拝啓、博物館より｜第1信 はじめまして
拝啓 穀雨の候、石巻市博物館より初めてのお便りを差し上げます。当館は2021年11月3日、石巻市開成にあるマルホンまきあーとテラス（石巻市複合文化施設）内に開館しました。建築家の藤本壮介氏がデザインした真っ白い外観が特徴の建物です。
開館してから2年半、これまでに7回の企画展を開催してきました。しかしながら市内においてもまだまだ認知度不足を痛感しています。そこで、本年度は毎月1回、博物館から常設展示の見どころを詰め込んだお便りをお届けします。私たちからのお便りが館に興味を持ち、足を運ぶきっかけになれば幸いです。
東日本大震災を乗り越えて
博物館は、石巻市出身の彫刻家高橋英吉（1911～1942）の命日である1986年11月2日に開館した石巻文化センターの後継施設です。文化センターは、10万点を超える毛利コレクションをはじめ、石巻圏域に関わる歴史・民俗・考古・美術資料を収蔵していましたが、東日本大震災による津波で甚大な被害を受けました。
震災直後から全国の博物館・美術館関係者が石巻市に駆けつけ、被災したセンターから資料を救出する「文化財レスキュー」が行われました。1階収蔵庫に保管していた民俗・考古・美術資料が全て水損してしまいましたが、関係者の御尽力により、多くの資料を博物館へ継承することができました。とりわけ美術資料に関しては、10年以上にわたり全国の美術館・大学で修復が継続され、再び鑑賞できる姿を取り戻すことができました。文化財レスキュー関係者の熱意により、博物館資料を後世へ継承できたことに対し、改めて感謝申し上げます。
博物館はこんな場所
博物館の1階には常設展示室と企画展示室があります。年3回開催する企画展・特別展では、圏域の歴史・文化を扱った展示や他館・大学と連携した展示を実施しています。これまでに、市内の板碑や民具、日本画家平山郁夫氏や石巻市出身の写真家高砂淳二氏の作品を取り上げた企画展を開催してきました。
2階には職員が仕事をする学芸室や、市民の宝である博物館資料を保管する収蔵庫等があります。ここでは館運営に関する事務作業のほか、寄贈・寄託された資料の調査整理や企画展の準備等を進めています。また、温湿度や文化財害虫のモニタリングをしながら、資料を適切な環境で保管できるように日々管理をしています。
テーマは「大河と海」
博物館の顔といえば、常設展示室です。全体テーマは「大河と海」。石巻圏域の通史を扱う歴史文化展示室のほか、高橋英吉作品展示室、毛利コレクション展示室、石巻にゆかりの先人たち、という三つのテーマ展示室から、北上川と太平洋に育まれた歴史・文化の豊かさを紹介しています。毛利コレクションは年3回の特集展、高橋英吉の作品や布施辰治を中心とする先人展示も定期的に展示替えしながら調査の成果を発信しますので、お楽しみに。
入口では、2005年に合併した1市6町を象徴する風景写真が来館者を迎え、展示室へといざないます。中央部には石巻市の地形模型とプロジェクションマッピングによる「石巻時空パノラマ」が置かれ、石巻の歴史と風景を大づかみする映像が流れます。その対面にあるのが、博物館の目玉の一つ、ヤマガミユキヒロ作「a little world」。この場所でしかみることができない作品ですので、ぜひご覧ください。
2024年度の予定
11月に開館3周年を迎える博物館では、今年も企画展と毛利コレクション特集展を年3回行います。6～7月は多賀城創建1300年にちなんだ海道蝦夷と古代牡鹿・桃生郡をテーマにした考古・古代の展示。8～9月は宮城県美術館と連携した佐藤忠良展、1～3月には日本遺産「みちのくＧＯＬＤ浪漫」をテーマにした歴史展示を企画しています。毛利コレクションは、近代の石巻、毛利総七郎が集めた古鏡、近世古文書を取り上げる予定です。
博物館の展示を通じて、石巻の歴史を知り、ふるさとの魅力を見直すきっかけになれば幸いです。1年間お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
（学芸員・泉田邦彦）
石巻市博物館
〒986-0032 石巻市開成1-8(マルホンまきあーとテラス内) ☎0225-98-4831
利用案内
開館時間 9：00～17：00（最終入館16：30）
休館日 毎週月曜日（祝日の場合は翌日休館）、年末年始（12月28日～1月4日）
入館料 常設展 一般 300円、高校生 200円、小・中学生 100円
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。