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評価者間の「目線合わせ」の重要性ー人事制度における公正とイノベーションの促進

 人事制度の運用で「評価者間の目線合わせ重要である」ということがよくいわれます。「評価者間の目線合わせ」とは、人事評価を行う際に、評価者同士の評価基準や見解を統一することを指します。その効果、注意点について考えてみたいと思います。


公平性の確保と組織内の一貫性の強化

 その主な効果は、公平性の確保と組織内の一貫性の強化です。公平性が確保されることで、従業員は自身が公正に評価されていると感じ、モチベーションの向上につながります。また、一貫した評価基準によって、組織全体で共通の目標や価値観を持ちやすくなり、組織の効率性と効果性が高まります。

目線合わせの注意点

 一方で、評価者間の目線合わせにはいくつかの注意点があります。最も大きな懸念は、評価基準の硬直化です。過度に統一された評価基準は、個々の従業員の特性や状況の変化に柔軟に対応できなくなる恐れがあります。また、評価者の主観を排除し過ぎると、従業員の独自性や創造性が見過ごされる可能性があります。これは特に、イノベーションを促進するような環境を作る上での障害となり得ます。

評価制度の硬直化

 評価制度の硬直化は、確かに人事制度運用において様々な困難を引き起こす可能性があります。硬直化した評価制度の主な問題点を考えてみます。

・従業員の多様性への対応不足
 硬直化した評価制度は、従業員個々の能力、業績、成長の特性を適切に捉えられない場合があります。これにより、個人のモチベーションや能力開発が妨げられる可能性があります。

・イノベーションの抑制
 新しいアイデアや方法論が評価基準に適合しない場合、従業員は創造性やイノベーションを発揮することを躊躇するかもしれません。これは組織全体の革新的な成長を阻害する可能性があります。

・組織の柔軟性と適応性の欠如
 変化する市場や業界の状況に対して、硬直化した評価制度は組織の迅速な対応を難しくする可能性があります。これにより、組織は競争上の優位性を損なう恐れがあります。

・従業員の不満と離職率の増加
 公平性や個々の実績への適切な評価がなされない場合、従業員の不満が増大し、結果的に離職率が高まる可能性があります。

・コミュニケーションの障壁
 硬直化した評価制度は、上司と部下間のオープンで健全なコミュニケーションを阻害する可能性があります。これにより、フィードバックや改善の機会が失われます。

コミュニケーション不足による形式化

 評価者間の目線合わせの過程で、コミュニケーションの不足があると、目線合わせが形式的なものになりがちです。評価者の訓練と継続的な対話は、目線合わせの効果を最大化するために不可欠です。従業員の特性や状況に応じた柔軟な評価の必要性を認識し、評価基準を定期的に見直し、更新することが重要です。

被評価者の立場ではどうか

 被評価者の立場では、評価者間の目線合わせがあると、従業員としては安心できるのではないでしょうか。公平な評価を受けられると感じると、モチベーションも上がってくるでしょう。ただ、全員が同じ基準で評価されると、自分の個性や特技が評価されにくくなるのではないかという心配もあるでしょう。

まとめ

 評価者間の目線合わせは、公平性と一貫性を確保するために有効ですが、その運用には慎重なバランスが求められます。評価基準の適切な柔軟性と、個々の従業員の特性や状況への適応を念頭に置きながら、評価制度を管理することが、組織の長期的な成功に寄与するでしょう。



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