「好きってどういうことですか?」
「好きってどういうことですか?」
高校時代の部活の友人がいる三人のLINEグループで、一人の恋愛相談を聞くべくグループ通話をしていたとき、相談を持ちかけた彼はそう言った。
去年の五月末、数日前まで好きだと言ってくれていて「けいちゃんだから一緒に暮らしたい」と言っていた当時の恋人が、突然「好きな人ができたから別れよう」と言ってきた頃から、私は人を好きになるということがわからなくなった。
人を好きになる。誰かを好きになる。
難しいことだと思いつつ、その定義は人それぞれだと思いつつ、相談を聞いていた友人と「え…難しいこと聞くね…」などと言っていた。
好きという状態について考える。
まず、ふとした瞬間に思い出すようになったら、それはきっと好きだなと思う。今どうしているかな、風邪引いていないかな。友人は「翌朝がマイナス二度の予報だったときに、連絡をしたくなった」と言っていた。きっと、そういうことなのだと思う。
そして、きっと相手のことを知りたいと思う。好きな音楽、好きな食べもの、行ってみたいところ。
宮下奈都さんの「スコーレNo.4」には、
と書いてあった。まったくその通りだと思う。好きの反対は無関心とはよく言ったもので、「知りたい」という興味は「好き」に限りなく近しいものだと思う。
それから、一緒にいたいと思ってしまうのもあるような気がする。ただ、私のこれに関しては、何かをしていてほしいわけでもない。特別なことが何もなかったとしても、相手が近くにいてくれたらいいとただ思う。
一時期書店で平積みされていたエーリッヒ・フロムの「愛するということ」には、
とある。何かをしてくれるその人だからという条件付きで好きになるのではなく、気がついたときには「ただそばにいてくれたらいい」と思ってしまう。「ただいてくれるだけで」と思う人が現れることがあるのだから、これもきっと嘘ではないのだと思う。
そんな私には、まだそばにいてほしいと思う相手はいない。ただ、毎日布団の中で目を瞑るときに「どうか幸せで、どうか笑顔で。」と祈る相手ならいる。これを話したら、きっと「それって好きなんじゃないの?」と言われるのだと思うけど、私にはわからない。
好きの要素はきっとたくさんあるし、一つじゃないし、誰かのそれが自分には当てはまらないかもしれない。そんなものなんだろう。
相談をしてくれた友人が自分の「好き」にいつか気がつけたらいいと思うし、私自身もまたいつか心から好きだと思える人に出会えたら、思えたらいいなと思う。
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