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ギターコードは覚えるな

本当はGWの暇をもてましている方々に読んでもらいたかったのですが全然間に合いませんでした

ちょっと扇動的な標題ですが、嘘は言っていないつもりです。ギターコードは覚えるな。

より正確には、コードフォームを全部丸暗記するなんてやめて、最低限のルールだけ覚えて自分でコードフォームを考えられるようになろうぜというのが本旨です。

(めっちゃ長くなってしまいました。もっと簡潔に書け定期)
(理論的にガチガチに厳密というわけではありません、わかりやすさ重視です)

コードの数は多すぎる

おそらく初めてギターを手に取った多くの人にとって、簡単なコードを鳴らすところがファーストステップになると思います。CはこうでEmはこうで…と地道に練習していきますよね。

じゃあギターコードは全体としてどれくらい存在するかと言うと…

出典: https://kiyosuworks.com/beginner/code-table
出典: https://kiyosuworks.com/beginner/code-table

はい、覚えられるわけありません。こんなのを一から十までinputしようとするのは極めて非効率的ですし、それでギターを諦めてしまうと言うのはなんとも勿体無いことです。

しかしこの膨大な数のコードはランダムに出来上がっているわけではなく、一定の規則のもとに成り立っています。そしてその規則を理解すれば、こうした表に頼らなくても、コードフォームを自分で作れるようになります。

今回の目標は、コード理論の基礎を理解して、自分でコードフォームを作れるようになろう(丸暗記から卒業しよう)です。

そもそもコード(和音)とは

当たり前のようにコードという表現を使っていますが、そもそもコードとは何者でしょうか?

ギターという楽器の大きな特徴として、複数の音を同時に鳴らせるという点があります。ギターだけがそうというわけではなく、ピアノなどもこれに該当するのですが、それ以外の多くの楽器(たとえばトランペットやサックスなど)は基本的に一度に鳴らせるのは一音だけ、です。

乱暴な言い方をすれば、一度に複数の音を鳴らすのがコードです。日本語的には「和音」とも言います。

ところが、なんでもかんでも同時に鳴らせばいいと言うものではありません。極端な話、ピアノでドからシまでの全部の鍵盤を同時に鳴らしても、およそ音楽的ではない雑音にしかなりません。

コードを音楽的に美しく響かせるには、ある一定のパターンに基づいて、どの音の組み合わせを鳴らすかというルールに従う必要があります。そうして出来上がったコードに人々は名前をつけて、CメジャーやEマイナーなどと呼んでいるわけです。

必要な予備知識

音階のアルファベット表記

コードを作るためには、音程の異なるいくつかの音を集めて同時に鳴らす必要がありますが、その方法を学ぶために以下の図を見てみます。

誰もが慣れ親しんでいる「ドレミファソラシド」ですが、そもそもこれはイタリア語です。ドレミファソラシドを英語で言い換えると”C D E F G A B"となります。

コードを学んでいるとE, A, Gなどのアルファベットが出てきて「???」となってしまうのですが、別に大したことはなくて、単にドレミを言い換えただけです。つまり、

ド レ ミ ファ ソ ラ シ 
C      D      E        F        G      A     B  

という対応関係になります。以降、特に断りなくABC表記を使う時もあるので、頑張って覚えてください。

JCぼっちすこすこのすこ

さて、そうするとぼっちちゃんが頭を悩ませているギターコードはE(ミ)、A(ラ)、G(ソ)だとわかるのですが、しかしそのままではヘンです。さっき私は「複数の音を同時に鳴らすのがコード」だと言いましたから、EやAやGなど一音だけ鳴らしたのではコードになりません。

実はアルファベット一文字しか書いていないコードでも、演奏時には複数の音を同時に鳴らします。E, A, Gのようにアルファベット一文字だけで表記されるコードをメジャーコードと呼び、全ての基本になるのですが、これについては後述の「コードの成り立ち」のセクションで詳しく書きます。その前に一度、異なる音の音程差を考えましょう。

「半音」と「全音」と「度数」

すこし唐突ですが、「半音」「全音」というものを考えてみます。半音下げチューニングとか全音下げチューニングとかいう表現はよく使われますね。

ギターの場合、押さえる弦が同じでもフレットが違えば鳴る音も違いますが、フレットが1だけ違う音程差を半音と呼びます。全音はその2倍で、フレットが2違う音程差を全音と呼びます。

