌なら帰国するな」との声が多くありました。しかし、私が潰瘍性大腸炎の治療で一時帰国せざるを得ないように、オミクロン株の流行拡大があっても帰国した在外邦人の多くは「やむを得ない事情」を抱えています。

たとえば「ワンオペ」育児をしている配偶者の手伝い。もう会えないかも知れない高齢の両親への面会。手続きを怠ると失効する運転免許証の更新。若い在外邦人の受験や進学。また、外国での傷病により手術を要するものの、現地の医療機関が新規の入院を受け入れていないために治療で帰国を要するケースもありました。
それぞれ様々な事情を抱えているなか「帰国しなければ良い」との放言は極めて無責任。こういった在外邦人は帰国しなかったら家族に会えなかったり、行政手続や受験・進学の機会を逃したり、健康を害したりしかねません。人生や健康・生命に大きな影響を及ぼす事情ですら「帰国するな」と述べるなら、帰国しないために被る不利益(費用やリスク)を代わるべきです。そうでないなら口を出すべきではありません。

また、私は潰瘍性大腸炎の治療のために一時帰国しました。先述の通り、日本国内での治療に拘る高い合理性があります。もし、「それでも英国で治療を受けるべき」と仰せなら、私の治療や健康に責任を負って、万が一のときに発生した費用を払うべきです。

そして、出入国在留管理庁は邦人の帰国を「国民が当然に有する権利」と明言しています。出入国管理及び難民認定法には邦人の帰国を拒否できる規定はなく、誰も邦人に「帰国するな」と阻めません。だから「帰国するな」とは本来なら誰にも言えないのです。

渡航した「自己責任」だ!: 水際対策の実施は行政の責任。【渡航する=隔離される】ではないので批判できて当然。

次に、「渡航したのだから当然、自己責任だ」との主張もありました。しかし、オミクロン株が流行する以前がそうであったように、外国に渡航したからといって必ずしも隔離されるわけではありません。
よって「渡航する」と「隔離される」を同一視した「渡航した自己責任」との主張は成立しません。

また、帰/入国者に「渡航した責任」があるとしても、水際対策の主体は行政。よって、水際対策の実施責任は行政に所在するわけで、帰/入国者が有する「渡航した責任」とは切り分けて考える必要があります。

原資は税金だ!: 水際対策の「受益者」は国家や市民だから公費負担が適当。また、検疫は公共サービスだから批判できて当然。

驚くべきことに「原資は税金だから文句を言うな」「みんなの奢りなんだから我慢しろ」といった稚拙な主張もありました。しかし、検疫は公共サービス。たとえ原資が税金だったとしても批判できて当然です。さもなければ、税金で運営されている警察や学校の対応に問題があったとしても批判できません。

また、水際対策の「受益者」が誰なのかも考える必要があります。水際対策は「国内に在住する一般市民を外来の感染症から守るため」の施策です。したがって、水際対策の受益者は「国家」「国内の一般市民」であって、「受益者負担の原則」に鑑みると公費での負担は当然です。
この構図において、食事その他が支給されるとしても帰/入国者は「国家や一般市民のために権利を取り上げられた存在」に過ぎません。だから費用を負担しなくても良いし、また費用負担がなくても待遇を批判して良いのです。

かつ、そもそも公費負担は「待遇に文句を言ってはいけない理由」にはなりません。原資が税金の公共サービスは「施し」ではないし、行政サービスを受けたからといって権利が後退するわけではありません。どんな立場であれ行政サービスを批判して良いのは当然です。

無料だから文句を言うな!: 有償・無償と批判の可否は別。また、帰国者も多くは納税者として費用を負担している。

同様に「無料なんだから」と、批判を慎むように求める声もありました。しかし、これが傾聴に値しないのは前項で述べた通りです。
たとえば無料で利用できる警察や公立学校で不祥事があっても、私たちは当然に批判する権利があります。「嫌なら警察を頼るな」とか「文句があるなら私立学校に通え」とはなりませんよね。

