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メタの世界では「服」は不要になるのか?

INSTAGRAMはバーチャル雑誌


「メタバースの時代が来るよ!」「web3.0だよ!」
なんて耳にするようになってしばらく経ちますが、
 
案外気づいていないだけで、実は私たちの身の回りにはどんどんメタバースや仮想現実が広がっています。
 
例えばインスタ。
 
あなたが今日もスライドアップしてチェックしているその画像もすべて仮想現実のひとつ。
 
アバターとはデジタル世界において、自分自身を代表してくれるキャラクターなのですが、インスタに登場するインフルエンサーこそアバターそのものです。
 
私の知る限り、同一人物がいるはずなのに、インスタで見る美人のインフルエンサーを現実世界で探すことはかなり困難です(笑)
 


インフルエンサーの写真は絶妙にフィルターがかけられ、
顔色も良くなり、
少し小顔になり、
出るとこ出て、へこむとこへこんで、
手足もちょっと伸びたりして、
写真で見るとそれはそうは、もう美しい人になります。
 


これは人に限った話でなくて、レストランの料理や温泉宿だって同じ話です。
 
インスタで見た料理に惹かれて、そのレストランで同じ料理を注文したはずなのに、あれ・・・なんかしょぼく見える・・。
 
まるでジョナサンのメニューから、現物が来たときの何もかもが小さくなってる感・・。
 
温泉宿でも写真で見たときはとても広くてきれいに
見えていたのに、実際は天井低いし電気も薄暗いし。
 
「露天風呂ちっさ!」
ってなったことも往々にしてあります。

現代のアフターフィルターの世界では、商業写真というのは99%現実世界よりも魅力的に見えるわけで、そういった意味では、インスタそのものは仮想現実を楽しむためのバーチャル雑誌のなんだと思います。


現実世界よりバーチャル世界で生きてる子どもたち

この視点で考えると、私たちはすでに毎日触っているスマホを通してすでにどっぷりと仮想現実に浸ってるわけなのです。
 
小学6年生の私の息子は、学校から帰ってくるとすぐにラップトップを開けて、Minecraft(マインクラフト)を始めます。
 
マイクラやりながら、もうひとつの画面でYoutubeを開き、ときに友達と通信しながらマイクラの誰かが作ったワールドをみんなでプレイしています。
 

私たちが小さな頃は、学校から帰ってきたら友達の家にいってマンガ読んだり対戦ゲームしたりして、天気が良ければ外でカンケリしたりしていました。

参照元 http://www.alicekan.com/books/post_157.html


 たった30年の間に、子どもたちの遊び方はリアルよりも、バーチャルにいる時間が長くなりました。
 
ちなみに、小6の息子はゲームの世界で大人になりすまして、他の大人とチャットしながら自分のコレクションしているアイテムを交換しています。
 
稟議的に大人の振りしてるっていうのは危ういところありますが、いつの間にか学校以外の場所で、全く知らない誰かと普通にコミュニケーションして、欲しい物を得ているのです。
 
すでに現実の自分とは全く世界のアバターとして
活動していることに感心しました。
 
バーチャルにどっぷりというのは、なにも子どもたちに限った話ではなく、電車に乗って大人が何をしているかを見渡してみると、大方スマホを見ています。

参照元 https://media.lifenet-seimei.co.jp/2019/02/01/15396/

ゲーム、インスタ、ラインがトップ3だと思いますが、体は電車の中だけど、頭の中はすでにバーチャルの世界です。(ラインはバーチャルじゃないけど) スマホの普及とSNSの進化によって、この10年で初対面がリアルではなく、バーチャルが先、というケースも増えてきました。 