しかし半音/全音は将棋で言うところの歩、チェスで言うところのポーンのようなものです。実際の演奏の時にはフレットが3つ以上違う音を考える時もありますから、せいぜい1や2フレットしか動けない半音と全音だけだと、カバーできる範囲はかなり狭いです。

そこでもう少し大きな音程差を考えるために、「度数」という概念を導入します。

「度数」も半音や全音と同じく、2つの音の間の距離のようなものです。距離の大小を表すために、頭に数字をつけて2度、3度、4度…というように表現します(注1)。数字が大きければ大きいほど、音の間の距離は遠くなります。感覚的な話として、ロリっ娘の声と成人男性の声の間には、大きな度数があります。逆に、ロリボとショタボの間の度数は、成人男性と比較する場合よりも小さくなります。

(注1)「1度とは言わないの?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、2つの音が全く同じ高さの時に1度と言います。

ここではひとまず、2~8度の範囲を覚えることにします。一度ギターを離れて、鍵盤を眺めてみましょう。

出典: https://ameblo.jp/bass-school/entry-12257819907.html

♯と♭については説明不要だと思いますが、半音上げれば♯、下げれば♭です。さて、ここにはド(C)の音を基準としたとき、他の音がどれくらい離れたところにいるかが度数で表されています。画像を見ると、先ほど例に挙げたドとミ(CとE)は長3度、ドとソ(CとG)は完全5度だけ離れているとわかります。

んん?「長」とか「完全」とかってなに??という声が聞こえてきそうですが、実は度数には「長短系」と「完全系」という分類がございまして、それに応じて適宜接頭辞をつけるのです。1~8度の範囲では、

完全系: 4, 5度 (完全1度/8度という言い方はあまりしないので、事実上4, 5度だけ)
長短系: それ以外の全て(2, 3, 6, 7度)

となるので、この機に覚えてしまいましょう。そして長○度の音を半音下げると短○度になります。完全○度の音を半音下げると減○度に、半音あげると増○度になります。上の画像には描かれていませんが、A♭(つまりG♯と一緒)はGを半音上げたものですから、短6度であると同時に増5度でもあります。

さらに長、短、完全、増、減にはそれぞれ対応する英語表現があり、以下のようになります。

長: Major(メジャー, M)
短: minor (マイナー, m)
完全: perfect (パーフェクト, P)
増: augmented (オーグメント、オーギュメントなど, aug)
減: diminished (ディミニッシュ, dim)

これらの記号の後に数字をつけて、例えば長3度ならM3, 完全5度ならP5という具合に書き表します。メジャー、マイナーあたりは聞き馴染みがある方も多いはずです。だいぶコードの核心に近づいてきました。もう少しです、頑張りましょう。

スケールの概念

暗記事項が多くてパンクしてしまうかもしれませんが、「スケール」というものも一緒に考えてみます。ただしスケールにはもう少し後で登場してもらうとして、引き続き半音、全音、度数について考えましょう。

もう一度鍵盤を見てみます。

出典: https://ameblo.jp/bass-school/entry-12257819907.html

これはピアノの鍵盤ですから、例えばCに対して長6度(A)の音を鳴らしたいときは、白鍵5つ分右に移動すればいいとすぐわかります。しかし問題が一つあって、これはあくまでCから見たA(長6度)を鳴らすケースを考えていますから、C以外のDやEなどの音を基準にして長6度を鳴らそうとしても、全く応用が効かなくなります。

つまりここで大事なのは、Cに対してDは長2度でEは長3度でFは完全4度で…と暗記することではありません。C以外も含めたすべての音に対して、○から△度だけ離れている音は◻︎だ、と自分で決定できるようになることです。

問題はもう一つあって、これは鍵盤の画像ですから、「いやギターの場合はどうなんだよ」となってしまいます。ギターだとAはどこなのか?つまり、Cからスタートしてどれくらいフレットを経由すればAに届くのか?道半ばで止まっても、行きすぎてもいけません。正確にAのフレットを突き止める必要があります。

