起きた出来事だけを見る

弁護士ではないのですが文章を通して法律関係の仕事をしているため、事件や事故に関する記事を読むようにしています。最近は飲酒絡みの死亡事故や残忍な殺人事件が起きているので、なかなかヘビーな事故や事件が続くな、と思いながら読んでいました。
私は交通事故に関する記事を扱うことが多いので、事故があると任意保険や訴訟などの視点から記事を読むようにしています。飲酒による死亡事故(最近起きた悲しい事故は自損)は、保険による補償はかなり限定されます。遺された方が少しでも平和に暮らせるよう祈願しております。

交通事故も、その他の一般民事に関すること(離婚、不貞慰謝料、相続とか)も、仕事上多く接する機会がありますが、報道の多くは事件・事故の背景や動機にこだわって報道しますよね。今日だと、新宿で女性が刺殺された事件の動機や背景が報道されています。ただ、事件や事故は法律家も警察も誤る時は誤っているので、全く事件に関わりのない人たちは「ゴシップに関心を持たない」と決めることも大切だと思うようになりました。

もちろん、私は仕事であれこうした内容を扱わざるを得ないので、関心を持って触れていることは間違いありません。ただ、スマホがあってここまでゴシップに対する「お気持ち」がネット上に溢れすぎると、起きた事実はどうであれ、ただただ延々と被害者も加害者も、むやみに叩かれ続けてしまいます。ネット上は今、さながらコロッセオですよね。ティトゥス帝がやったことから何も変わっていないのもしんどいな、と思います。

女性が男性から資金を得ていた、という報道がありますが、起きた出来事は「殺人」です。起きた出来事だけをまず捉えて、ご自身のお気持ちはネットに垂れ流さないことが良いのでしょう。

起きた出来事だけを捉える、というのは非常に大切なことだと思っています。

法律の仕事に携わっていると、それはそれは人間の奥深くに燃える苛烈な業火も垣間見ますが、業火に気持ちを奪われると事件や事故を見つめる際に「推測」に引っ張られます。わかりやすく例えてみます。不貞行為の法律相談では、浮気をした人vs浮気をされた人の構図になりますが、された人は「なぜ浮気をしたのか」という感情に引っ張られ過ぎないことが重要です。

なかなか難しい感情の整理方法ですが、起きた出来事は「浮気」で、その背景に何があろうが推測の域は出ません。寂しかった、セックスレスだった、あるいは別の理由があるとしても、事実は「浮気した」という点のみです。その人の生育環境や生活状況など、実際にはある程度他のことを考慮した上で示談交渉が行われますが、あなたを好きかどうか、家族のことをどう思っていたのか、は答えはありません。考えても本人から言わせても、された側は「本当は?本当は?」と存在しない本当を探し続けることになります。これでは埒が飽かないので、事実をまず評価します。

慰謝料相場がある以上は、どの程度の「金額」で問題を解決するかがポイントになってしまいます。お金でこうした問題を片付けることに抵抗感がある人もいるでしょうし、本質的な解決にはならないのですが相場は実務の積み重ね(つまりめちゃくちゃ多くの他人の浮気)で生まれているものなので、解決方法の1つであることは間違いありません。

感情の整理方法としてなぜ「起きた事実だけを見る」ことが重要なのか、というと、人との付き合いの中では、「事実以外のこと」を考えすぎると解決方法を間違えることがあるからです。上記では浮気で例えましたが、お金にルーズな人は、優しくてもルックスが良くても「お金にルーズな人」という事実は揺るぎません。その上で、その人との縁を継続できるのか検討する必要があります。友達だろうが、家族だろうが、この事実を前に自分の感情を整理できるかどうか、が問題解決の有効な手段なのです。DVなら、愛しているから殴るんだ、なんて事実なわけがありません。「身近な恋人や家族を殴る人」という事実だけを評価します。

もちろん、人と人とのつながりでは義理人情も大切ですし、ラブもライクも絡んできます。ただ、感情が整理できないような「どでかいトラブル」に直面したり、「この人時々ルーズだけど、良い所もあるし…」と迷ったら、まずは「この人は時々ルーズ」という事実だけを見ると、自分の中に答えが見つけやすくなります。

恋愛においても有効な感情の整理方法で、たとえば恋人から「俺女の子に飽きることあるんだよね」と言われると仮定します。好きな人からそんなことを言われると、「私も飽きられたらどうしよう」とか「過去にいっぱい遊んできたのかな」と不安になると思いますが事実だけを見ましょう。「女の子に飽きる人」であり、「女の子に飽きる、と別の女の子に発言する人」という事実です。どうでしょう、かなりめんどくせえ人ですよね。はぁ?となったらそれが答えです。

「本当は私のことを好きでからかう」という発言でもありませんし、「俺に飽きられないように努力しろよ」とも言われていません。ただただ、「飽きる人」なのです。貴重な自分の時間を他人に「飽きる」なんて言わせないためにも、事実だけを捉えて人間関係を楽しく泳ぎましょう。


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