【書籍】詩と歌に託された生き方の教訓：沢知恵氏と塔和子氏の創作の旅
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』（致知出版社、2022年）のp163「5月10日：言葉を生み出すことは苦しいことなのよ
（沢知恵 歌手）」を取り上げたいと思います。
沢氏は、大島青松園（ハンセン病療養所）で過ごした塔和子という詩人との交流について綴っています。沢氏は塔氏との出会いを通して、詩や芸術について深く学び、創作の苦しみや喜びを共有しました。2001年には、療養所で初めてのコンサートを開き、外部の人々にその場所を知ってもらう機会を作りました。塔氏の詩に触れ、再び読み返したとき、著者は彼女の詩が伝えようとするメッセージとその切なさを深く感じ取りました。塔氏の高齢と健康状態を考慮し、著者は彼女の詩を歌う決意を固めました。
塔氏さんの詩集を読み始めた著者は、その詩が彼女の命そのものであることを実感し、塔氏の詩を歌うことは、彼女を生きることだと感じました。塔氏の全集から約千編の詩を読み、その中から八つを選び、音楽をつけました。特に「胸の泉に」という詩は、人との関わりを通じて生まれる絆の重要性を訴えています。塔氏はハンセン病のために隔離された経験があり、その苦しみを詩に託していました。
沢氏は塔氏から「言葉を生み出すことは苦しいこと」という言葉を何度も聞き、彼女の詩から真実を生きる強さと独立した女性としてのあり方を学びました。このエッセイは、創作の苦悩と喜び、人との深い繋がりの価値、そして真実と正直さを貫く生き方の重要性を伝えています。
塔さんは私に「言葉を生み出すことは苦しいことなのよ」と何度かおっしゃったことがあります。自身の弱さや情けなさを嘆いている詩もたくさんありますが、見栄や虚飾を排し、自分にも他人にも神様にも嘘をつかず、真っ直ぐに、正直に生きていく。悩みも苦しみも弱さもすべて自分で引き受けて生きていく本当に自立した女性のあり方を、私は塔さんから教えていただきました。
人事としての考える観点
沢氏が大島青松園で塔氏との出会いを語る話は、深い人間関係の構築と、創作活動の本質に関する重要な洞察を提供しています。このエピソードは、人事管理の視点から見ても、多くの貴重な教訓と示唆を提供しています。
人事と創作活動の共通点
創作活動と人事管理は、一見すると全く異なる分野のように思えます。一方で、両者は根本的には「人」という要素で深く結びついています。創作活動における「言葉を生み出す苦しみ」と人事における「人材の発掘、育成、マネジメントの複雑さ」は、いずれも人の内面と外部環境との関わりにおける深い理解と共感を必要とします。
人間関係の構築
沢氏と塔氏との関係は、人事における「信頼関係の構築」と「コミュニケーションの重要性」を象徴しています。人事の仕事では、従業員との信頼関係を築き、それぞれの個性や能力を理解し、適切にサポートすることが求められます。沢氏が塔氏から受けた励ましや、創作活動における喜びと苦しみについての共有は、人事管理におけるメンタリングやキャリアサポートの良い例です。
創作活動の苦しみと人事の課題
塔氏が言及した「言葉を生み出す苦しみ」は、人事におけるさまざまな課題（例えば、適切な人材を見つけ、育成し、留まらせること）に直面する際の苦悩にも通じます。両者とも、創造性、忍耐力、そして個々のポテンシャルを最大限に引き出すための深い理解が必要です。
自己実現への努力
沢氏が塔氏の詩を通じて自己実現を目指す過程は、人事管理における「人材開発」と「キャリア構築のサポート」に相当します。個人が自分自身を表現し、成長し、自己実現を達成する過程は、組織内での人材育成やキャリアパスの設計においても重要です。人事は、従業員が自らの能力を最大限に発揮し、満足感を得られるように支援する役割を担います。
まとめ
沢氏と塔氏の交流から学ぶことは、人事の実務においても大いに役立ちます。人間関係の構築、コミュニケーションの深化、個々のポテンシャルの発掘と育成、そして自己実現の支援は、人事が目指すべき核心的価値です。創作活動の苦悩と喜びは、人事管理の複雑さとやりがいを反映しており、これらの活動を通じて人の内面と向き合うことの重要性を再認識させてくれます。
二人の女性、歌手と詩人がレプラ療養所の穏やかで緑豊かな庭で深い会話を交わしています。彼女たちの創造性と魂の美しさを象徴する花々に囲まれながら、互いに影響を与え合っている様子が描かれています。この場面は、成長と癒しを象徴する緑豊かな庭園の中で、温かさ、理解、そして相互の尊敬を通じた感情的な交流を表現しています。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。
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