度数は便利な概念である一方、音の間のフレット数を直接明示してくれるものではありません。一方で半音と全音は、それぞれフレット1つ分/2つ分と明確に決まっているのでした。つまり、度数と半音/全音の関係をリンクさせれば、この問題を解決できそうです。

そのために、再度鍵盤を眺めてみます。よく見ると、EとF、BとCの間が、少し奇妙に見えます。それ以外の白鍵の間にはかならず黒鍵がありますが、EとF、BとCの間だけは黒鍵がありません。

ピアノという楽器は、基本的に隣り合う白鍵どうしは全音離れるように作られています。しかしEとF、BとCだけは例外で、これらは(互いに白鍵であるにも関わらず)半音しか離れていません。なぜこのような作りになったのか、その考察はピアノの専門家にお任せしますが、そういうものなのです。

間に黒鍵がないのを目印にして覚えましょう。繰り返しになりますが、EとF、BとCは半音だけ離れています。裏を返すと、それ以外のすべての隣り合う白鍵(CとD、DとE、FとG、GとA、AとB)は全音だけ離れています。

さらに付け足すと、半音はフレット1つ分、全音はフレット2つ分に相当しますから、EとF、BとCは1フレットだけ離れている(つまり隣り合うフレットである)と言えます。それ以外のCとD、DとE、FとG、GとA、AとBは2フレット離れています。

ここまでの話を整理すると、ドレミファソラシドは以下のような距離感で並べられた音の集まりだとわかります。

これで先ほどの問題に対処できます。すなわちCから数えてAを鳴らしたいときには、2+2+1+2+2=9フレット移動すればAを鳴らせます。つまり5弦の3フレットがC、12フレットがAです。CじゃなくてD(5弦5フレット)から数えて長6度の音を鳴らしたいなら、同じように9フレットだけ移動して、5弦14フレットのBを鳴らします。

ただし実際には同じ弦上を9フレットも移動するのは大変ですから、違う弦に移動する場合が多いかもしれません。ギターの弦は1本ごとに完全4度だけ音程が違います。ただし2-3弦だけは例外で、長3度離れています(GとB)。ここまでの内容を理解できていれば、CやDを基準としてAやBを鳴らしたい時に、5弦ではなく4弦や3弦でどのフレットを押さえるべきかわかるはずです。

またまた同じ画像です。ところでこれを見てると、ドを基準として全-全-半-全-全-全-半という並びになっています。このようなパターンで並べた音の組み合わせをメジャースケールと言います。ドレミファソラシドは、ド(C)の音から始まるメジャースケールなので、Cメジャースケールと言います(注2)。ドメジャースケールとは言いません。ちなみに日本語的に書くならハ長調ですね。

(注2)なにもCだけが基準となるわけではありません。DでもEでもFでも、同じように全-全-半-全-全-全-半と並べれば、それぞれDメジャースケール、Eメジャースケール、Fメジャースケールになります。
さらに並べ方も全-全-半-全-全-全-半だけではなく、全-半-全-全-半-全-全とか、極端な例だと全-全-全-全-全-全のように並べてもOKです。これらはそれぞれマイナースケール、ホールトーンスケールと言われるのですが、今回の本旨はコードなのでここでは深入りしません。ホールトーンは不思議な浮遊感というか、ワープする時の効果音のような聞こえ方がするスケールなので、気になる人は弾いてみてください。ちなみに半-半-半-…と全部半音だけで組み立てるのはクロマチックスケールと呼ばれます。みんな大好きクロマチック基礎練。

コードの成り立ち

その1. メジャーコード

さて、いよいよコードの中身を見ていきましょう。実はコード理論を理解するためにスケールは必ずしも必要ないのですが、せっかく登場したので活躍してもらいます。

何回同じ画像見せてんだ

これはCメジャースケールでしたね。ここで、多少天下り的ではありますが、Cメジャースケールの中からC, E, Gだけを取り出して同時に鳴らしてみます。言い換えると、Cを基準にして長3度と完全5度の音を選びます。実はこの選び方こそがCコードの正体です。

