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原発銀座

子の習い事の1つが大会ハイシーズンを迎えており、今日は自宅から車で1時間弱の会場へ。このエリアは「原発銀座」と呼ばれている場所で、政治面でも天災面でも、時々スポットがあたる場所です。原発銀座という言葉を安易に使って良いものなのか、という疑問はこの地を真面目に歩いたことがある人間なら、誰もが抱えるでしょう。

福井県嶺南地区には、全国1位の原発数が集中しており、廃止措置中を含めて15基あります。荒れた地も多い嶺南に煌びやかな銀座という言葉は一瞬似つかわしくないように思うでしょう。しかし、原発がもたらした巨額のマネー、産業に乏しい地区にもたらされた安定雇用などを考えると、鉛のような重さの札束が動いたことが容易に想像できます。実際に、報道も多くなされてきました。この件はさまざまな事件と結びついていくので、非常に語りにくい問題です。

参議院選挙の時にも歩いたこともありますが、地域の資料にあたると、戦前はアメリカに30~40戸移住したとの記録も。人の往来は京都、滋賀からも多かったようです。普段は非常に静かな街。個人的にはとても好きなエリアです。先生、また鰻を食べに行きましょう。

このエリアに足を運ぶのは、4年ぶり。子の試合中は仕事をしているのですが、ひと段落したので1人で地元の小さなショッピングセンターへ。

静かに営まれているショッピングセンター

中は荒廃していましたが、小さな天窓から見える青い空はタレルの部屋のようでした。無灯火状態の薄暗い場所で、卓球に興じる親子。小気味よくピンポンの音が響きます。珈琲の良い匂いがする喫茶店は混雑しており、地域の方々が憩いの場として大切にしているようです。品揃えがしっかりしているのは寿司屋と100円均一。開店休業状態のチャレンジショップとは対照的に、かわいい菓子パンを焼く小さなパン屋は流行っていました。

横に均一に揺れ続ける遊具の車に乗る小さな女の子、札束がはみ出ているヴィトンの財布を持つ父親は、彼女の頭を何度かふいに撫でており、その眼差しはとても優しいものでした。まるで火をくべるようにして、遊具に100円玉を入れ続ける様子を見ていると、原発反対、という4文字もまた、鉛のように重いものだと理解できます。原発を失ったとき、彼らのような人たちは、どこに行けば良いのでしょうか。

菓子パンを2つ買い、外のベンチで食べました。外気は15度。間もなく清香を放ちながら、梅の有名産地でもある西田地区には花が咲き乱れるでしょう。

政治とは考え続けること、ただしもう政治活動には関わらないだろう、と25歳の時の自分は民主党地方県連の事務局を去る時に考えていました。ある有名女性大臣(当時)がこの地のJR駅前でマイクを握り、足早に去って行った時に、言い表し難い「虚しさ」を抱えたこともあります。誰が来ても、何が来ても、ここでは原発を敵にするわけにはいきません、すでにもう「ある」からです。

この地は、非常に美しい場所です。湖畔も美しく、暮らすならここも良いなと考えることも。推進派も反対派も、全くどうでもいいけどキレイな田舎に行ってみたい方も、今年の夏の観光には原発銀座を歩んでみてはいかがでしょうか。



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