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おばけ屋敷でまちづくり㊦ 防犯教育と活性化で人づくり 川開きのドキドキ感復活へ

 おばけ屋敷は中身の見えない商品。でも人はそこに対価を払って入場し、恐怖と楽しさを求める。どこにそんな人を呼び込む力があるのか。そしてなぜ怖いのか。スタッフミーティングで単純な質問を投げかけてみた。

 「中で何が起きるのか知りたい」「どんなおばけが出るのか」。問えばこんな答えが返ってくるが、よく考えてほしい。おばけ屋敷は全てフィクション。すなわち作り物の世界だ。

 この大前提でも本物のおばけ(見たことはないが)に遭遇したように怖がってしまうのは「想像力」が作用している。その想像力をかき立てる仕掛けがおばけ屋敷に求められており、参加者は全てフィクションと分かっていてもつい悲鳴や声を上げてしまう。こっけいだからこそ、現実に戻った瞬間、笑いがこみ上げてくる。

昔の石巻川開き祭りと言えば「お化け屋敷」。記憶にある人も多いはず

 出るのか、出ないのかと緊張させ、一気に驚かす。おばけが作り物と認識すると、心が和らぐ。これが「緊張と緩和」の関係で、おばけ屋敷はこの繰り返しで成り立つ。だから緩和された直後は思わず笑みがこぼれ、楽しさがあふれ出てくる。

 遊園地や地域の夏祭りでも、おばけ屋敷は人気。どんなに技術革新が進もうと、廃れることはない。むしろ行列ができるほど。平成時代の石巻川開き祭りの定番と言えば「お化け屋敷」。アイトピア通りに小屋が立ち、思い出に残っている人も多いはず。

 地元有志で今春、結成したおばけ屋敷創作団体「バケラッタ」は祭りでのイベントも視野に入れているが、最終目標は常設展示。空き家活用も手法の一つであり、こんなまちづくりも悪くはない。

 そして学校やPTAなどと連携し、矢本西小学校のように校舎を丸々使って一夜限りのイベントを催す。学校開催は楽しんでもらうだけでなく、教育と防犯を裏テーマに置くことが重要だ。西小でも暗闇の教室に入るのをためらう児童に「おばけが出たらどう逃げる」「友達は置いていくの?」と考えさせた。

 足がすくむ児童が流れを止め、後続者が増えると集団化してしまう。集団心理は多数派に同調し、時に極端な行動も起こす。もはや怖さも消え、おばけにちょっかいも出したくなる。そんなときは「ここからは2人で行こう」「残りは教室の前で待機」とあえて区切ると、集団心理は消えて児童は再び緊張と緩和を繰り返す。

 安全なおばけ屋敷の中で、児童は行動で答えを示した。同時に不安要素を生み出す空間はどんなものかも肌で感じたはず。バケラッタが提案するおばけ屋敷は人づくり。参加者以外でも舞台づくりやキャスト、運営など中学生、高校生、大学生を中心に約70人のボランティアが協力し、個性を出した。「人づくりはまちづくり」につながっていく。【外処健一】





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