よくわからん!という方はこの画像を思い出してください。Eは長3度、Gは完全5度です。

出典: https://ameblo.jp/bass-school/entry-12257819907.html

ギターでのCコードは以下のように押さえますが、鳴っている音はいずれもC, E, Gのどれかであるとわかるはずです。5弦から順にC, E, G, C, Eと並んでいますね(注3)。

CとEはオクターブ違いで2つ鳴っています。実は3~5弦だけでもC,E,Gは揃いますから、これだけでもCコードとしては成立するのですが、6本の弦のうち3本だけ鳴らすようにストロークするというのは大変ですし、1,2弦も鳴らしてあげたほうが高音成分が足されて煌びやかな印象を受けます。そうした理由から、このコードフォームがCとして広く知られているんじゃないかなと思います。

(注3) ところで、このコードは音が低い方から高い方へC→E→G→C→Eと規則的に並んでいますが、鋭い人は「音を並べる順番は考えなくて良いの?たとえばE→G→CとかG→C→Eのように並べたらどうなるの?」と疑問に思うかもしれませんが、基本的には並べる順番は関係ありません。どう並べてもOKです。並び順を変えてコードを鳴らす手法を「転回」と言います。今はCを基準としていますが、3度の音から始めてE→G→Cのように並べる形を「第一転回形」、5度から始めてG→C→Eにすれば「第二転回形」です。ピアノでコードを鳴らすときなどは、指の移動を小さくするために転回形がよく使われます。

大事なことなので復習します。ある音を基準として長3度の音と完全5度の音を一緒に鳴らせば、それはメジャーコードになります。実際にメジャーコードを鳴らしてみると、明るくシンプルな響きを持つコードに聞こえるはずです。

もうひとつ、先ほどから”基準”という表現を何回も使っていますが、実際には”ルート音”という表現の方がよく用いられます。Root, すなわちそのコードの根っこになる音、土台になる音、という意味ですね。単にRと略記することも多いです。

その2. マイナーコード

さて、メジャーコードについてはそれでいいのですが、ほとんどの楽曲にはマイナーコードも一緒に使われています。基本はメジャーコードと一緒ですが、マイナーコードの場合、長3度ではなく短3度の音を鳴らします。つまりルート音Rと一緒に短3度(m3)、完全5度(P5)の音を鳴らせばマイナーコードになります。たった半音の差ですが、このわずかな差は、聴覚上全く違った印象を与えます。そして楽譜での書き方としては、アルファベットの直後に小文字のmを付して"○m"のように書きます。

比較対象としてAメジャーとAマイナー(つまりAm)を見比べてみましょう。先ほどの話からすると、Aメジャーの長3度の音、つまりC♯の部分を半音下げてCにしてあげれば、Aマイナーになります。

出典: http://www.gchord.net/a/

比べてみると2弦の押さえるフレットが1つだけずれていますね。つまり、ここが長3度か短3度かを決定する部分です。2弦2フレットはC#ですから、これを1つずらして半音下げればCになって、Amへと変換できるというカラクリですね。

その3. 7th系のコード

さて、疲れてきたのでそろそろ終わりたいところですが、最後に7th系のコードだけ解説します。「メジャーやマイナーはまだわかるけど、7thになるとよくわからん」という方もいるかもしれません。少しだけ複雑ですが、頑張って覚えましょう。

7th系のややこしいところは、見た目は似ているけど意味の違う表現や、見た目は違うのに意味は同じ表現が混在しているところです。CMaj7, CM7, C△7, C7, Cm7…などなどがありますが、 これらの中には意味が同じものもあれば違うものもあります。ひとつひとつ見ていきましょう。

メジャー/マイナーコードでは、同時に鳴らす音は3つまでという制約がありました。しかし「んなけちくさいこと言ってねえで、もっといっぱい鳴らそうぜ!」というのはとても自然な発想です。7th系のコードとメジャー/マイナーコードの大きな違いとして、同時に鳴らす音が3つではなく4つです。最初の3つの音はメジャー/マイナーコードと同じく、ルート音、3度、5度の音を選びます。そしてその4人目の登場人物は、コード名からもわかるように7度の音になります(注4)。
ここで長7度と短7度のどちらを選ぶか、さらに選んだ7度の音をメジャーコードとマイナーコードのどちらにくっつけるのか
、これによって7th系のコードの運命が決定されます。つまり、異なる組み合わせによって系4つの7thコードができあがりますが、先に答えを書いてしまうと次の表のようになります。例としてルート音をCにしましたが、それ以外でもルールは同じです。