インスタやTiktokなどまさにそれです。

Zoom会議が当たり前になってから、一度も会わずしてプロジェクトを終了ことも多くなりました。 

そんな現代において、いわゆる寒暖を凌ぐためではなく、誰かとコミュニケーションを取るための服を作り続ける意味とはなんだろうと考えます。 

この20年ファッションに起こった変化


この20年、特に世界的にもコロナが長引きまくっている日本では、ファッションのリアルクローズは当時と比べて大きく価値がかわりました。
 
ざっくり書くと、
 
・持ち続けるからシェアする
ブランド品を始め、中価格商品(ジャケット3万以上)でも、新品で購入してもらうためには、中古市場で高額で取引されなければならなくなりました。リセールバリューという言葉ありきでのショッピングが主流になりました。
 

参照元 メルカリ


・投資商材になったスニーカー
Stock Xやスニダン等、転売アプリが使いやすくなったことでスニーカーなどの保管しやすく劣化しづらいコレクション商品はアートなどと同類の投資商材の側面も持つようになりました。

https://stockx.com/

・ロゴがマストのハイブランド
 
映えるためには、その服にロゴが入っているか、ブランドを認識するアイコニックな商品でなければなりません。
空港に行くと全身ブランド物とわかるものを来ているアジア人がこの10年でめちゃ増えました。
反面、アイコニックなデザインのおかげで偽物も作りやすくなったことでしょう。
最近中国の広州に行けていませんが、今や広州コレクションはロゴアイテムですごいことになってそうです。
 
・とにかくECでわかりやすく
FarfetchやSSENCEなどのメゾンを数多く取り扱うファッションサイトでもとにかくハイブランドの「ロゴもの」が数多く見られるようになりました。

TEEにもロゴ、スエットにもロゴ、トートもロゴ。
ECの小さなサムネ画像で見たときでも、ひと目でどこのブランドなのかわかることがポイントです。

https://www.ssense.com/ja-jp

インナーやシンプルなボトムスなどベーシックなアイテムは、UNIQLOやZARAのようなファストブランドで、見えるところはメゾンのロゴで飾られるようになりました。
 
私が19歳、月給手取り14万円しかなく、そのうち13万円を服に費やしていた時代。
じつはこの白シャツは〇〇なんだよね、気が付かれたときにわかってこそおしゃれ。
 
なんて言っていたあの頃ははるか遠くに感じます。
 
ということで今日はここからが本題です。
(え、まだ本題じゃなかったの・・笑)
 

メタの世界では「服」は不要になるのか?


 メタバースの世界では今後ファッションはどうなっていくのか?
メタの世界では「服」は不要になるのか?
 
そもそもバーチャルなんだし、物質になってる
服って要らなくない?
 