それに、帰/入国者も国内の一般市民と同様に「納税者」です。日本国内で買いものをすれば消費税を払うのはもちろん、たとえば日本企業に勤務する駐在員であれば、その給与は源泉徴収の対象です。また、いまは駐在や留学で一時的に外国にいるとしても、外国での生活を始める前は日本で得ていた所得に課税されていました。さらに、日本国内に自動車や不動産を残していたら税金を払っています。よって、そもそも「帰/入国者が費用を負担していない」との前提条件からして誤っています。だから「税金で用意して貰った」とは言うものの、帰/入国者も納税者として費用を負担している一員です。どうして批判したらいけないのでしょうか。

「やかましい」って、単に言い返せないだけですよね。頭が悪いなあ。

しかも、帰/入国者も納税者の一員なのに、往々にして日本政府の行政サービスから漏れがちです。たとえば特別定額給付金として支給された10万円は在外邦人に支給されていないし、もちろんGo To キャンペーンは外国で使えません。なんだかんだ税金は取られるのに還元されないとしたら、せめて美味しい食事や窮屈でない部屋・待遇くらい求めて良いし、これで叩かれる理由が奇怪です。突っ掛かってくる人たちの理解に苦しみます。

というか、「無料だから」と感謝や我慢を強要されるなら、有料でアップグレードできる選択肢があるべきです。否応なく――有償での選択の余地なく押し付けられるなら、要求水準が高くなるのも当然です。

感謝せよ!: 望まないのに監禁されて「感謝」の余地はない。また、感謝は強要されるものではなく「内心の自由」。

信じられないことに、「感謝せよ!」と強要してくる人もいました。しかし、たとえば冤罪での逮捕のように、望まないのに監禁されて「ありがとう」と思う人はいないでしょう。かつ、そのような恩着せがましい態度に接すると、口が裂けても感謝を述べたくなくなるのも自然な感情です。さらに、そもそも感謝の有無は不可侵な「内心の自由」の範疇であり、他人に強要される筋合いはありません。

現場で汗を流す人たちがいる!: 現場への敬意と政策の議論は別。「兵隊さんありがとう」と戦争の是非を混同するな。

現場で汗を流す人たちの存在は理解するものの、しかし政策としての水際対策とは別のレイヤーで考えるべきです。現場で接する人たちにはお礼を述べたり「お疲れさまです」と声を掛けたりするように努めていたものの、それと政策としての水際対策は切り分けて考えなければなりません。さもなければ「兵隊さんありがとう」で、戦争の是非から議論を避け続けてきた時代と何ら変わりません。現場の方々への感謝や敬意は大切ながら、それで政策としての水際対策の議論や検討から目を背けてはなりません。

文句を言わない人たちも大勢いる!: 叩く人が多いから表だって「言えない」だけ。アンケートには多くの切実な声。

「何も文句を言わない人たちだっているのに、なんで批判するんだ!」との批判もありました。しかし、これも「当て擦り」の域を出ません。たとえば食物アレルギーがない人はアレルギーに配慮されない実態に憤らないでしょう。帰/入国者の多数が「たまたま困らなかったから批判しなかった」からといって、少数が困らないとは限らないし、困っているなら1人でも声を挙げて良いのは明らかです。

また、私に集中砲火が相次いだように、いざ声を挙げようにも心ない言葉を浴びせられる(のが容易に想定される)から「声を挙げられない」実態にも鑑みなければなりません。罵詈雑言で脅迫・恫喝して口を塞いでいるだけで、そもそも「文句を言わない人たちが多い」との前提からして誤っている可能性が高いのです。

さらに、宿泊施設ごとの「ガチャ」「当たり外れ」が大きかった事情を踏まえると、たまたま「当たり」だった人から不満が出ないのも頷けます。しかし、それは「外れ」だった人からの声の正当性を貶めるものではありません。


こんなツイートに日本人の大多数は怒っている!: Twitterを「世論」と勘違いしていて笑止。かつ【多数=正義】じゃありませんよね。

「お前のツイートに多くの日本人は怒っているんだ!」との言い掛かりもありました。ツッコミどころが満載です。「多くの日本人」って、具体的に誰ですかね?

