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【書籍】お金の不安解消~55歳からの賢い生き方ー臼井由妃さん『55歳から「お金の不安」がなくなる生活術』

 臼井由妃さんの書籍『55歳から「お金の不安」がなくなる生活術』(アルソス、2024年)を読みました。このテーマは、自分自身、そして人事としての立場でも重要であり、大変興味があるところです。


 この本は、特に55歳以上の人々に向けて、お金の不安を解消し、人生後半を楽しみながら生きるためのガイドです。一方、30代や40代の読者にも、人生の後半に向けた準備の心構えを示しています。
 日本人が世界一不安を感じやすいとされ、特にお金に関する不安が高いことが背景にあります。BIGLOBE社の調査によると、約90%の人がお金に不安を感じていることが明らかにされています。老後の資金不足が現実的な問題として浮上しており、特に55歳を迎える頃には、将来のお金に関する不安や焦りが増すことが指摘されています。

 そこでこの書籍では、お金の不安を解消するために、「お金の性格を知る」「賢く使う」「働き方を知る」という三つのキーポイントに焦点を当てています。臼井氏自身が、50歳を迎えた際のお金の不安と向き合い、それを乗り越えた経験を基に、具体的なアドバイスとして展開されています。そして、老後に必要な資金を確保することは、55歳からでも遅くはないとし、賢いお金の使い方や健康を維持する方法、人との関わり方を通じて、人生後半を豊かにするための戦略を紹介しています。

 このガイドは、お金に関する漠然とした不安を具体的な行動に変え、老後も含めた人生を充実させるための実践的なアドバイスとなっています。お金の管理、賢い消費、そして柔軟な働き方を通じて、人生の質を高めることを目指しています。各章の内容を紹介しながら、私自身の見方も加えて生きたと思います。


プロローグ あなたの「お金の不安」はなんですか?

 いわゆる「老後2000万円問題」とよばれる、公的年金だけでは老後の生活が賄えない可能性について解説し、お金の不安を解消する方法を示しています。2019年6月に金融審議会市場ワーキング・グループから発表された報告書がきっかけで広まったこの問題は、65歳以降に30年間生きるためには約2000万円の資金が必要とされています。しかし、これは高齢夫婦無職世帯をモデルにしたケースであり、すべての世帯に当てはまるわけではありません。また、平均寿命や健康状態、働けるかどうかにも左右されるため、一概に2000万円が必要とは限りません。

 お金の不安を解消するには、まず不安を「見える化」することが大切です。そのためには、不安の原因を書き出し、対策を考え、家計の棚卸しをし、収入を増やす方法を検討します。また、定年後の生活費を計算し、自分のライフスタイルに合った資金計画を立てることが重要です。

 さらに、50歳を過ぎたら「やめること」リストを作成し、不要な出費や時間の浪費を省き、必要なお金を把握することで、無駄を省いて賢く節約し、賢く生きる術(賢約)を身につけることが提案されています。

 人生後半をより充実させるためには、「自分が主役」の意識を持ち、自分が心躍ることに時間を使うことが大切です。これには、自分にとって不要な仕事や人間関係を手放す勇気も必要になります。お金の不安を解消し、心豊かに自分らしく人生を楽しむための方法が、具体的に解説されています。

第1章 まずは、お金の性格を理解する

 お金の性格を中心にして、様々なアドバイスや考え方を紹介しています。お金を上手に扱う方法、投資や貯蓄に関するアイデア、お金に好かれる人の特徴、お金の浪費を避ける方法、そして人生やキャリアにおけるお金の役割についての洞察を提供しています。特に、お金に対する正しい姿勢とは何か、日々の生活の中でお金をどう管理し、増やしていくかに焦点を当てています。お金に対する健全な姿勢と管理方法を学ぶことで、より豊かな生活を送ることができるというメッセージが伝えられています。

お金を大切に扱う重要性
 お金に好かれる人は、お金を丁寧に扱い、その価値を認識している人たちです。これには、紙幣の向きを揃えることや、お財布の中身を整理することなど、小さなことからがスタートになります。

投資と貯蓄
 お金を賢く増やすための様々な方法が紹介されています。これには、貯蓄のタイミングを見極めること、目的に応じた貯蓄方法の選択、そして投資への取り組みが含まれます。

お金との健全な関係
 お金と上手に付き合うための心構えや習慣が説明されています。例えば、買い物の際には本当に必要かどうかを考え、無駄遣いを避けること、また、お金の管理を定期的に見直すことが挙げられます。

生活の中でのお金の役割
 お金は生活を支え、目標を達成するための手段です。そのため、お金をただ節約するだけでなく、自己投資や生活の質を高めるために使うことの重要性が強調されています。適切に自己投資を行えば、お金は「資産」となるわけです。

お金に関する心構え
 お金に対する正しい姿勢、例えばお金を尊重し、感謝する心を持つことや、お金を稼ぐ方法だけでなく、使い方にも注意を払うことが重要であるとされています。

お金の管理と計画
 お金を効果的に管理し、将来のために計画を立てることの重要性が説明されています。これには、年始にお金に関する目標を設定し、定期的に進捗を確認することなども一手です。。