なんて疑問がここ何年も考えていることなのだが、
ちょっと分解して考えてみましょうね。
 
まずは素材。
メタの世界では素材はどうなるのか。
 
そもそもコットンだろうが、ウールだろうが、ポリだろうが、金属だろうがメタの世界では素材は関係ない。
 
ある程度テクスチャの違いはあろうが、着心地がないのだから素材感という概念は、見た目の光沢やシワ感だけの話になります。
 
てことは、重要なのは
シルエット、
カラー、
デザイン
ということになってきます。
 
メタの世界でチクチクデザインしていてもなんだかファッションとして面白くもないし、ただのゲームのコスチュームチェンジ程度でしかなくなると思います。。
 
ここでいう面白くない、と言っているのは服そのものの話だけど、その服がでてくる前後やその背景にはなにかしらのコンテクストがあります。
 
このコンテクストこそ、メタの世界でファッションが必要になる重要なポイントになると思います。
 
前後の文脈や背景によって、価値が変わります。
 
例えば、なんでもない白のシャツとブラックのデニムがメタバース上で購入できるとして、そんなものは何の価値もなく感じます。
 
しかし、このシャツとブラックデニムのアイテムは
エディ・スリマンがデジタルで生涯に一着だけ
デザインしたものだとしましょう。
 
さらにそこにNFTをつけて、ブロックチェーンで
本物認証までしていたら、普通に1万ドル出す人も
いると思います。
 
これはファッションと言うより、付加価値が際立っていくアートピースとしての側面が大きくなっているからです。

二極化するファッションテック

ファッションテックの世界はこれから
2つに分かれていくでしょう。
 
「アートピース」と「便利の追求」
 
「アートピース」とは上記のとおり、
付加価値の高め方がポイントになってきます。
 
世界初、
限定、
誰と誰が〇〇した、
生誕〇〇記念、
など
 
機能性よりも希少性が価値を高め、NFTありきで
作品が発表されていくことが特徴になります。
 
最近だと村上隆さんがNYのギャラリーで発表した
作品は、リアルな絵と同じモチーフをバーチャルでも製作し、そこにNFTをつけて販売しました。
 
これのうまいところは、片方買ったら、もう片方も
欲しくなるコレクターの気持ちをがっちり掴んで
いるところです。
 
リアルな絵だけでも、バーチャルな絵だけでも
できなかった表現をしたところに面白さがあったと
思います。
 
またその反対で、
「アートピース」ではないファッションテックの世界では
「便利の追求」が当たり前になるでしょう。
 
「便利の追求」とはなーに?
 
それはこれまで現実世界では
 
・お金がかかる
・時間がかかる
・技術的に難しい
 
とされていた多くの課題が急速なIT技術の発展で、
安く、早く、上手に、誰にでも解決できてしまうことを
意味しています。
 
例えば、これまで試着といえば店舗に行って、販売員さんに
接客を受けておすすめに着替えたり、自分で鏡に合わせてきました。
 
それが、ここ数年の進化で、VIRTUSIZEのようにバーチャルフィッティング的なものもでき、自分の体型や持っている服の寸法を入れると
ある程度マッチしたサイズがリコメンドされるようになりました。

https://www.virtusize.jp/


 
ただ、この自分の体型や持っている服のサイズを測るという行為がとても面倒くさい。
 
おそらく、アパレル業界の人じゃなければ、きっと
「パンツのワタリを測ってください」と言っても、
 
「え、ワタリ、、テツヤですか?」
どこが正確な場所なのかわからないはずです。
 
「ウエスト測ってください」と言われても、カーブしてるしどうやって測んねん!て感じだと思います。
 
それを解決しようとしたのがzozoスーツ。
一度全身タイツを着る必要はあるけど、一度着て撮影したら自分の体型に完璧なサイズをおすすめしてくれるというスグレモノ。
 
の、はずだった。
 
しかし、zozoスーツは計測する際に、カメラの角度や距離の調整が難しかったり、着替えるのが手間だったりして道半ばに終わってしまった。

アイディアと実行力が素晴らしかったけど

てか、やっぱり一度全身タイツのモジモジ君に
なるのはやっぱり面倒ということなのかも。
 
そこで近年では、写真を撮って、それをアバターとして生成するアプリ「1 Mesure」というAPPも伊藤忠が頑張っています。
 
これらも撮影するときに全身タイツ姿で白バックで撮影できれば正確なアバターが作れるけど、アウター着たまま撮影するとミシュランくんみたいなアバターになることもまれにありました。
 
しかし先日、千駄ヶ谷のテック会社にお邪魔させてもらったのですが、そんなアバターの精度は恐ろしくレベルが上っていました。
 
これはアプリ撮影でもなく、zozoスーツ的な着るタイプでもなく、全方向にセットしたカメラの真ん中に立つだけで、正確なアバターを作ろうとするもので。
 
値段的にはまだ安くないけど、きっと「リアルアバター」作りの進化に大きく貢献してくる予感はありました。
(リアルアバターって書いてて変な言葉だな)