まず、Twitterにいるのは日本人の一部で、【Twitter=日本の世論全体】ではありません。Twitterで批判が集まっているから多くの日本人が怒っている、との認識は誤り。それに、そもそもTwitterにいる日本人ユーザー全員が私へのバッシングに参加していたわけじゃありませんよね。

次に、多数決は民主的正統性を担保するプロセスであって、真偽や正誤を決めるものではなく、【世論の多数=正義】とも限りません。たとえば裁判所の判断が世論や民意に容易く左右され、判決が歪んではいけません。

さらに、共感・反感で正誤や真偽が決まるわけでもないので、やはり【反感を買う=誤っている】わけでもありません。むしろ、共感・反感の議論は「感情論」でしかありません。
よって、「Twitterで集中砲火を受けているから誤り」とは言えません。

しかし、私が多くの日本人Twitterユーザーからバッシングを受けたのは事実です。日本人Twitterユーザーの分母となる日本人のパスポート取得率は僅か2割。水際対策の強化による「鎖国」が支持された背景として、この低い国際感覚を指摘できます。それでも、たとえ同情や支持が集まらなくとも、もしくは大勢にバッシングされたとしても、私や帰/入国者全体の人権が後退するわけではありません。さもなければ究極的には「嫌われ者は殺しても良い」魔女裁判や、「少数派の人権は容易く否定される」差別の容認に陥りかねません。

一般的なアレルギーには対応している!: アレルギーは選べないし、致命的な場合も。抜け漏れない対応は行政の責任。

河野太郎 衆議院議員が「稀なアレルギーに対応できない場合がある」と述べたのを受けて、「一般的なアレルギーには対応しているはずだ!」との主張もありました。しかし、これは実態に即していません。

まず、弁当は「一律に配食」されており、そもそもアレルギーに配慮されている様子はありませんでした。あくまで帰/入国者の「注意」に委ねられており、たとえば帰/入国者が気づかずに食べてしまった場合や、微量でもアレルギー反応を起こすケースは考慮されていません。これは他の施設(警察大学校 南寮)でも同様のようです。

次に、アレルギーの内容は本人すら選べませんから、「一般的なアレルギーに対応しているだけ」では不十分。水際対策で選択の余地なく強制的に収容するなら、その対応は水際対策を実施する行政の責任です。

だから「一般的なアレルギーには対応している(はずだ)」との擁護は的外れ。選択の余地なく、しかも帰/入国者に買いものできるタイミングら与えずに収容するなら、抜け漏れ・不備のない対応は水際対策を実施する行政の責任として対応されなければなりません。

帰/入国者こそ完璧な準備をせよ!: 市中感染のリスクもあるなか完璧な準備は困難。それに保安検査や動物・植物検疫も。

「アレルギーその他への配慮が必要なら、自分で完璧に準備しておけば良かった」との指摘もありました。しかし、およそ現実的ではありません。

まず、先述の通り、「受益者負担の原則」から帰/入国者の隔離に必要な費用は水際対策の受益者である国家や一般市民が支払うべき。本来なら「自分で準備しなければならない」構図そのものがおかしいのです。

次に、「完璧な準備」はあり得ません。どんなに万全な準備をしたつもりでも抜け漏れはあり得るし、多少の忘れものは誰にでも起こり得るわけで、これを責めるのは酷でしょう。それに、想定していなかったトラブルで何かのアイテムが急遽、必要になる場合もあります。たとえばロストバゲージのように、およそ本人の責任ではない事態も起き得ます。すべての事態を先回りして用意するのは不可能ですから、そもそも「完璧な準備」を求めるのが間違っています。

さらに、先述の通り「公式での情報発信」がないため、何が必要なのか事前に分かりません。出発に先立って、たとえばAmazonやUber EATSの利用可否、食事のメニュー、配布される消耗品を厚生労働省の新型コロナウイルス感染症相談窓口に電話で問い合わせても、「詳しくは到着してから検疫所の職員に確認してくれ」と言われるだけ。つまり、「何が用意されている・されていない着いてみないと分からない」。これでは準備しようがありません。もはや夜逃げのように、すべての荷物を持って移動せよとでも言うのでしょうか。

そして、準備のため買いものに行けば感染リスクを上げてしまいます。当時はオミクロン株の流行が市中で始まっており、たとえばロンドンでもマスク着用や外出自粛は求められていました。すべての品物がオンラインで揃うとは限らないものの、やはり市中に赴けばオミクロン株に流行する可能性を高めるだけです。その結果として、オミクロン株に感染してしまうかもしれません。オミクロン株の感染拡大防止のための水際対策に備えた結果として外国でオミクロン株に感染してオミクロン株を持ち帰ってしまったら、単に「本末転倒」です。

