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大学教員(理系)を目指すあなたに

本記事では、「大学教員(理系)」について取り上げる。内容は、私の実体験や知人の体験話をもとに作成しているため、理系、特に生命科学系の話に偏っていることをご了承頂きたい。

私の経歴を紹介しておくと、博士課程を修了後、ポスドク(国内)を3年間、研究所・主任研究員(国内)を11年間経た後、現在の大学教員(准教授)のポストについている。専門は、分子生物学・生物情報学である。

【1】研究室の選択

研究室選びから話を始める。読者の方には「今更変えられない」という方が多数かと思われるが、大事なことなので、ここから話を始めたい。

研究室を選ぶにあたって、大学教員になるための近道は、大学内外で名が知れ渡っている「著名な教授・准教授」の研究室に所属することである。もちろん、自分が興味のある分野の研究室を選ぶのが、自身の幸福面からいっても1番であり、興味のある研究分野でなければ、自発的に取り組むことは難しいだろう。

だが、必ずしも所属する大学で、著名な先生の研究室と、自分の興味とが一致するとは限らないのが難しいところである。そこで、中庸の道を行くのが良い。まず著名な先生をピックアップし、自分の興味に1番近い先生の研究室の門を叩くのがベストである。

また、いわゆる有名大学出身でない場合は、大学院から有名大学への進学をお勧めする。やはり日本では、有名大学の著名な先生の研究室に所属することが、大学教員への1番の道のりである。また、大学受験と違って、大学院受験のハードルは比較的低い。

【2】博士課程

研究人生において、博士課程の期間がその後の進路に1番重要な時期ではないかと思う。とにかく研究に没頭し、業績をあげることに専念する。バイトをしているヒマはまったくない(ただし、研究関連のバイトはOK)。学費面で厳しいのであれば、日本学生支援機構の奨学金(借金)を背負ってでも、研究をすべきである。

そして、1報でも多く「筆頭著書の英語論文」を出し、「日本学術振興会 特別研究員 DC1・DC2」に採択される必要がある。狭き門ではあるが、まずはここを突破しなくてはならない。自分の周りを見渡しても、大学教員になっている知人は、ほぼ全員、日本学術振興会の特別研究員に採用されている。まずは、この特別研究員に選ばれることを第一目標とすべきであろう。

【3】ポスドク・助教

博士課程修了後、希望の大学の「助教」になれるのであれば、それでよい。ただし、これは一概には言えないのだが、博士課程からすぐに助教になる道を選ぶと、助教時代にかなりの雑用が待っており、そこで業績が出せずに潰れてしまう人もいる。もちろん、そのまま講師〜准教授〜教授という王道を進む優秀な人もたくさんいる。そのため、「一概には言えない」のだ。一般論を言ってしまえば、助教という職を得ただけでも、かなり優秀だと考えて良いと思う。

助教の道を選ばない場合に、以下の2つの道筋を提案したい。

①海外ポスドク

私の多くの知人が、2〜4年間の海外ポスドクを経験している。実際に、海外のビッグラボに所属することによって、一回りも二回りも大きくなって帰国してくる。海外学振以外にも、いろいろなフェローシップ制度があるので、ぜひとも最新情報を吸収して頂きたい。

海外のビッグラボに所属するメリットはたくさんある。

・著名な雑誌(Cell、Nature、Science)に掲載される可能性が高くなる
・恩師の先生とは一生の付き合いになり、日本で学会を開く際に呼ぶことができる
・英語が堪能になり、世界中に友人ができる
・人生の視野が広がる
・帰国してからの進路が、地位の高い位置(講師以上)から狙える

②国内ポスドク

私の場合は、博士課程から次の進路を選ぶにあたって、研究分野を変えたいという希望を持っていたため、他大学の国内ポスドク(日本学術振興会 特別研究員 PD)を狙うことにした。いわゆる学振PDである。倍率も高く、かなり高いハードルである。以下に、学振PDを目指す際に押さえておきたいポイントを記す。

・筆頭論文を積み重ねておく(インパクトファクターの合計が10を超えていることが望ましい)
・移りたい研究室に何度も通い、大学の先生に学振の申請書を精査してもらえるくらいの仲になる
・挑戦的なテーマであり、かつ、博士課程での経験を活かした物語性のある申請書にする

【4】講師・研究所職員

ここで希望の大学の「講師」になれていれば、もう御の字であり、私からのアドバイスは必要ないだろう。ただし、教員の数は限られているため、すぐに「講師」という職につけない可能性の方が圧倒的に高い(私もその一人である)。そこで、研究所職員という道を選択しておくのがよいだろう。研究所としては、以下の研究所が良く耳にする名前であるが、これら以外にも、分野によって自分に適切な研究所を選択すればよいと思う。

・理化学研究所(RIKEN)
・産業技術総合研究所(AIST)
・物質・材料研究機構(NIMS)
・国立感染症研究所(NIID)
・海洋研究開発機構(JAMSTEC)

ここで、コンスタントに業績を積み重ねつつ、良い成果が得られた際には、積極的にプレスリリースを行い、自身の知名度を上げることが大切である。

そのため、国内・国際学会での発表は毎年きちんと行い、懇親会にも出て、自分の名前を売っておくことが大切である。そして、学会ではポスター賞、プレゼンテーション賞を受賞することは必須であり、最終的には所属学会の奨励賞(もしくは同等の若手対象の賞)を受賞することが望ましい。

【5】自分だけの武器を持つ

分野にもよると思うが、私は生命科学分野に属しており、最も競争率の高い場所にいたと思う。そこで、私からのアドバイスとしては、「他人にはできない自分だけの武器を持つ」ことだと思う。

私の場合、それまでWetの実験ばかりやっていたが、2020年のコロナ禍をきっかけに、生物情報学、すなわち、機械学習・ディープラーニングなどのDryな研究手法も身に着けた。それが結果的に良い方向に働き、「WetもDryもできる研究者」として認知され、現在の大学での採用に至ったという経緯がある。このように、採用側が欲しいと思わせるような、自分だけの武器を持つことが重要である。

本記事が、大学教員を目指すあなたに少しでも役にたてば嬉しく思う。

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