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【書籍】流れる星の奇跡ー藤原咲子氏の物語

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp157「5月4日:咲子はまだ生きていた(藤原咲子 高校教師・エッセイスト)」を取り上げたいと思います。

 藤原咲子氏の物語は、苦難と誤解を乗り越えた母娘の関係を描いています。咲子は、病との戦いを乗り越えて作家となった母の厳しい育て方に苦しみながらも、自分が母に愛されていないと感じていました。特に、母が書いた『流れる星は生きている』の中で自分について触れられている部分を読んだ時、咲子は母からの愛を疑い、長年にわたる反抗の原因となりました。しかし、50年後、母からの手紙を発見したことで、母の真の感情を理解し、誤解が解けました。母は実際には、咲子の生存を奇跡と捉え、深い愛情を持っていたことが明らかになり、二人の関係が修復され始めました。この物語は、誤解がいかに人間関係を歪めることができるか、そして真実が明らかになった時には、愛と理解が再び芽生える可能性があることを示しています。

「咲子が生きていることが、必ずしも幸福とは限らない」「咲子はまだ生きていた」ああ、お母さんはやっぱり私を愛していなかった......。
(中略)
三年前の平成十五年、私は整理をしていた書庫から偶然にも 『流れる…………』の初版本を見つけました。約五十年ぶりに茶色の木皮の紋様のカバーを開くと、そこには「咲子へ」という見慣れた母の字体がありました。「お前はほんとうに赤ちゃんでした。早く大きくなってこの本を読んで頂戴、ほんとうによく大きくなってくれました。母」

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p157より引用


<人事としてどう考えるか>

 この物語は、藤原咲子氏が経験した苦難と、彼女とその家族が直面した深い感情的な葛藤を描いています。咲子氏の母親は、極めて困難な状況の中で子供たちを生き抜かせ、後に成功した作家として社会から認知されます。しかし、その成功の裏で、家庭内では深い溝が存在していたわけです。咲子氏が抱える劣等感、孤独感、そして母親への不信感は、彼女の成長と心の葛藤を通じて描かれます。

 咲子氏が母親の本『流れる星は生きている』を読むことによって、母親の真の感情と自身への愛を理解する過程です。一見、自分への愛が欠如していると誤解していた文言が、実は母親の深い愛情と、咲子氏が生き延びたことへの感謝の表れだったことを知るシーンは、この物語のクライマックスになります。

 ここから学べるのは、家族間の誤解やコミュニケーションの不足が、どれだけ深い心の傷を残すかということが一つです。また、人間関係では、表面的な言葉や行動だけでなく、その背後にある意図や感情を理解しようとする努力が必要であることを示しています。

 人事の立場から見ると、この物語は職場での人間関係やコミュニケーションの重要性を象徴しています。職場でも家庭と同様に、誤解や不信感がチームワークの妨げとなり、組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがあります。従業員一人ひとりの背景や感情を理解し、適切なコミュニケーションを取ることが、組織内の信頼関係を築き、エンゲージメントを高める鍵となります。

 また、この物語は変化と成長の物語でもあります。咲子氏が自分自身と向き合い、母親の真意を理解する過程は、個人が過去の苦痛や誤解から学び、成長する過程を象徴しています。職場での人材開発やマネジメントにおいても、従業員が自己認識を深め、過去の経験から学び取ることを支援することは、彼らのパフォーマンス向上とキャリアの成長に不可欠です。

 組織内での誤解や不信感を解消し、個々の従業員が持つ潜在能力や価値を最大限に引き出すためには、咲子氏と母の物語から学んだ教訓を活かすことができます。オープンで正直なコミュニケーション、相互理解と尊重、そして個人の成長と発展を支援する文化の醸成が、そのための重要なステップといえるでしょう。

藤原咲子氏と彼女の母親との間の誤解と疎遠を乗り越えた感動的な和解の瞬間を捉えています。伝統的な日本の居間での設定は、彼女たちの間の新たに見つかった理解と愛を象徴しており、部屋の暖かさと柔らかい光がその雰囲気を一層引き立てています。母親の真の感情を明かす古い手紙を発見した咲子と、穏やかな表情で咲子氏が手紙を読むのを見守る母親の姿が描かれています。母親の作家としてのキャリアや共有された歴史を反映する繊細な要素が部屋に配され、この和解の瞬間をソフトで優しく表現しています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。




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