最後に、食料品を持ち込もうにも、動物・植物検疫を考えなければなりません。たとえば肉類や果物は弾かれてしまいます。また、保安検査や預け入れ荷物のルール(質量や個数)も考えると、食料品や消耗品も多くは運べません。それに、6泊の待機ですから生ものも持ち込めません。

よって、「完璧な準備」とやらが明らかに「机上の空論」だと分かります。

クレーマーは黙れ!: 絶対に黙りません。むしろ正当な主張(クレーム)を忖度せず口にするのは当然。

「あいつはクレーマーだ!」との批判もありました。しかし、正当な主張・クレームは当然の権利です。たとえば子どもが学校で同級生にいじめられたり、それを教職員に放置されたりしたら、相手の家庭や学校の責任者に抗議しますよね。

否応なく隔離されるなら、たとえばアレルギーや持病への配慮は当然の要求であり、その不足や欠如に抗議するのは真っ当な主張・クレームです。それを「モンスタークレーマー」として退けたり、誹ったりするべきではありません。

理不尽・不条理に黙っていたら、決して状況は改善しませんよね。

「お上」には黙って従え!: 政府は「(お)上」じゃないし、政策が不当なら批判するのは当然。国は「黙って従う」ものではない。

国を「お上」と崇め、政府は国民の権利を躊躇なく侵害・制限して良いかのような言説も見られました。また「お上は怖い」とも脅しています。

まず、日本国憲法に定められたとおり、国民は「主権者」です。国は「(お)上」ではありません。「お上」との封建的な呼称をしている時点で、自由や権利、また民主主義に理解がないのを露呈しています。頭が悪いですね。
次に、政府や国家はフリーハンド(自由裁量)で国民の自由や権利を制限できるわけではありません。その制限は「公共の福祉」に基づき最少限度でなければならないし、また「法律の留保」により侵害行政には法的根拠が必要です。
よって、政府や国家を「お上」と崇め、無条件に従うべきとするかのような言説は傾聴に値しません。

また、私による隔離の待遇の批判や改善要求を、与党支持者の一部が「政権批判」と取り違えたのではないか、との指摘もありました。つまり、単なる「もらい事故」だ、ということです。

確かに、私を叩いてきたユーザーの多くは「ネット右翼」と呼ばれる右派・与党支持者でした。かくいう私も自宅に岸田文雄 内閣総理大臣の色紙があったり、安倍晋三 元内閣総理大臣と生前にやり取りがあったりと、ネット右翼の方々より遙かに自由民主党のお世話になっているのですが……、はて。

アパホテルは素晴らしいホテルだ!: それって貴方の趣味ですよね?約1週間も缶詰めにされるホテルじゃない。

もはや引用する気が起きないものの、「アパホテルは素晴らしいホテルだ!」と無理やりな主張で政府を擁護する見解もありました。しかし、先述の通り、11m2の客室は1-2泊ならともかく、間違っても約1週間も缶詰めにされる部屋ではありません。私が収容されたアパホテル&リゾート 横浜ベイタワーは浴槽や温水洗浄便座こそあれど、アパホテルの経営目標のために「意図的に客室が狭く設計された」宿泊施設。それでも「素晴らしい」と擁護するのは自由になされば良いと思いますが、その個人の感想をもって政府の対応を擁護はできません。

共感できない・反感を買った!: 単なる言い掛かり・トーンポリシング。共感・反感をベースに政策を論じるな。

「言い回しが反感を買う」と、口調や文言を問題視する主張もありました。単なる「言い掛かり」「言葉狩り」ですよね。これを「助け船」と言い張っているのも笑えます。何様なんだろう。

内容の真偽や正誤に口調や文言は関係ないし、当事者として言葉が強くなるのも当然でしょう。それを「聞こえの良い言葉は伝わらなくて当然」とするかのような的外れな見解は唾棄するべきです。

「北朝鮮の工作員だ!」: 意味不明。

おわりに

このように「帰国の権利」を行使しただけで、太陽すら眺められない狭い部屋に閉じ込められ、アレルギーや持病にすら配慮のない冷たい食事を押し付けられたばかりか、その待遇を批判したらネットリンチを受けて、意味不明で的外れな言説や誹謗中傷の数々を理不尽にも浴びせられました。

