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変わるリーダーシップ、変わる組織ー未来への挑戦

 川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「企業と心理学 トピックス #4 変わるリーダーシップ」というテーマを取り上げます。

 2023年のプロ野球における阪神(岡田監督)が大差をつけて優勝したことを例に取り上げています(ちなみに、川上教授は阪神タイガースの大ファンでもあります。)。これは、変化への適応と、状況に応じた対応策の設定・周知、そしてそれを実践へと移す過程において、リーダーシップの形が大きく関係していると見ています。ここから学べるリーダーシップの変化とは何か、その意義とはどのようなものか、川上教授のガイドをもとに考えてみたいと思います。

変わるリーダーシップの本質

 リーダーシップの変化を理解する上で、以下のポイントは特に注目に値します。

  • 対応策の設定と周知
     効果的なリーダーシップは、変化する状況の中で迅速かつ柔軟に対応策を設定し、それをチームメンバーに周知することができる能力を要します。状況変化を的確に捉え、問題の本質を見抜く力が求められます。さらに、適切なタイミングで、適切な内容を、適切な方法でチームメンバーに伝達することが重要になります。情報の共有と意思疎通が円滑に行われることで、チーム全体が変化に素早く適応できるようになります。

  • 自主性の促進
     
    メンバーが自分で理解し、納得して取り組めるような環境を創出することで、より高いエンゲージメントと成果を引き出します。単に指示を出すのではなく、メンバーが主体的に考え、判断できるよう、リーダーはメンバーの自主性を尊重し、サポートする姿勢が求められます。自主性が高まれば、創造性が刺激され、イノベーションにもつながります。

  • リーダーシップの多様化
     
    強制型からメンバーシップ主導型、D&I型(多様性と包摂)リーダーシップまで、多様なリーダーシップのスタイルが求められるようになっています。状況や組織文化、メンバーの特性に応じて、最適なリーダーシップスタイルを選択し、柔軟に切り替えることができる力が重要です。リーダーシップの多様化は、組織の適応力と革新力を高めます。  

リーダーシップスタイルの進化

 リーダーシップのスタイルは時代とともに進化を遂げてきました。

  • 強制型リーダーシップ
     
    従来のヒエラルキー組織では、リーダーが直接的に指示や命令を下すスタイルが主流でした。しかし、このスタイルは柔軟性に乏しく、変化の激しい現代のビジネス環境には適していないとされています。メンバーの創造性やモチベーションを阻害する可能性があります。

  • 満足提供型リーダーシップ
     
    メンバーの満足や幸福を重視するアプローチは、一定の成果を上げてきました。メンバーのニーズに配慮し、適切な報酬や福利厚生を提供することで、モチベーションの向上に寄与しました。しかし、メンバーの自主性を十分に促進するには限界がありました。

  • ビジョン・目標型リーダーシップ
     組織の明確なビジョンと目標を共有することで、チームのエンゲージメントを高め、進むべき方向性を示します。戦略策定力と、ビジョンを具体化する実行力が重要になります。メンバー一人ひとりがビジョンを理解し、目標達成に向けて主体的に行動することが求められます。

  • 人格型リーダーシップ
     個々のリーダーの人格や価値観がチームに大きな影響を与えるスタイルです。リーダーの人間性や誠実さ、倫理観が信頼と尊敬の源泉となり、それがメンバーのモチベーションやパフォーマンスに反映されます。リーダーの人格形成はもちろん、メンバーとの信頼関係の構築が極めて重要になります。

  • D&I型リーダーシップ
     
    多様性(Diversity)と包摂(Inclusion)を重視するリーダーシップです。チームメンバーの多様な背景(性別、人種、国籍、経験など)を認め、それぞれの違いを尊重し、活用することを目指します。異なる視点からの意見を取り入れ、包摂的な環境を整備することで、チームのパフォーマンスと創造性を最大化できます。

  • メンバーシップ主導型リーダーシップ
    メンバーが主体となって活動するスタイルで、自主性と責任感を最大限に促進します。リーダーはメンバーのファシリテーターとしての役割を果たし、支援者となります。メンバー間の協調性や相互の信頼関係が極めて重要になり、リーダーはそれらを築く土台を提供する必要があります。

これからのリーダーシップ

 これからのリーダーシップは、変化に対する高い適応能力、メンバーの自主性を促進する環境の創出、そして多様性の尊重と活用によって、チーム全体の能力を最大化する方向に進化しています。単一のリーダーシップスタイルにとらわれず、リーダーとマネージャーの役割が柔軟に入れ替わることで、さまざまな視点からの意思決定が可能となり、より創造的で革新的な解決策が生まれやすくなります。

