書いてあることは、書いてあるとおりに読む

WEBライターとして文章を書くことを仕事にしている私は、クライアントの求める内容に沿って文章を生産する必要があります。ある人には硬派に、またある人には軟派にと豹変させていくわけですが、実際に読むのは不特定多数の方々なので、どう読まれてもあまり誤解が生まれないように書く必要があります。私が扱う分野は士業がリーガルチェックを入れるもので、細心の注意を払っています。この点は、誤解さえ楽しむ創作や、取材を重ねて書く取材ライターとは全く違うものでしょう。(細々と取材ライターもやってます)

私自身は文章を読む、書く能力は高い方ではありません。そもそも文章は訓練すれば誰でも読めるし、誰でも書けるものですから、全くハードルが高い仕事でもありません。(書く内容の専門性を高めることは必要)

日本では義務教育を経ていればある程度文章は読めるし、書けるわけですが、LINEで完結に文章を書こうとすると、「勝手に書いてないことを読む人」が意外に多く、びっくりすることがあります。

たとえば、最近あった出来事を例にします。

保護者会向けに「明日の会議は、私と田中さんの2名でOKです。飯田さんと森さんは出席不要です。」と送るとします。前後にこの会議に関するLINEは送信していません。

この会議の主催は私で、文章には全く他意はなく、ただ必要な人を選択、不要な人に不要と告げるものですが、この文章を読んだ田中さんから、「この文章だと、飯田さんと森さんは仲間外れにされたと思ってしまいます。本来全員参加してほしいですが、内容からすると飯田さんと森さんは暇に感じるかもしれません、ご参加どうされますか?と聞くべきです。」と結構強めの抗議がありました。

どうも詳細を聞くと、田中さん・飯田さん・森さんのグループLINEがあり、私のこの文章の悪意について議論が行われ、飯田さんと森さんは怒っているそうなのです、私ら仲間外れかと。だとしたら、抗議は飯田さんと森さんから来るべきですが、なぜか会議で話す必要がある田中さんから抗議がきました。彼女たちの気持ちを代弁なすったのです。
私には女の気持ちも、男の気持ちもわからない、幼少期から草花しか愛さなかった理由はこれか…と大げさに嘆きました。(うそです)

仲間外れ、という言葉がどこに記載されているでしょうか。全く書いてありません。書いてないことで怒り、わざわざ議論までしているのです。もうお手上げです。

飯田さん、森さん、私はエスパーではないので、怒りを察することはできません、次回からは直接連絡してください、ぜひぜひ。(登場人物名は仮名)そして書いてないことの議論で、怒りを増幅させ、突然私に怒るのはやめましょう。それは私以外のみなさんの内なる問題であり、仲間外れにされたくないとか、私も会議に出たいです、と言えば良いのです。そもそも書いてないことで怒っている原因が、私個人への不満だとしたら、文章と切り離して言わないと意味がわかりません。

基本的に事務連絡には絵文字も使わないですし、会議の長である手前、簡潔に留めているのですが、人の気持ちに疎いから私は一人で仕事するようになったんだろうな、としみじみします。

絵文字があると印象が変わります、と言われることもありましたが、絵文字ぐらいで言葉の緩急が変わるなら、なおのこと事務連絡に誤解が生まれるのでしません。事務連絡は、事務連絡として書かないと、そもそも読まない人がいるんですよ。そして事務連絡は仕事でトラブったことはないので、これで正解です、変えません。

飯田さんのことも森さんのことも、好きでも嫌いでもなく、ただただ事務連絡をしたいのですが、人間関係の中に「仲間か、そうじゃないか、好きか嫌いか」を入れてくる人は文章をそのまま読んでくれないことがあります。仲間以外の人が世の中は圧倒的に多いですから、書いてあることは、書いてあるとおりに読むほうが暮らしやすし、生きていきやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

文章はIKEAの家具の説明書ぐらいのもので、そのまま読めば良いのです。「この家具、組み立てられようとしてる!でも実は私のこと嫌ってるんだわぁ…」とは、さすがに普段は読まないでしょう。「ネジはここに挿してね♡♡」と書いてあったら、ネジにラブでも増すのでしょうか、増しません。

他意まで勝手に読み始めると、他意を込めて文章を書く人に飲みこまれ、生活がダークサイドに落ちます。ほら、あのSNSをご覧なさい、言葉の海に1人溺れていく人ばかりです。(私も溺れたので、しばらくお休みしていました)
パーティーもグループLINEもSNSも、抜け出してからが人生本番です。軽やかに抜け出して、他意のない私とご飯でも行きましょう。リアルな海を観に行くのも良いですね、春の海は豊潤です。2泊ぐらいして、1日はごろごろしましょう。

ここからは自戒を込めて、そしてLINEなどで傷付く方向け(娘の世代にも)に書くのですが、たとえば恋愛においては「仕事が忙しい」は「仕事が忙しい」としか受けとめなくてOKですし、親子関係では「今日遅くなる」には「気を付けて」でOKでしょう。

友達が「今日はなぎさとあいはちゃんと遊びたい♡」と書いてきて、あなたの名前がそこに無くても、必要以上に他意を読まないことです。その友達が悪意を持って書いているとしても、文章としては書かれていない以上は、読まないのです。気になってしまうなら、「今度私も誘ってね」で留めましょう。そして、あなたがされて嫌だった書き方は、真似しないことです。悪文の書き方を真似する必要はありません。

他人がすでに放ち終えた言葉に、もっと私に・僕に配慮してよ!と思う経験は誰でもしたことがあると思いますが、なんで配慮して欲しかったのか立ち止まって考えたことはありますか。

心の中に湧き出てくる不安や不満は、そのまま吐露することが理想です。「仕事が落ち着いたら会いたいけど、浮気かなと不安になる」とか、「遅くなることが多い…非行じゃありませんように」とか、人間は身近な人を大切に思っていればいるほど、勝手に不安や不満を抱いてしまうものです。しかし、書いてないことは読まずに、不安は不安として素直に言えると良いのでしょう。言えないのなら、それは今ここにある文章が悪いのではなく、人間関係がそもそも上手くいっていないので改善しましょう。この点を間違えなければ、占いにも新興宗教にも足元すくわれにくいですよ。言いたいことは、ペテン師の可能性がある他人にではなく、伝えたい本人に言いましょう。(飯田さん、森さんも改善してほしいと言ってください)

そして不安や不満は相手から湧いてくるものではありません。自分から湧いてくるものです。怒りの源泉も自分の心にある以上、他人はあなたの怒りなんて知りません。ぶつけ方は慎重に検討しましょう。逆もしかり、勝手に怒る人の相手はしなくて良いのです。

また、文章において書いてないことを読ませる人は、良い人ばかりではありません。(文章における書いてないことを想像させる豊かさは、また別のお話)

書いてないことまで読み取れ、というのは無礼なことでもあるのです。同じ文章でも書く人によって意味がいちいち異なってたら、暮らしにくくて仕方ありません。読んで欲しいならとにかく正確に書け、と言い返すのが正解です。他人の文章に苛立つ、他意を読んでしまう人は、保険の約款を真面目に読んでみたり、お住まいの地域の条例などを読んでみたりすることがおすすめです。結構役立ちますしね、読みものとしても優れています。

そのまま読むことは、案外自分を守ることにもつながっています。
ニュースも友達のメールも、愛の言葉や辞世の句も、まずはそのまま読んでみましょう。

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