以後、私は継続的なフラッシュバックに悩まされるようになりました。そのたびにPCを壊したり、ディスプレイを叩き割ったりしています。
また、ネットリンチにより精神的に参ってしまい、精神的にオンライン授業への出席も叶わず、休学を余儀なくされました。睡眠薬や抗うつ剤も処方されました。しかし、ネットリンチの加害者たちは一向に謝罪をしません。

また、何かあるたびに「隔離で有名になった人」と茶化されるようにもなりました。何か間違ったことを言ったわけでもないのに「汚点」かのように後ろ指を差され、私の名誉や尊厳が回復することもありません。ずっと「風評加害」され続けたまま。

1つ朗報があるとしたら、あれから日本国内で多くの感染者と死者が生じたことです。あのとき「デジタル暴力」を振るってきた加害者たちが苦しんでいると思うと嬉しくなりますね。もはやネットリンチは「デジタルホロコースト」なわけで、ユダヤ人がドイツ(人)を大雑把でも恨み、またその不幸願い、喜ぶのは自然でしょう。だから、加害者たちに限らず「日本人」全体が苦しんでいると思うとウキウキします。

私のツイートを批判してきた人たちは、帰/入国者を見捨てる自分たちを正当化するため執拗に「粗探し」していました。「こんな人間だから冷遇して良い」とか「こういう経歴があるから叩いても許される」と納得する根拠を見出すために、血眼になって「落ち度」や「擁護しない理由」を漁られ、不当に叩かれたのでした。
その結果、「こんな時期に帰国した」「なのに政府に楯突いた」と、「非国民」として「魔女狩り」に遭ったのです。もはや「一切の落ち度がない完璧な人間でないと批判してはならない」かのよう。そんな無茶苦茶な論理には、微塵も正当性はありません。

その「魔女狩り」に参加したり、「魔女狩り」を扇動したりしていたのは多くの「日本人」でした。そんな投稿に「リツイート」や「いいね」で加勢していたのも、もっと多くの「日本人」でした。そして、私が不当に叩かれているのを傍観して、「見て見ぬ振り」をしていたのも、さらに多くの「日本人」でした。

たとえば直接「いじめ」をするだけでなく、加勢したり「見て見ぬ振り」したりするのも「いじめ」ですよね。同じように、私にとって「日本人」とは「ネットリンチの加害者たち」なのです。

彼らは私を粗探しして、「いじめる理由」「加勢する理由」「見て見ぬ振りする理由」を賢明に見つけようとして、ともすればでっち上げてでも、私へのネットリンチに何らかの形で加担しました。それに、叩いてきた人も、私のことを――なんなら「在外邦人」そのものを――「日本人」「同胞」の一員としてすら思っていませんよね。

だから、敢えて私は言います。「私は貴方たち『日本人』に迫害されました」。昨今は誹謗中傷を「デジタル暴力」とも呼ぶようです。もはやネットリンチは「デジタルホロコースト」でしょう。

たとえばユダヤ人がドイツ(人)を「ホロコーストの加害者」として大雑把に憎悪の対象としたとして、批判されるべきではないでしょう。むしろ当然の感情です。
同様に、もはや私にとって「日本人」は「デジタルホロコーストの加害者」です。「日本人」からの理不尽な悪意や敵意に晒され、不当な憎悪や怨嗟を浴びたのですから、自然な発想でしょう。

「私はネットリンチやデジタルホロコーストに加担していない!」と言いたい方々もいるでしょう。しかし、憤るべき矛先は私ではなく、あくまでネットリンチやデジタルホロコーストの加害者たちです。ドイツ人が怒るべきは自分たちを「ホロコーストの加害者」として扱うユダヤ人ではなく、ホロコーストの加害者であるヒトラーやナチですよね。「自分はネットリンチやデジタルホロコーストに加担していない」と思うなら、被害者の私ではなく、どうぞ加害者たちに憤ってください。

いずれにしても、感染拡大ざまあみろ。あのとき必死になって私たち帰/入国者を「バイ菌」扱いして爪弾きにしようとしていたのに、逆に自分たちだけ感染している姿は非常に滑稽で笑えますね。不合理な隔離の「因果応報」です。
私は感染拡大していないので、とても良い気味です。

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