Cメジャースケールの場合、長7度はB、短7度はB♭です。つまり、上の表に書かれているのは

CMaj7, CM7, C△7 = Cメジャー+長7度 = C, E, G, B 
↑Cメジャーセブンと読む
C7 = Cメジャー+短7度 = C, E, G, B♭
↑Cセブンと読む
CmM7(注5) = Cマイナー+長7度 = C, E♭, G, B 
↑Cマイナーメジャーセブンと読む
Cm7 = Cマイナー+短7度 = C, E♭, G, B♭
↑Cマイナーセブンと読む

となります。CMaj7, CM7, C△7というのは、書き方が違うだけで意味は一緒です。楽譜によって違う表現がされている時があるので、覚えておくと良いでしょう。

(注4) 先ほど転回形について書きましたが、7度の音から始める転回形もあり、これは第三転回形と呼ばれます。
(注5) ”mM7"なんて初めて見たというかたもいらっしゃるかもしれませんが、実際これはあまり使用頻度は高くないコードだと思います。クリシェ進行などの際に使われる場合がありますが、影は薄めです。さらにいうとCm7♭5なんかもありますが、これは名前の通り、Cm7のP5(G)をdim5(G♭)にするといいです。

その4. その他コード

メジャー、マイナー、7th系のコードを見てみましたが、他にもsus4, dim, augなどさまざまなコードがあります。さらには”テンションノート”と呼ばれる音も加えたadd9などもあります。ざっくりいうとメジャーコードの長3度を完全4度に変えると(つまり半音あげると)sus4、完全5度を増5度にするとaug, マイナーコードの完全5度を減5度にするとdimなど色々あるのですが、少し発展的な内容になるそしてまいけるは疲弊しているので、ご自身で勉強されてみてください。度数の概念がわかっていれば、すんなり理解できるはずです。

補足: ダイアトニックコード

ところでCメジャーコードを考えたとき、CメジャースケールからC, E, Gと音を取り出しました。これはCに対して長3度、完全5度の音を取り出す、というのは何回も繰り返している通りですが、もう少しラフな言い方をすると「メジャースケールの音をひとつ飛ばしに取り出した」とも言えます。つまりC→(Dを飛ばす)→E→(Fを飛ばす)→G(いったんここで止める)ということです。

同じような考え方でD→(Eを飛ばす)→F→(Gを飛ばす)→A、と取り出してみるとどうなるでしょう?この場合、出来上がるのはマイナーコード(Dm)になります。Dに対してFは短3度、Aは完全5度だからです。同様にE→G→B(Em)、F→A→C(F)、G→B→D(G)、A→C→E(Am)、B→D→F(Bdim)という具合に、コードを複数取り出せます。さらに7度の音も含めてC→E→G→B(CM7)、D→F→A→C(Dm7)…としてもOKです。

このように、あるスケール上から音を拾って出来上がる一連のコード群はダイアトニックコードと呼ばれ、作曲理論などを学ぶ際の必修事項です。興味がある方は調べてみてください。

コードを導く

さて、ここまでの内容をまとめれば、コードフォームを自分で作れるようになっているはずです。

たとえば「Cは覚えてるんだけどCM7ってどんなんだったっけ?」というケースを想定します。まずCのコードフォームを押さえてみます。CM7を鳴らしたいなら、長7度の音を足せばいいのでした。Cに対する長7度はBです。そして都合の良いことに、2弦開放もBです。だから、今まで2弦を押さえていた人差し指を外して、こういうフォームにすれば…

https://guitarmagazine.jp/mychordbook/

はい、CM7ができました。また、CM7にはセーハを使うパターンもあります。ですがこのパターンでも、鳴っている音は全てC, E, G, Bのどれかです。

裏を返せば、C,E,G,Bを鳴らしとけばどんなフォームでもCM7です。たとえばこういうのも考えられます、まいけるが適当に考えたCM7をいくつか載せてみます。

これ、全部CM7です。C, E, B, Gを同時に鳴らせばCM7だというルールがわかっていれば、こんな具合に独自のフォームを考えることもできます(実際に押さえられるかどうかは別の話ですが)。

