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無自覚なまま強者に回っていることへの戸惑い。

ピースの小沢あやです。 ポットキャスト番組「働く女と◯◯と。」を始めました。30代共働き育児中の編集者、小沢による働く女性をゲストに迎えたトークプログラムです。番組内容の一部を、noteマガジンでもご紹介します。

初回のゲストは「わたし、定時で帰ります。」などのヒット作で知られる小説家の朱野帰子さんです。

無自覚なまま「強者」に回っている?

小沢:「わたし、定時で帰ります。」は、また30年後くらいに読んだ人から「うわ〜、定時で帰れない時代があったんだ〜(笑)!」って言われたりとかするのかなって思うと、歴史的な作品ですよね。

小沢:今回、朱野さんとポットキャストをご一緒させていただくことになって読み返した時に、やっぱり昔よりコミカルに感じたというか、さらに面白く読めたんですよ。最初に読んだ時より時代自体も変わってきてるし、自分も決済者・管理者として、働き方をある程度は自分で決められてるので。

ただ、若手とか、現場の気持ちとか、新卒の時に「ああ、今すぐ帰りたい」って全力で思ったことを絶対忘れちゃいけないなって、本当に気づかされます。朱野さんは、気遣うこととかってありますか?周りの働き方、接し方っていうところで。
 
朱野:あんまり編集者さん以外の人と仕事をすることがないんですけど、 子どもと接してる時に、やっぱり自分は強者になったんだなって思い知らされることがあって。子どもが小学生なんですけど、叱っているときに「大人はさ!体が大きいから怖いんだよ!」って言われたんです。
 
小沢:すごく今ハッとしました。そりゃそうだ。
 
朱野:こっちはなんかなんとなく普段一緒に生活してる家族だから、対等ではないんだけど、ちょっと油断してたところはあったんですよね。でも、あっちから見たら、巨人がすごく怒ってるみたいなことなのか!って。
 
若い人と喋ってる時も、こっちは対等……ちょっと気を遣う存在ぐらいで話してるけど、向こうからはもう「はは〜っ」いう感じで。特に、作家は一回でも売れたりすると、やっぱり編集者さんたちからすると気を遣う存在になるんです。自分の立ち位置が変わったっていうことを受け入れるのが、すごく難しい。
 
小沢:朱野さんとはプライベートでお茶とかもしてますけど、いつも「ほら、小沢さんは編集者だから!作家を立ててくださるから!」って(笑)。

朱野:そうそう(笑)。

小沢:(笑)。それにすごくすごく自覚的になっているんですね。
 
朱野:会社員の方は、組織内で年齢や立場が上になることで、自分が権力側に回っていることを意識すると思うんです。けど、作家ってそういう機会がないんですよね。30代になっても40代になっても。
 
だけど、自分がTwitterとかで、「この本面白かった」って、新人作家の本を紹介した時に、その方がとても嬉しいって言ってくださるのを見ると、「え、私なんかが紹介した時にこういう反応になるの!?」っていう戸惑いみたいなものがあって。

自分は若手新人気分だったのに、気づいたら中堅、中年ポジションというか。ベテランっぽいポジションにいるっていうのを 受け入れるのに、すごくジタバタしましたね。
 
小沢:やっぱり女性でも働く上でどんどん新たな視点が入りますよね。「自分は何も持っていないと思っていたけど……持ってしまった!」みたいなのも正直ありますし。
 
朱野:女性でもそうですよね。男性は元々そういうことを感じる瞬間が小説に書かれていたりとか、 ビジネス記事でも「気をつけろ!こんな仕草」みたいなのがありますけどね。女性は、総合職として年を取った時に「後輩社員に対してどう振る舞うべきか」みたいな、お手本がない。ずっと弱い立場だと思ってた自分が、急に恐れられ慕われる立場になるっていう権力に意外と無自覚で。無邪気なままに年長者になってしまう恐怖っていうのがありますね。

(「偉くなったわけでもないが気ばかり遣わせてる自覚はあるよ」って°C-uteも歌っています)

働く女性のロールモデルもメディアもない問題

小沢:働く女性って多様化もしているし、もはやロールモデルとかもいないですもんね。朱野さんはとくに、氷河期世代だから総数が少ないのでは。
 
朱野:私が新卒で入社した時は、先輩の女性社員っていうと、一般職で一回り上の方。総合職でずっと働き続けてる人っていうのが(あまり)いなかったので、男性の先輩を見て習うっていう感じだったので。「どこかに女性総合職のお話があるはずだ」と思って書店に行ってすごく探したんですけど、ないですよね。不満やお悩み系とかはあるんだけど、そういうことじゃないっていう。
 
小沢:未だにしっくりくる共働き育児世帯向けの情報、ないですもん。ある程度の規模のメディアでいうと、「日経DUAL」くらいじゃないですか?「プレジデントウーマン」だと強すぎるし。「プレジデントファミリー」も、巻頭特集が「わが子を慶応に入れる」とかだから、全然違うんですよ。

 朱野:そう。昔からエリートの層は女性も働いてたんですけど、それには手厚い実家サポートがあったり、家事代行を使いたい放題みたいな環境があったり。けど、凡人女性が総合職になった時に、どうサバイブしたらいいかっていうのが、わからなかったんですよね。
 
小沢:たしかに。今後、そのあたりもまたお話していければなって思います。次回もゲストは朱野帰子さんです。ありがとうございました。

トークの全貌は、ポッドキャスト本編でお楽しみください。ポッドキャストは毎週水曜日更新予定です。感想はハッシュタグ「#働く女と」でつぶやいていただけるとうれしいです。

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