先日訪問した会社ではありませんが、技術的にはこのような感じ。


こんな装置の中に入って
こんなにリアルなアバターがすぐに生成

で、便利を追求するために人類は自分そっくりの体型のアバターを手に入れることに成功したわけなのですが、実はここに落とし穴があるという話も聞きました。
 
それは何かというと・・・。
私もそうですが、きっとあなたも自分のリアルな後ろ姿を見たことはないはずです。
 
リアルアバターになると、もちろんそれは可能になるわけで、他人から見たと同じあなたを自分で見ることができます。
 
「それは便利なことですよね?問題でも?」
 
となると思うのですが、実際自分の後ろ姿やありのままの姿を
アバターを通して見ることができたとしましょう。
 
人間の脳は見たいものを見るように作られているし、脳科学的にいうと、目に映った現実を見ているようだけど、実は見ているものは脳内で記憶と希望を混ぜ変換された情報を見ています。
 
なので、リアルな自分の姿を模したアバターを見ることは、はじめて客観的に真の自分の姿を見ることになります。
 
初めて自分の声を録音したものを聞いたときの違和感や、初めて自分が笑っているときの映像を見たときのオレじゃない感はあなたにもあったのではないでしょうか。

ファッションという「ファンタジー」がない世界

洋服屋さんの鏡は「魔法の鏡」。
 
注※「魔法の鏡」とはアパレルの鏡は少し細く見えるように
なっていたり、脚長効果が出るように斜めに角度がついて置かれていることも多い
 
あれ、、俺ってこんなに足短いんだ・・。
私のお尻大きくない!?
 
ってことで、アバターを通し、現実を文字通り直視
することになるのです。
 
改めて自分の姿を見えてしまったことで、
自分が欲しかったはずの服も、
 
「似合わないな・・」
「今度痩せてからにしょうかしら・・」
 
なんてことになることもあるとのことでした。
 
そこには、これまであなたの隣で勇気づけておすすめしてくれた、あの笑顔の店員さんもいません。

あなたがこの服が似合わなそう、と思ったらもうどうやってもその服はあなたにとって似合わないものになるのです。
 
おー!人類は便利を追求しようとするあまりに
ファッションが持っていた「ファンタジー」を
取り払うことになってしまうのです。


アバターがリアルになればなるほど、試着からのイメージ合わせの精度が上がり、着用後の姿の想起が容易になります。

サンプル制作費ゼロの世界 


試着だけでなく、モノづくりの現場にも大きな変革が起きます。
 
これまでサンプルひとつ作るにしても、生地選び、パターン、仮縫い、修正、サンプルメイクの概念が大きく変わります。
 
これまで展示会場で見ていたサンプルもいらなくなり、3Dの画像だけでも十分生地感も質感もわかり。

お客様が直接すべてを選んで発注しても思い通りの
ものができるそんな時代です。
 
そこにかかっていた時間やコスト、環境への負担もすべてなくなります。

もちろん3Dの製作代はありますが、これもデザイナーや数が増えたり、技術が進化すればどこかでキャズムを超えて指数関数的飛躍でコストが落ちるはずです。
 
時間とコスト、環境の負担をすべて最小限に抑えることこそ、ファッションテックが人類にもたらす最大の恩恵だと思って進んでいた先。

それゆえに、ファッションが持つ最も大切なキラキラや憧れや、こう見えているだろうというあの心の充足感。
 
すなわち「ファンタジー」がなくなってしまうというこのパラドックス。

NIKE BY YOUのようなシステムでユーザーが服を直接作れることは、とてつもなく便利だと思うし、ワクワクする体験だとは思います。

https://www.nike.com/jp/

しかし、自分がデザイナーのようになりすべてカスタムして自分好みの服だけを着ることが、お客様の満足度、幸福感につながるのかは正直わかりません。

ZOZOTOWNが登場し、試着なくして服が売れることが当たり前の時代になってしばらく経ちますが、この先ハイブランドも、ファストファッションも、またそのどちらでもでもないブランドもどこに進むのかはとても興味深いです。

今回も私の主観がゴリゴリのコンテンツでしたが、
また面白い話をたくさん聞いてきたので、次回また書いていきますね。

それではまた次回。
 
 
この文章がためになったよと思う人は、すかさず
「スキ」しておいてくださいね。


ホンマヒデ


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