もうひとつ、Em7ってすげー楽勝だけどEってどんなんだっけ?というケースを想定します。Em7はこういうやつです。

このコードは6弦から順にE(R), B(P5), D(m7), G(m3), B(P5), E(R)の音を鳴らす作りになっています。まず、マイナー系のコードをメジャーに変えたいので、m3のGの音をM3のG♯に変えないといけません。これは、3弦の開放を1フレットに変えたら対応できます。さらに、m7のDは不要になるので、4弦の開放を2フレットに変えてE(R)にしてしまいましょう。そうすると、以下のフォームになります。

はい、Eができました。これ以外のEのフォームとしては、例えばこんなのが考えられます。

何が言いたいかというと、「コードを作る理屈がわかっていれば、膨大なコードフォームを暗記しなくて済むし、なんなら自分でコードフォーム作れちゃうぜ、みんなそうしようぜ」ということです。特にギターは、のっぺらぼうなフレットがずらずらと並んでいる楽器なので、どのフレットがどの音なのかというのを意識しにくい部分があります。そのため、コードフォームの意味を見失いがちです。ですが全てのコードフォームにはちゃんと意味があるのです。

指板の音は覚えよう

ここまで書いたような作業を自分で実行するには、多少なりとも指板上の音を覚えている必要があります。これがなかなか辛いところではあるのですが、ギターの場合、1弦と6弦は同じEなので、覚えるのは実質5本分です。さらに、12F以降はただのオクターブ違いなので、覚える必要はありません。

個人的には、インレイと絡めて覚えるのが良い気がしています。というのも、インレイがあるフレットの音は比較的わかりやすい(♯や♭がつかない)場合が多いからです。こんな感じですね。

2弦が曲者…

これらの音を出発点として、半音上げたり下げたりすれば、指板上の音を大まかにカバーできると思います。

また、文中で〇〇に対するM3は△△だから…とか当たり前のように書いていますが、この感覚を養うのもけっこう時間がかかると思いますし、なんなら私も完全には習得していません。D♭から見たm6は?とか言われると、う〜んとなってしまいます。少し考えれば出てくるんですけど、反射的には答えられないですね。

こういうことを考えていると、

結局のところ暗記量変わらなくない?

というお叱りを受けそうな気もしますし、自分で書いておきながらそう思ってしまいました。まぁ、確かにそうかもしれません。

ですが暗記量が変わらないとしても、明快なロジックのある暗記と、天下り的な丸暗記では、大きく意味が違ってくるはずです。それに音楽の現場ではメジャーがどうのマイナーがどうの度数がどうのというのは、当たり前に使われる「言葉」です。覚えている言葉の数が多ければ多いほど、円滑にコミュニケーションを取れますし、自らの知識を応用して演繹的に物事を考えられます。

音楽理論は必要か不要か、というのはよく議論の対象になりますが、少なくとも身につけておいた方がずっと便利なのは間違いないと思います。マリオだって、理屈的にはチビ縛りでもクッパを倒せます。ロックマンだって、理論的にはオワタ式でもワイリーを倒せます。しかし、その道のりは過酷なんです。そうではなく、キノコやファイヤフラワーやE缶があった方が便利です。音楽理論もそれと似たようなもんです。

10,000字を超えてしまいましたので、そろそろまとめます。

雑なまとめ

・コードを理解するには「半音」、「全音」、「度数」を理解する必要がある
・メジャーコードはルート音、長3度、完全5度
・マイナーコードはルート音、短3度、完全5度
・メジャーコードやマイナーコードに7度の音を足すと7th系コード。足し方の組み合わせにより、4種の7th系カードを作れる
・↑自信がない人は目次を見て、「『半音』と『全音』と『度数』」、「コードの成り立ち」のあたりを重点的に読み返してみてね
・理屈を理解すれば、コードは自分で作れる!

ふぅ、疲れました。これくらいの音楽理論であれば、そんなに難しい要素は無いはずなので、一念発起してみてはいかがでしょうか。

バイちゃ。

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