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川上真史氏ー企業の持続的成長に向けたエンカレッジメントの活用: 従業員の個性を活かす人事施策

 川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #9 エンカレッジメント」というテーマは、古くて新しい概念を改めて認識する良い機会となりました。エンカレッジメントとは、単に人を励ますことではなく、自分の意思や判断に基づいて主体的に行動を起こすための勇気を与えることを指しています。

 具体的には、他者のために生きるのではなく、自分の意思で主体的に生きる責任を持つことの重要性が強調されています。周囲の人々に認められるために、社会的に望ましいとされる行動をとるのではなく、全ての判断、意思決定、行動の主語を「私」にする責任を持つべきだと述べられています。また、自分以外の人を、自分のために、自分の考え通りに生きさせようとしてはいけないとも指摘されています。

 では、どうすれば人に勇気を与えることができるのでしょうか。まず、相手を評価したり評論したりするのではなく、相手の行動に関する自身の感想や意見を伝えるべきだと述べられています。人を褒めたり叱ったりする際にも、評価的なニュアンスを避け、自分の感想を率直に伝えることが大切だと示唆されています。

 また、人を他者とレベルで比較するのは避けるべきだとも指摘されています。例えば、同期の誰かができることを基準にして、本人ができないことを問題視するのではなく、能力や人格などの種類の違いに着目して比較するようにすべきだと述べられています。

 さらに、理想的なモデルを提示して、そのモデルに合わせようとするのではなく、本人の強みを認知させること(個性化)が重要だと強調されています。一人ひとりが持つ特徴を開花させ、それを前面に出して活躍していくことができるようにサポートすることが、エンカレッジメントの本質だと示唆されています。

 以上のように、エンカレッジメントという概念について、自分の意思で主体的に生きる責任の重要性、適切なコミュニケーションの必要性、個性の尊重などの観点から、詳しく解説されていました。人が自分らしく生きていくための勇気を与えるためには、周囲の人々の適切なサポートが不可欠だともいえます。

人事の視点で考える

 エンカレッジメントの概念は、従業員のモチベーションを高め、主体的に働ける環境を整備する上で非常に重要な示唆を与えてくれます。企業が持続的な成長を実現するためには、従業員一人ひとりが自分の力を最大限に発揮できる環境を作ることが不可欠です。エンカレッジメントの考え方を人事施策に取り入れることで、従業員の エンゲージメントを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることができると考えられます。

 まず、従業員一人ひとりが自分の意思で主体的に仕事に取り組むことができるよう、適切な権限委譲と意思決定の機会を与えることが大切です。上司や同僚の期待に応えるために働くのではなく、自分の責任で仕事を遂行できる環境を整備することで、従業員のモチベーションを高められると考えられます。
 具体的には、従業員の能力や経験に応じて、適切な範囲の権限を委譲し、自分で判断して行動できる機会を与えることが重要です。また、意思決定のプロセスに従業員を参加させ、自分の意見を反映できるようにすることも効果的でしょう。

 また、人事評価の際には、単に業績や能力のレベルで従業員を評価するのではなく、一人ひとりの個性や強みに着目することが重要です。画一的な基準で評価するのではなく、従業員の多様性を尊重し、それぞれの特徴を活かせる配置や育成の方法を検討することが求められます。
 例えば、従業員の強みや興味関心を把握し、それを活かせる職務にアサインすることで、従業員のエンゲージメントを高められると考えられます。また、個々の従業員の成長段階に応じて、適切な研修やキャリア開発の機会を提供することも重要です。

 さらに、上司から部下へのフィードバックの方法にも気を配る必要があります。部下の行動を一方的に評価するのではなく、上司自身の感想や意見を率直に伝えることで、部下の主体性を尊重しながら、適切な指導やサポートを行うことができます。
 例えば、部下が取り組んだ仕事について、上司が感じた点を具体的に伝え、良かった点や改善すべき点を一緒に考えることで、部下の成長を促すことができるでしょう。また、日頃から部下とのコミュニケーションを密にとり、信頼関係を築くことも大切です。

 加えて、従業員の成長を支援する施策も重要です。研修や面談などを通じて、従業員が自分の強みを認識し、それを伸ばしていくためのサポートを提供することで、一人ひとりのキャリア開発を促進することができるでしょう。
 例えば、従業員が自分の強みや目標を明確化できるようなキャリア面談を定期的に実施し、必要な支援を提供することが考えられます。また、社内公募制度やジョブローテーションなどを通じて、従業員が様々な経験を積み、自分の可能性を広げられる機会を提供することも効果的です。

 このように、エンカレッジメントの考え方を人事施策に取り入れることで、従業員の主体性を尊重し、個性を活かしながら、組織全体のパフォーマンスを高めていくことができると考えられます。一人ひとりが自分らしく働ける環境を整備することが、人事の重要な役割だといえるでしょう。それは、従業員のウェルビーイングを高めるだけでなく、企業の持続的な成長にもつながります。エンカレッジメントの考え方を踏まえながら、従業員の エンゲージメントを高める施策を積極的に推進していくことが、これからの人事に求められているといえるでしょう。


エンカレッジメントの概念を反映したオフィスのシーンです。多様な従業員が大きな会議テーブルの周りで積極的にアイデアを交換し、マネージャーが意見を聞きながらノートを取っています。白板にはたくさんのメモが書かれ、壁には「Encouragement(エンカレッジメント)」と「Empowerment(エンパワーメント)」というモチベーションポスターが貼られています。オープンで包容力のある企業文化を表現するため、日光が窓から差し込み、明るく温かい雰囲気を醸し出しています。これは、ビジネスにおける従業員のエンゲージメントとチームワークの重要性を描いたものです。

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