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波風立てずに勝つ: 職場の攻撃的態度に対応する方法ー司 拓也氏ープレジデント誌

 『プレジデント(2024年5/31号)』の中で、「職場の心理学:職場で波風立てずに言い返す技術気が弱い人でも大丈夫!」(p98)司 拓也氏 は大変興味深い内容でした。職場における攻撃的な発言や態度に対処する技術について、「波風立てずに言い返す技術」が紹介されています。これらの技術は、立場の上下や今後の人間関係を考慮しながら、エスカレートや便乗を防ぐために適切に対応することを目的としています。特に気が弱い人でも実践できるように工夫されたアプローチが特徴であり、即時活用ができそうです。簡単にまとめてみました。


1. 承認を用いたレスポンス

 攻撃的な発言を受けた際に、否定的な言葉で防御するのではなく、「はい、そうです」「おっしゃる通りです」といった承認の言葉で返すことで、相手の攻撃意図をかわすことができます。これにより、攻撃者が期待する「反撃」の図式を避けることができ、相手の目的である害を与えることを無効化します。例えば「おまえはばかか!」と言われたら、「はい、ばかです」「おっしゃる通り」と返すことで、相手の攻撃の意図が外れ、攻撃の勢いが削がれます。これは、否定的な反応を見せず、相手の言葉をそのまま受け入れることで、攻撃者が困惑することを狙っています。反撃をしてしまうと火に油を注ぐことになりますが、それを防ぐ効果があるでしょう。

2. 教えを乞う姿勢

 1.に続き、さらに、「どうしたらいいと思いますか?」と質問し、さらに「教えてください!」と教えを乞う姿勢を見せることで、相手は応じざるを得なくなり、攻撃の勢いが弱まります。例えば、「おまえはこんな簡単なこともできないなんて、ばかじゃないの?」という発言に対しては、「はい。自分でもばかだと思います。どうしたらいいでしょうか。ご教示ください」と返すことが効果的です。もし相手が「そんなのは自分で考えろ!」と言った場合でも、「はい。考えてはみたのですが、どうしてもわからないんです。どうか助けると思って教えてください」と粘り強く尋ね続けます。このようにすることで、相手はアドバイスをする立場に立たされ、攻撃的な態度を続けにくくなります。一般に、教えを請われるということは、悪い気はしないのではないでしょうか。

3. 明るい声と姿勢

 「ポーカーボイス」と呼ばれる技術では、明るい声で対応することが推奨されています。鎖骨の位置を通常より10cmほど上げて胸を張り、背筋を伸ばすことで自然と明るく通る声が出るようになります。これにより、声に自信と高いエネルギーがこもり、攻撃的な相手に対しても動じない印象を与えることができます。また、MJ型と呼ばれる口の形(上の歯が全て見える逆三角形)を維持することで、自然と目尻が下がり、笑顔を作り出すことができます。笑顔は心に余裕があるときに出るものですが、逆に笑顔を作ることで心に余裕が生まれるという効果もあります。MJ型の口から発せられる声は、自信と高いエネルギーがこもった、明るく高く通る声になります。

4. 視線の工夫

 相手の左目の瞳の中にある光を見るように視線を向けることで、相手は「見られている」ことを強く意識し、こちらの真意を探られているような気持ちになります。これにより、相手の攻撃的な態度を和らげることができます。人と話すのが苦手な人は、無意識に眉間や顎に目をやってしまいがちですが、攻撃がエスカレートする可能性があります。両目をガン見すると、今度は相手の敵対本能を刺激してしまうため、バランスが重要です。瞳の中の光を見ようとすると少し覗き込むような感じになり、相手は「見られている」ことを意識し、視線を意識することで攻撃の意欲が減少します。

5. 認知的不協和の利用

 アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーの「認知的不協和の解消」理論を利用する方法も効果的です。この理論によれば、人は自分の行動と認識の間にギャップが生じた場合、それを埋めるために自分の認識を修正する傾向があります。つまり、最初はあなたが嫌いで落ち込むさまを見てやろうと暴言を浴びせたのに、あなたが落ち込むどころかにこやかにそれを聞いて自分にアドバイスを求めてくると、相手は「自分があいつに言葉をかけているのは、あいつのことを気に入っているからだ」と認識を修正するようになります。

6. 経験談からの教訓

 著者の経験では、保険会社での怖い課長に対しても「教えてください」と応じ続けた結果、次第に仕事の奥義や裏情報を教えてくれるようになり、職場での関係が改善されました。これにより、鬱屈した人の心が浄化され、働きやすい雰囲気が醸成される可能性があります。著者が何を言われてもへこたれず「教えてください」と応じ続けた結果、だんだんと鬼の形相が柔和になり、最後には「頑固なところはあるが話せばわかる人」という評価に変わったといいます。この経験から、攻撃的な相手に対しても適切に言い返すことで、相手の態度が軟化し、職場全体の雰囲気が改善される可能性があると述べています。

7. 周囲への影響と自分の成長

 攻撃に対して適切に言い返すことは、単に自分を守るだけでなく、周囲の人々に対しても良い影響を与える可能性があります。あなたが「言い返さない人」と見なされると、便乗して攻撃してくる人が出てくる可能性もありますが、適切に対応することでそうした便乗者を防ぎ、職場全体の健全なコミュニケーションを促進することができます。さらに、自分自身も「言われっぱなしではない」と自信を持つことができ、精神的なストレスを軽減する効果もあります。

まとめ

 攻撃的な人に対して適切に言い返すことで、相手の攻撃意図を和らげ、職場の雰囲気を改善することが可能です。重要なのは、自分が落ち込む姿を見せず、明るく前向きな態度で対応することです。承認や教えを乞う姿勢、明るい声と姿勢、視線の工夫を取り入れることで、攻撃的な態度を無力化し、相手の認識を変えることができます。これにより、職場全体が健全な環境に近づき、自分自身もより好意的に受け入れられるようになるでしょう。
 また、あなたの対応次第では、攻撃的な相手が次第にあなたの味方になり、職場全体の人間関係が良好になる可能性があります。言い返す技術を身につけることで、職場での人間関係をより良くし、自分自身も成長できるチャンスがあるのだと思います。私もチャレンジしてみたいと思いました。

穏やかなオフィス環境で従業員が対立的な同僚に冷静に対応している様子を美しく描写しています。従業員の自信に満ちた姿勢やほほえみ、目を合わせた視線が、同僚の攻撃的な態度を和らげています。デスクや椅子、植物が配置された背景が、落ち着いた雰囲気を一層引き立てており、職場での冷静で落ち着いたコミュニケーション技術の効果を表現しています。


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