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昔話の動物たちは、話しかける


 どうして昔話や絵本の世界では動物たちが自由に活躍しているの動物たちは何をしゃべっているのか? | 山極 寿一, 鈴木 俊貴 |本 | 通販 | Amazonろう。

 昔話の登場人物は、人間だけじゃない。そう、動物だったり、龍など想像上の生き物だったり、風とか太陽といった自然現象もありますね。

 これはすべて作り話でウソなのでしょうか・・・。

 先日、娘が借りてきた童話集を読ませてもらった。

 おはなしのろうそく 7 雨のち晴 | 東京子ども図書館, 大社 玲子 |本 | 通販 | Amazon 

 この中の一篇がとても面白い。

 「チモとかしこいおひめさま」(フィンランドの昔話)。

王様は、一人娘を偉い人に育てようと考え、世界中の言葉を学ばせました。お姫さまが、ありとあらゆる国の言葉を話せるようになると、「姫の知らないめずらしい言葉を話すことができる者に、姫を花嫁としてつかわそう。ただし、言葉を知りもしないくせに、姫を嫁にほしがるような図々しい奴は、バルト海にほうりこむぞ」と、おふれをだします。

 羊飼いのチモは森の中を歩きまわり、小鳥や動物と話をして、鳥やけもののことばがわかるようになっていました。

 お姫さまの城にむかう途中、チモといっしょになったのはスズメ、リス、カラス。

 お姫さまの前で、スズメ、リス、カラスが鳴きますが、お姫さまにはわかりません。でも、チモにはわかります。

 チモは「本当の賢さは人間はなんでも知ってるわけじゃないって事を知ってる事なんです」と言います。

 結局、田舎者と馬鹿にされたチモはお姫様と結婚しました。

愛蔵版 おはなしのろうそく 7 『雨のち晴』から一部抜粋

 実は、昔話というのは人々の間で語り伝えられてきたもので、その内容は時代とともに変化する。とくに近世以降には、「教訓」が付け加えられることが多い。

 チモの「本当の賢さは人間はなんでも知ってるわけじゃないって事を知ってる事なんです」というセリフは、何だか教訓めいていて、好きじゃない。もともとは、こんな言葉はなかったのかも知れない。

 ここで気になった点は、むしろ、チモは本当に鳥やけものと会話ができたんじゃないかということ。


 先日、「ゆる言語学ラジオ」をポッドキャストで聞いていたら、「動物言語学」という新しい学問分野が世界で初めて日本で立ち上げられたと紹介されていた。 

 その成果が分かりやすく書かれている本がこれ。面白そう!

 動物たちは何をしゃべっているのか? | 山極 寿一, 鈴木 俊貴 |本 | 通販 | Amazon

 動物は人間より知能が劣っていて、ネコが「ニャー」、犬が「ワン!」などと哭くのは、言葉じゃなくて、ただ感情を表現しているだけだ、とこれまでは考えられてきた。しかし、これは人間の思い込み、いや思い上がりで、動物たちもそれぞれの仕方でコミュニケーションを取っているらしいことがわかってきたのだ。

 人間は人間のことしか、わかっていない(本当はわかっていない)のに、動物のことをどれだけ分かっているのだろうか。動物たちの認知能力というものを真剣に考えてこなかっただけなのだろう。

 さて、さっきのチモの話に戻ると、世界中の言葉が理解できることが偉いのだという価値観が何時のころからかヨーロッパで広まり、羊飼いのチモのように動物やけものの言葉がわかる人はバカにされるようになったのではないか。

 人間中心の価値観が世界を覆うようになり、動物など自然界との交流ができる人々は次第に異端視されていったのだ(例えば「魔女」)。

 文明化が進むことで、人間が失った能力は意外と大きいように思う。

 昔話をただ過去の面白い話として読むのではなく、もしかしたら本当にあった話として読み直すと、新しい気づきがあるように思う。

 自然の声にもっと、もっと耳を傾けよう! そして、生活を楽しくしたいと思う。

 でも、夕飯時、うちの猫が「ニャー」とうるさく鳴くのは、「餌をくれ!」と言っているようにしか聞こえないんだけど…。



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