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AI時代を生き抜く研究者になるために

「AI時代」について考える前に、学生時代の成績と研究能力の関係について考えてみよう。個人的な経験則ではあるが、私が見てきた限り、テストの成績と研究能力は必ずしも一致していない。偏差値の高い大学に入学し、成績が優秀であるに越したことはないのだが、それがそのまま優れた研究能力に直結するかというと、そうでもない。

① 研究能力はある種の才能であり、センスである

科学における研究とは、未知の現象を解明したり、新しい手法を発明することである。つまり、試験のように必ずしも答えがあるものではない。もっといえば、「この実験結果では、ここまでのことが『もっともらしい』といえる」の連続であり、あくまで推定にすぎない。そこで、どのような「問い」を設定し、それを「どのように解くのか」が重要になる。そこには、芸術の世界と同様、才能とセンスが必要だ。そして、その才能とセンスは、個々人の努力はもとより、良き指導者によって磨かれていく。

【ポイント】
・良き指導者に師事し、研究センスを磨く


② 実験は量をこなすのでなく、質を大事にする

実験に失敗はつきものである。というより、実験は失敗の連続であり、失敗するからこそ実験だとも言える。しかし、ただ闇雲に実験をこなすということには賛同できない。たまに「私は、実験の量だけなら、誰にも負けないです」と自慢するものがいるが、それはもう時代遅れだと思う。実験を失敗すること自体は悪くないのだが、失敗した原因をよく考え、生データを何度も見直してから、次の実験に取り組むことが重要であろう。それでも失敗するのならば、次に打つ手が自ずと見えてくるはずだ。そのため、実験には「質」が大切なのである。

【ポイント】
・質の高い実験を優先し、無意味な実験を闇雲にしない


③ 最新AIの登場により、ひとりで出来ることが劇的に増えている

さて、ついに「AIの話題」に触れる。ChatGPT、Gemini、Copilotなどに代表されるAIの劇的な進歩で、驚くほど情報のインプットが容易になり、アウトプットにも有効に活用できる。生成AIは、日々進化しているので、AIに関する情報には、敏感にアンテナを張っておくべきだ。そして、ここからが研究者の腕の見せ所になる。AIの進歩は素晴らしいが、AI自身が未知の現象の解明・斬新な発明をすることは、現時点ではできない。そこで、AIを駆使しつつ、自身の「センス」により、新たな世界へと踏み込んでいくのが、現代のサイエンスであろう。

【ポイント】
・インプット・アウトプットではAIを利用し、未知の領域へと踏み込むのが研究者の役割である


もちろん、地頭の良さが大切であることは言うまでもないし、良き指導者は偏差値の高い大学にラボを持っている可能性が高いのは事実である。

ただし、AIが急速に発達している現代において、必ずしもビッグラボにいる必要はないのかもしれないとも思うのだ。資金の少ない小規模なラボでも、画期的な研究に成功する可能性は、とても高くなっているのではないだろうか。

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