 評価に基づく動機付けではなく、メンバー自身が納得し、関与することで自発的に動くような状況をつくることが、これからのリーダーシップには求められています。このようなアプローチは、個々のメンバーの成長だけでなく、組織全体の柔軟性と革新性を高めることに寄与するでしょう。

 また、リーダーシップの発揮の場も拡大しています。部署やプロジェクトを越えた水平的なリーダーシップ、ボトムアップのリーダーシップなど、リーダーシップは多様な形で発揮されるようになってきました。リーダーシップはもはや特権的な地位にあるリーダーだけが発揮するものではなく、チームメンバー一人ひとりから発揮される可能性があります。そうした分散型のリーダーシップこそが、最大限の能力を引き出すと考えられています。

持続可能な成長への道

 持続可能な成長を遂げるためには、組織内でのリーダーシップの役割が非常に重要です。これからのリーダーは、ただ指示を出すだけでなく、チームメンバーの自主性を促し、多様性を尊重し、包摂的な環境を整えることが求められます。リーダーシップのスタイルが進化することで、組織はより柔軟に、迅速に変化する環境に適応し、イノベーションを生み出す力を強化できます。

 リーダーは変化のけん引役として、新しい価値観や行動様式を組織に浸透させる役割を担います。環境変化を機会ととらえ、失敗を恐れずにチャレンジを促し、新しい取り組みを後押しすることが重要です。さらに、リーダー自身が変化に対する開放的な姿勢を示し、学習を続けることで、メンバーに模範となり、組織全体の変革を加速することができます。

チームメンバーのエンゲージメント

 リーダーシップの変化は、チームメンバーのエンゲージメント向上にも直結します。メンバーが自分の仕事に価値を見出し、自主的に貢献しようとする環境をリーダーが提供することで、個々のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の成果も向上します。また、エンゲージメントの高い組織は、従業員の満足度が高く、離職率の低下にもつながります。

 エンゲージメントを高めるには、メンバーに権限を与え、自律的な判断を促すことが重要です。リーダーはメンバーの成長を支援し、フィードバックを惜しまず提供することで、スキルと自信を高めることができます。さらに、メンバーの意見を尊重し、積極的に関与させることで、所属意識と責任感を育むことができるでしょう。

多様性と包摂の重要性

 D&I(多様性と包摂)型リーダーシップの台頭は、組織文化にも大きな影響を与えます。多様なバックグラウンドを持つメンバーが互いの違いを尊重し合い、活用することで、新たなアイデアや解決策が生まれやすくなります。多様性を重視する文化は、組織がより幅広い顧客層に対応し、グローバルな視点を持つためにも不可欠です。

 リーダーは多様性を積極的に受け入れ、メンバー一人ひとりを公平に評価し、発言の機会を等しく与える必要があります。さらに、メンバーの文化的な違いを理解し、異なる価値観を尊重する姿勢が求められます。このような包摂的な組織風土を醸成することで、創造性が最大限に発揮され、イノベーションが促進されるのです。

まとめ

 変わるリーダーシップは、組織が直面する挑戦に対して柔軟かつ効果的に対応するための鍵を握っています。リーダーシップの進化によって、チームメンバーの自主性を促進し、多様性を尊重し、持続可能な成長を実現するための基盤が築かれます。これからのリーダーには、変化を恐れず、新しいリーダーシップスタイルを積極的に取り入れ、組織全体を未来へと導く柔軟性と勇気が求められています。このようなリーダーシップの下で、組織は変化をチャンスと捉え、新たな価値を創造し続けることができるでしょう。

 組織には、多様なリーダーシップを発揮できる人材を育成し、活用する環境を整備することが求められます。人事部門は、リーダーシップ開発プログラムの提供や、リーダー候補の特定と育成、さらにはリーダーシップに関する評価制度の構築など、様々な施策を講じる必要があります。優れたリーダーシップを備えた人材を確保し、活かすことが、組織の成長と持続可能性を左右する重要な鍵となるからです。

 リーダーシップの進化は、組織変革の原動力となります。人事部門を含む組織全体で、変わるリーダーシップの重要性を理解し、新しいリーダーシップスタイルの促進に取り組むことが、持続的な成功につながるでしょう。


多様なリーダーシップスタイルに焦点を当てたワークショップに参加しているビジネスプロフェッショナルのグループを描いています。参加者は、年齢、性別、民族の多様性を背景に持ち、活発に意見を交わしたり、デジタルボードでアイデアを共有したりしています。部屋全体に溢れる自然光が開放感と可能性を象徴し、参加者たちの間のエンゲージメント、革新性、お互いのアイデアへの尊重が感じられる、暖かくポジティブな雰囲気を醸し出しています。画風は柔らかく、歓迎するような雰囲気で、環境の温かみとポジティブなエネルギーを細部まで丁寧に伝えています。

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