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若かりし頃には、本質がわからなかった「謙虚になる」ということについて。

謙虚になるというのは、本当に難しい。

前職で花形と言われたIT戦略の仕事に携わり、28歳で大きな仕事を任されてとても嬉しかった。馬車馬のように働き、成果のために詰める仕事をする一方で、チームを盛り上げるために、全ての手柄を仲間のおかげと話すようにしてきた。多くの仲間や同僚の協力を得ることができ、認められる機会もあって34歳で役職にも恵まれた。

その時の自分はたいそう自信もあったし、負け知らずで、自分の活躍を誇らしく思っていた。「人を立て、謙虚な姿勢をとるべし」とはよく言ったものの、当時も私は、それをただ表面的に準えて再現していただけに過ぎないのではないかと今は思う。

縁あって声をかけて頂いた企業に、37歳でスタートアップ企業にCTOとして迎えられた。この企業には、業界でも一目を置かれる有名な方々が関与しており、将来へに期待から大変魅力的だった。しかし、6ヶ月で稚拙で無能な内紛で倒産するという憂き目にあり、古巣への退路は切っていたので、苦渋の決断から自身の会社、オリエントを創業することになった。

それから5年、初めての営業活動、納品、コンサルティング提供、金融やVCとの面談にも汗を書きながら、出張の合間に一緒に旅をして未来を語る創業時からの相棒と二人三脚で頑張った。コストを抑えるためには、総務・法務・経理は全て自分一人でやってきた。やることの多さと時間に苛まれながらも、なんとか毎年黒字で過ごし、大手のお客様よりご愛好頂ける会社になることができた。

6年目の今、それら一部を手放し、仲間に少しづつ任せ始めている。売り手市場の高度技術者調達とサイバーセキュリティというまた難しい分野でチャレンジがある中で、必死にもがきながら進んできた。中には思うようにもいかないこともある。初めに思い描いた程の成長率で会社を伸ばせないのは、経営者としての自身の能力の表れでしかないと反省することも然り。市場や顧客などの外的要因のせいにするのではなく、努めて自分と向き合い、背を向けたい事実にもしっかりと見つめ努力をすることを心がけている。そして、44歳にして自分ひとりの小ささ、力のなさを改めて認識するわけである。

社長は、このようなことに気づいても、会社を背負っており雇用を守ることが大切であり、社長自信が悩み孤独を感じることがっても、歯を食いしばり顔を上げてしっかりと足を前に踏み出し必要がある。34歳の時にうけた「1日システム止めると200億円飛びます。」と某ベンダーに言われていたレガシーシステム(10年未達成)を大刷新した際のプレッシャーから比べても、今日の選択の失敗が会社だけでなく社員や家族の暮らしにも大きく影を落としかねないプレッシャーがあるという意味では、それを遥かに上まる。

そんな時に、自らの非力さを自覚しつつも、周りをよく見渡せば、幸いにも自らより専門的能力の高い仲間に囲まれているわけである。これからも数えきれない困難に立ち向かい乗り越えていくには、彼らの協力を無くしては成し得ないと根底で理解するのだ。ここまで思考を煮詰めて初めて、協力者に対して、これまで以上に深く、心からの感謝と敬意を表することができる。この境地に至るまで随分時間がかかったのだが、きっと謙虚な気持ちというのは、こういうことなのだろうと感じるわけである。

若い時は、相手を立て、そのように振る舞うことで、最大値で協力を得るということに過ぎなかった「謙虚」の模倣が、ここに来てようやく素直な気持ちで敬意を持って人と対峙できるようになったと思う。戦後、事業を裸一貫で事業を大きくした著名な起業家の哲学的なメッセージのなかにもある謙虚な姿勢、というのはこういうことなのかと、今は感じる。

冬から春へ移り変わるこの季節に、幸いにもまた一歩、成長できたのかなと感じられた。

明日からはまた、事業の成功のために、一歩前でも進むことが大切だ。
十分な休息を取り、朝起きるとともに働きたいと思う健康な心身を維持することもとても大切なピースである。おやすみ

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