見出し画像

【書籍】才能を最大限に引き出す新時代のトレーニング法ー林成之さん

『一生学べる仕事力大全』(致知出版社、2023年)のp158「人生の勝負とは自分の才能を発揮することー林成之さん」を取り上げたいと思います。

 従来のスポーツ界では、国内選考レースを目指して厳しい練習を積み、オリンピック本番に向けては一度ペースを落とし、体調を整える方法が一般的でした。しかし、この方法では脳が「ペースを落とす」という否定的な信号を受け取り、自己保存の本能を優先させるため、最高のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。

 新しいアプローチでは、ドーパミンの作用を活用し、「調子を維持するどころか、さらに駆け上がる」という考えを持ち、極限の訓練を通じて心技体の力を最大限に引き出すことを目指します。この訓練方法は、試合と同じように命懸けの気持ちで全力を出すことで、勝つための時間的ペース配分を空間認知能力に記録させることを目的としています。

 また、オリンピック前の合宿では、選手たちが「いままでこんなきつい合宿は初めてだ」と感じるほどの厳しい訓練が行われました。この合宿では、否定語を使わず、常にポジティブな言葉を使うことが強調され、選手たちの心構えにも影響を与えました。

 この新しいトレーニング理論と心構えは、選手たちが自己ベストを更新し、前回のオリンピックの成績を大きく上回る結果を出すことに成功しました。これは、スポーツだけでなく、日常生活やビジネスなど、あらゆる分野でのパフォーマンス向上にも応用可能な理論であり、自分の才能を最大限に発揮するための重要なヒントを提供しています。

人事としてどう考えるか


 人事の立場から見た場合でも、多くの示唆に富む要素が含まれており、スポーツの世界だけでなく、ビジネスや組織運営にも応用可能な洞察が散りばめられています。特に、脳科学の視点から見たパフォーマンスの最大化、タレントマネジメント、個人のモチベーション向上、そしてチーム作りにおけるコミュニケーションの重要性が、人事戦略を考える上で非常に参考になります。

脳科学と人事戦略

 脳科学の知見を活用することで、人事のプロフェッショナルは従業員のモチベーション向上、学習と成長、パフォーマンスの最大化という点でより効果的なアプローチを取ることができます。ドーパミンのような神経伝達物質が行動や学習、快感にどのように関与しているかを理解することは、従業員が新しいスキルを学ぶやりがいを感じたり、目標達成に向けて動機付けられたりするための戦略を考える上で重要です。

パフォーマンスマネジメント

 パフォーマンスマネジメントの観点からは、個人の限界を超えたパフォーマンスを引き出すためには、単にスキルや知識の向上だけでなく、心理的な要因が大きく影響することが理解されます。極限の訓練が実力以上の力を発揮するために必要であるという考え方は、ビジネスの世界でも、従業員が自らの限界に挑戦し、成長する文化を醸成するために役立ちます。

エンゲージメントとモチベーション

 従業員のエンゲージメントとモチベーションを高めるためには、仕事そのものや達成すべき目標に対する内発的な動機付けが重要です。脳が「報酬」と感じることは、必ずしも金銭的な報酬だけではありません。達成感、成長、所属意識など、多様な報酬が存在します。人事戦略においては、これらの非物質的な報酬をどう組み込むかが、タレントの維持と育成において重要なポイントになります。

コミュニケーションとチームビルディング

 「素直」であることの重要性や、周囲との正の関係性の構築は、組織内のコミュニケーション戦略にも通じるものがあります。人事の立場からは、オープンで建設的なコミュニケーションを促進し、チーム内での信頼関係や協働を深める取り組みが重要です。また、従業員一人ひとりが自己の能力を最大限に発揮できるよう、個々の才能や強みを理解し、それを活かせる環境を提供することが求められます。

人事戦略における脳科学の応用

 これらの点を踏まえ、人事戦略における脳科学の応用は、個々の従業員だけでなく組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。例えば、目標設定の際には、具体的で達成可能な短期目標と長期目標をバランス良く設定し、達成の過程で小さな「報酬」を設けることが、従業員のモチベーション維持につながります。また、継続的なフィードバックや承認は、従業員の成長と成果を促進する重要な要素です。

 これらの脳科学に基づくアプローチを戦略的に取り入れることで、タレントマネジメントの質を高め、組織全体としての競争力を強化することができます。スポーツの世界から学ぶ脳科学の知見は、ビジネスの世界における人的資源の管理と開発においても、大きなヒントとなるものと思います。

新時代のトレーニング方法を象徴する一幕を捉えています。様々なアスリートが自然に囲まれたオリンピックの合宿地で、コーチの励ましのもと、極限の訓練に挑んでいる様子が描かれています。背景に昇る美しい日の出は、脳科学、特にドーパミンの役割を活用して才能を最大限に引き出すことを目指す新しいトレーニング方法の新時代の始まりを象徴しています。この方法は、伝統的なトレーニングアプローチとは対照的に、持続的な改善とピークパフォーマンスを重視しています。限界を押し広げ、チームワーク、そしてスポーツにおける卓越性を目指す美しさがこの画像には表現されています。


 792頁にのぼる大作です。まさに仕事のバイブルとなります。名経営者のインタビューや伝説の名講演、一度きりの師弟対談、創業者同士の対談などが、54話を収録されています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?