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ギタリストは速弾きの夢を見るか?

はじめに

ギター界隈において、良くも悪くも話題になりがちな速弾き。ある人は「ピロピロサイコーだぜ!!」と今日も速さを追い求め、またある人は「速いだけじゃん乙w」と憫笑します。

どっちが正しい、あるいはどっちが間違ってると簡単に決着できる議題ではないですし、本稿の主旨も速弾きは正義か悪かという問いに対する解を導くことではありません。私の持つ速弾きに対するビジョンを書き残しておこうかなという駄文でございます。

速弾きの定義

そもそも速弾きの定義とはなんなのか、Wikipediaの"Shred Guitar"の項には以下のように記されています。

Shred guitar or shredding is a virtuoso style of playing the electric guitar, based on various advanced and complex playing techniques, particularly rapid passages and advanced performance effects. Shred guitar includes fast alternate picking, sweep-picked arpeggios, diminished and harmonic scales, finger-tapping and whammy bar use. It is commonly used in heavy metal, where guitarists use the electric guitar with a guitar amplifier and a range of electronic effects such as distortion, which create a more sustained guitar tone and facilitate guitar feedback effects.

https://en.wikipedia.org/wiki/Shred_guitar

すなわち高速でのオルタネイトピッキング、スウィープを用いたアルペジオ、ディミッシュ/ハーモニック的スケール、タッピング、アーミング等を用いる速いパッセージを速弾きと定義しています。特にスウィープやタッピングは視覚的にも派手な奏法なので、フレーズ中にこれらのテクニックを織り交ぜると「おっあいつ速弾きしとるやんけ〜」という印象を与えやすいでしょう。

「速い」の基準はどこなのか

トートロジー的になりますが、速いと判定する基準をどこかしらに設けなければ、速弾きもまた定義されません。♩=70の四分音符でスウィープしても、どうだこれが速弾きだぜと主張するのは

もちろん、速い/遅いの明快な基準などありません。これは完全に私見ですが♩=120の6連符、または♩=180の16分を刻めれば、十分に速いのではと思います。人によってはもう速すぎると判断するかもしれませんし、いやその程度ではまだ遅いという人もいるでしょうが、私の中の基準はこれです。

速弾きはウケる?

これに関しては、2ヶ月ほど前にフォロワーさんにアンケートを取ったことがありました。フォロワーさんの嗜好も私と多少オーバーラップしていますから、バイアスのかかった結果なのは否定できませんが…

n数が少なすぎて統計ガチ勢からは怒られそうですが、できる/できないを別にして、速弾きに興味がある人がなんと8割弱です。ほんとかよ?冒頭で書いたように速弾きはHR/HM系で頻繁に登場するので、むしろ最近の音楽トレンドからは逆行しているようにも感じます。
言葉を選ばずに偏見を言うなら、オタク気質があるギタリストさんは速弾きに興味を示しがちです。あっやめて石投げないでぼくもキモ☆オタクだよ…アニソン・ボカロはテクニカルなフレーズも要所で登場するらしいですし(この辺はあまり聴かないのでよくわかりません)。
ヴァンヘイレンなどの速弾きギターヒーローの台頭からかなりの時間が経過した現在においても、まだ速弾きは一定の支持を集めているようです。

速弾きなんて無理?

一方で残念なことに、速弾きが与える心理的な障壁は、特に初心者ギタリストにとってかなり大きいようです。

確かに初心者の方からすると、テクニカル系ギタリストの左手と右手の動き(特に左手ですかね)は、まるで殺虫剤に抵抗し暴れ回るゴキブリのように俊敏に見える場合もあるでしょうし、実際の譜面があまりに黒黒しいので絶望する場合もあるかと思います。
ですが結局は人間のやる演奏ですから、練習さえ積めばある程度のレベルには絶対に到達できます。まずはスローテンポから、西尾先生がやられているようなシンプルなメジャースケールをオルタネイトで弾いてみたり、エコノミーピッキングで弾いてみたり、あるいはレガートのみで弾いてみたり、ときにはスキッピングも交えてみたり…などなどをすれば両手の運動能力は確実に上がっていきます。私の練習法でよければいくらでも共有しますので、気軽にコンタクトを取ってくだされば幸いです。

これは人間ではありませんので、弾けなくても大丈夫。

別に速弾きできなくても良くね?

しかしながら、ギタリスト全員が速く弾かねばならないとは微塵も思っていませんし、盲目的に速さだけを追いかけるのは練習として不適切です。ぐちゃぐちゃにつぶれてしまった速弾きをするくらいなら、正確な音価とピッチでフレーズを奏でる方がずっと音楽的です。

↑弾けてない定期

↑美しい定期

楽器こそ違いますが、数段テンポの遅いピアノ演奏の方が音楽として完成しているのは明らかです。それでもけっこう速いですけどね。例示として不適切だったか…ともかく、速弾きなんてできねーよ!とムキになってギターを挫折してしまうのは大変に勿体ないですし、できないからといって練習を焦る必要もありません。

私はギターを握っている間は、極力ネガティブなことは考えないようにしています。弾けない自分に苛立ったり、焦ったり…嫌な気分になりながら練習しても技術向上は望めないし、時間も体力も無駄にします。
かといって未来への希望溢れるポジディブモンスターというわけでもないのですが、「20年後に弾けるようになってたらいいなあ」くらいの穏やかなマインドで、日々ギターと向き合っています。

おわりに

何を演奏するにしても、そもそも自分は何を弾きたかったのか、なぜギターを始めたのか、根っこにあるモチベーションが一番大切だと思うのです。私の場合は根っこにハードロックがあるため、それがそのまま現在のスタイルに反映されていますが、別の人にとっては速弾きなんて無用の長物です。いろんな嗜好の人たちが入り混じって日本のギター人口600万が形成されていますから、互いにポジティブなフィードバックができるようなギターコミュニティの一員でありたいものですね。

いろんな人が速弾きの呪縛から解放されるといいなと思いながら書きました。ぼくは永久に呪われていたいですけどね。


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