第2章 暮らしを豊かにする「賢いお金の使い方」

 ここは、賢いお金の使い方に関する様々なアプローチを提案する内容です。まず、食費の節約が家庭不和の原因になることを警告し、過度な節約の弊害と適切な節約方法について言及しています。次に、家計の無駄を省くために収納を見直し、物を所有する感覚をリセットすることの重要性を説いています。また、物をとことん使い切ることで得られる満足感や、本当に必要な物だけを持つ生活のすすめが説かれています。

 また、自分にとって必要な物だけを持つこと、リユースの励行、ご褒美費を設けることによる浪費防止策、目標を見直して賢くお金を使う方法、そして自己投資の重要性に焦点を当てています。老後の生活資金として年金に頼らず、賢く資産形成をする方法、住居のダウンサイジングのメリット、持ち家の重要性、ポイ活を通じた賢いお金の貯め方、そして継続的な学びの価値が強調されています。

 小銭の賢い使い道や整理方法についても触れられており、日常生活でのお金の賢い扱い方について幅広くカバーしています。全体的に、家計管理、節約、投資、自己啓発に関する実用的なアドバイスが含まれており、お金に関するさまざまな側面から豊かな暮らしを実現するためのヒントが提供されています。

第3章 健康は資産、病は負債。お金をかけない健康法

 お金をかけずに健康を維持する方法について詳しく説明されています。主なポイントは以下の通りです。資産と負債の考え方になります。これらのポイントは、健康を長期的に維持するための基本的かつ実践的なアドバイスを提供しています。食生活、睡眠、運動、美容、予防医学など、日常生活のさまざまな側面から健康を考えることの重要性が強調されています。

発酵食品の重要性
 免疫力向上、アンチエイジング効果、生活習慣病の予防など、多くの健康効果があるとされています。和食が健康に良い理由の一つとして、発酵食品を多用していることが挙げられます。

早寝早起きのメリット
 睡眠の質向上、免疫力アップ、朝の時間を有効活用できるなど、健康だけでなく生活全般においての利点があります。

睡眠スケジュールの設定
 睡眠の質を高めるためには、一定の睡眠スケジュールを設定することが重要です。これには、日中の行動や入浴のタイミングなども関係してきます。

一日3食にこだわらない
 個人の体質や生活リズムに合わせて食事の回数やタイミングを見直すことで、体調を整えることができます。

健康食品や健康法の罠
 広告に惑わされず、根拠のある情報を基にした健康管理を心がけることが重要です。

ラジオ体操の効果
 日常的に行う軽い運動が、健康維持に効果的です。

「イケオジ俳優」「年齢不詳女優」をイメージ
 年齢を重ねても魅力的であり続けるための心構えや努力が重要です。

白髪や薄毛、しわやシミのケア
 外見の変化をポジティブに捉えつつ、適切なケアを行うことで、自信を持って年齢を重ねることができます。

健康診断と歯科検診の重要性
 定期的な検診により、早期発見・早期治療を実現し、健康な生活を送ることができます。

第4章 お金を活かす人づきあい

 人生の後半期における賢明なお金の使い方と、人間関係の築き方について述べられています。特に、収入が減少しがちな50代以降の人生において、どのようにしてお金を活用し、人間関係を選択し、深めていくかに焦点を当てています。人生後半において経済的な資源を賢く管理し、意味のある人間関係を築くための指針が示されています。これは、物質的な豊かさだけでなく、精神的な満足感を追求することの重要性を強調しています。

賢いお金の使い方
 人生後半には「お金をかけるべきところ」と「かけるべきでないところ」を明確に区別することが重要です。衣食住や趣味、学びには投資すべきですが、義理や人情に基づく出費は避けるべきとされています。

人間関係の選択
 人生後半の人間関係は量より質を重視し、自分にとって本当に価値のある関係性を大切にすることが強調されています。実際の友人数は少なくても、質の高い関係を築くことが推奨されます。

お金持ちネットワークの活用
 心や時間に余裕がある人々との関係性を築くことで、経済的な知識や機会が拡がるとしています。ただし、これは相互の尊敬と支援に基づくべきで、一方的な利益追求を避けるべきだとされています。

投資の考え方
 投資は「儲ける」ためではなく、「応援したい企業やプロジェクトに対する支援」という観点から行うべきだと述べられています。これにより、金銭的なリターンだけでなく、精神的な満足感も得られるとされています。

贈り物の哲学
 義理や人情に基づく高価な贈り物ではなく、日常の小さなプレゼントで感謝の気持ちを表現することの重要性が説かれています。また、受け取る側も贈り物に対する姿勢を明確にすることで、無用な誤解や負担を避けるべきだとされています。

第5章 「趣味や特技」をお金に変える方法

 この章では、副業や趣味を収入源に変える多様な方法が説明されており、40代後半以降の人々が自分のスキルや趣味を生かして充実した後半生を送るための実用的なガイドとなっています。まず、副業を開始する際の基本的な心構えから、具体的な収入増加のための資格取得、趣味や特技を活かした収入の事例、オタク文化を収入源に変える方法に至るまで、幅広い内容が網羅されています。特に、副業に関しては、黙って淡々と始めることの重要性や、将来の安定を見据えた収入源としての位置づけが強調されています。

