リモートワークを言い訳にしない。怪しい会社を避けるために - Alternative Work Lab Letters -

先日、このような記事が出ており、話題になっていた。


詳細は読んでいただければと思うが、要約すると
・大手求人サイトで見つけた完全在宅の求人に応募し、採用された
・しかし、その会社から2か月間給与が振り込まれなかった
・オンライン越しに人格否定のような言動を受けた
・その他の社員も給与未払いなどが発生していた

などといった内容である。

記事では「完全在宅の仕事ができることによって社員の使い捨てがしやすくなっている」と警鐘が鳴らされていた。しかし、この問題の本質は果たして「完全在宅であること」なのでろうか。本当の論点を見誤ってしまうと同じような問題が起きてしまうかもしれません。そこで今回はこの記事をもとに本当の問題点、論点を整理してみたいと思う。

問題点の1つ目。
面接時に社長が顔を出さずに、その場で内定が決まったという事実についてである。もちろん面接の場ですからオンラインだとしてもお互いに顔を出して話すというのは重要なことだ。全員がフルリモートワークで働くキャスターは日頃の社内の会議では顔出しなしで話すことを推奨しているが、面接の場では顔を出し、話をするようにしている。
ただ、それ以上に個人的に気になるのは「その場で内定が決まった」ということである。現在の日本の採用場面において、例え、書面で提示していなかったとしても面接の場で採用が決まったようなことをお伝えした場合、後から「やっぱり不採用で」という扱いをすることはほぼ不可能に近い。「私は一緒に働きたいと思いました」のような言動であっても実質「内定」と捉えられるような言葉を面接時に発することは後々トラブルに発展するリスクがあり、避けるのが一般的である。それを平然と行っている時点で、この会社がそういったリスクを理解していない、またコンプライアンスの意識が希薄である可能性が高い。

2点目。
本来、内定が提示された場合、労働条件通知書を原則書面によって通知し、改めて雇用条件などを双方で齟齬がないかなど確認する。また諸条件が問題なく入社を承諾した場合は雇用契約書を準備し、捺印をすることで雇用契約締結を行う。
しかし今回の場合、このどちらもなく口約束以外の何者でもない状態で入社が決まっている(ように見える)。もちろん口頭でのやりとりでも契約は成立するが、やはりそのような書類が準備されておらず、かつ細かい条件も提示されない会社という時点で怪しい会社である、そうでないにしてもトラブルのもとになってしまう。もし転職される際などはそういった契約書をしっかり書面で準備してもらい、不明点などを確認した上で入社されることをお勧めする。

3点目について。
この会社は健康保険証が1か月経過しても届かない、厚生年金も加入していないと記事に記載がある。本来、企業は従業員が1名以上でも雇用していれば加入義務があるが、それが行われていなかったということである。こういったことを入社前にわかるのは不可能かもしれませんが、会社として非常に杜撰であることは間違いない。
また給与未払いがこの記事に出てくる方だけではなく、その他の従業員の方にもあったことを考えると、単純に事業がうまくいっていない可能性も高いのでないか。もちろん、確信犯で給与を未払いしていた可能性もなくはないが、単純に会社の口座にお金があまりなく結果的に「払えない」状態だった可能性も存在する。

これらを総合して考えると、在宅かどうかが論点ではなく、あまりにコンプライアンス意識が低く、運営が杜撰であり、かつ事業としてもうまくいっていない会社に当たってしまったということなのだろうという仮説が立つ。
もちろん在宅だからこそ「顔出ししない」「オフィスを見られる心配がない」など、取り繕いやすい点も多少はあるかもしれない。しかしこのような会社や事例はオフィスで働いていた時代においても多く存在した事例であることもまた確かである。

今回の記事で挙げた3つの点などは在宅かどうかに関係なく、雇用関係でトラブルが起きる会社としてはよく聞く例だ。だからこそ、転職活動をする際には、しっかりと正規のプロセスを踏んでいる会社かどうかという視点で見ることも重要である。

また今回は求人サイトで募集していたということだが、このような会社であれば求人サイト運営会社に多くのクレームなどが寄せられ、掲載停止になるはずである。そうなると同じ求人サイトが使えなくなるので他の求人サイトで掲載をせざるを得ない。もし転職活動をする場合、その会社が過去あらゆる求人サイトを使いまわしている傾向があったら要注意企業かもしれない、と考え、慎重に判断することも個人に求められる知識と言えるかもしれない。



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