 副業や趣味を収入源に変える方法についての具体的なガイドとしてだけでなく、人生後半における充実した生活を送るための様々なアイデアを提供しています。それは、自分の能力や情熱を最大限に生かし、社会的な需要に応える形で収入を得るという、実践的でありながらも希望に満ちた考えが示されています。

資格取得による収入
 宅建士や社労士など、比較的短期間で取得可能で、収益に繋がりやすい資格が推奨されています。これらの資格を活用することで、専門知識を生かした副業を始めることが可能になり、定年後の収入源としても有効であると説明されています。

オタク文化を収入源にする
 特定の趣味や知識が深い分野を生かしたビジネスチャンスが紹介されており、オタクであることのポジティブな側面として、専門知識や情熱を収入に変える方法が提示されています。これにより、自分の深い興味や情熱を持続可能なビジネスに変えることの可能性が示されています。

自宅を活用したビジネス
 レンタルスペースや自宅での教室運営など、低コストで始められるビジネスモデルが紹介されており、特にリモートワークが普及する現代において、自宅を収入源に変えることの現実性が強調されています。これらのモデルは、定年後の安定した収入として、または趣味を仕事にするという夢を実現するための有効な手段として提示されています。

道楽をビジネスに変える
年齢を重ねたからこそできる種類のビジネスが提案されており、趣味を生かした収入の事例が豊富に紹介されています。これにより、趣味や道楽が単なる遊びではなく、価値あるビジネスチャンスに変わることが示されています。

高齢者向けのビジネス機会
 社会的な需要に応える形での収入源の創出が提案されています。これは、高齢化社会における新たなビジネスモデルの可能性を探るという観点からも重要な意味を持ちます。

お金を介さない働き方
共同体内でのスキルやサービスの交換が、新たな価値創造やコミュニティの結束を強化する手段として提案されています。これは、現代社会における経済活動の新たな形態を模索する試みとして、特に注目に値します。

納税に対するポジティブな考え方や、お金を使う際の心構え
単に収入を得ることだけではなく、その収入をどのように社会や自分自身のために活用するかという、より広い視野を提供しています。

最後に:人事としても非常に重要なテーマ

 この書籍は、年齢を問わず多くの人々にとっての普遍的な悩みである「お金の不安」に対処するための実践的なガイドになっています。特に、日本における老後の資金不足の問題を背景に、55歳以上の人々を主な対象としながらも、30代や40代の読者に対しても人生の後半に向けた準備の心構えを提示しています。

 私が長年人事の立場で経験してきたことから考えるのは、キャリア開発やリタイアメントプランニングの重要性です。従業員のキャリアパスを設計する際には、単に現在の職務内容やスキル開発だけでなく、長期的な生活設計における財務計画の重要性を常に念頭に置く必要があります。

 「お金の性格を知る」「賢く使う」「働き方を知る」という三つのキーポイントは、個人のキャリア計画においても極めて重要です。例えば、キャリアの各段階での貯蓄や投資の戦略を立てること、生活費や教育費などの将来の大きな出費に備えるための計画をすることは、人事が従業員に提供すべき貴重なアドバイスといえるでしょう。

 また、従業員が自己のキャリアを通じて経済的自立を実現し、老後も含めた人生を充実させるためには、組織内での継続的な学びやスキルアップの機会を提供することが重要です。この点において、人事は従業員のキャリア開発支援だけでなく、ライフステージに応じた財務教育やリタイアメントプランニングの支援を行うことで、従業員の人生全般にわたる満足度の向上に貢 献できます。

 さらに、本書が提唱する「お金の管理」「賢い消費」「柔軟な働き方」は、組織の人事政策においても反映することにより、制度が強固になります。たとえば、フレキシブルな働き方の導入は、従業員が仕事と私生活のバランスを取りやすくすることで、生産性の向上につながります。また、人事制度における報酬管理や福利厚生の設計にあたっては、従業員が自己の財務目標に沿って賢く生活できるような支援を行うことが望ましいです。

 組織が従業員に提供できる最大の価値の一つは、彼らが自己実現を果たし、経済的に安定した人生を送るためのサポートを行うことです。本書が提供するアドバイスは、個人の生活設計だけでなく、企業が従業員に対して提供すべき支援や制度設計においても大いに参考になります。従業員一人ひとりが経済的自立と満足度の高い人生を送ることが、結果として組織全体の生産性向上やポジティブな職場環境の構築に寄与するといえるでしょう。

お金の不安を解消し、人生の後半を楽しみながら生きるためのガイドブックの本質を捉えたものです。読書のための快適なノックと平和な庭を望む窓が、静けさと人生の後半の喜びを象徴しています。柔らかな自然光に包まれたこの場所は、すべての年齢の読者が人生の知恵を探求することを歓迎する、温かく希望に満ちた雰囲気を演出しています。

臼井氏の、『55歳から やりたいことを全部やる!時間術』もおすすめですす。




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