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従業員数急増加の組織で出会った課題、対策、そして学び

こんにちは、VP of P&C/VPoEの張(@shenyu_cyan)です。水曜日リリースされた小山の記事に続き、従業員数の増加に焦点を当て、ヘンリーが出会った組織課題と取り組んでいる施策をいくつかご紹介したいと思います。


違和感を表明しにくくなる課題

従業員数が増加すると、個々の声が上げにくくなる社会的抑制が働きます。その中で最も危惧しているのは違和感を感じても言い出せないリスクの増加です。違和感こそ課題を早期に発見し、改善サイクルを回す最初の一歩だと言えます。そのため、組織開発室はインバウンドとアウトバウンド、2つの側面から施策を進めてきました。

インバウンド施策

まず最低限担保しなければいけないこととして、相談窓口を社内に設置しました。違和感や嫌なことがありましたら相談しやすいように、厚生労働省のガイドラインに従い窓口の人選とフローの設計を行いました。相談窓口の整備により相談への対応がスムーズになったことは体感できた一方、社内アンケート調査で認知度がまだまだ足りないことがわかり、継続的に周知する必要性がわかりました。
また、過去の記事でも紹介されましたが、「組織開発インボックス」というちょっとした違和感や気づきをオープンに投稿できる場を設けています。従業員の皆さんに信頼して活用してもらえるように、「組織開発インボックス」の運用の持続性を心掛けてきました。具体的には毎週火曜日に1時間のタイムボックスを設け組織開発室のメンバーが一つずつ飛ばさず投稿アイテムを確認してきました。工数の制約からすべての項目を同等に扱うのは難しいですが、対応方針の理由は常にコメントで共有しています。2024年現在61点のインボックスアイテムが上がり、すでに2/3くらいが具体的な改善施策につながったので、ある程度活用されたと考えられます。

アウトバウンド施策

どれだけ声を上げやすい環境を整えても、インバウンド施策だけでは違和感を拾い上げることには限界があります。そのため、組織開発室のメンバーが不定期に1On1を設定し、みんなとコミュニーションを取るようにしました。
さらに、組織状態を把握する仕組みを構築するために、Wevoxのエンゲージメントサーベイを導入し、2月に初めてのサーベイ実施を行いました。働く中で感じている違和感はエンゲージメントのメトリクスへ反映されることは多々あると思いますので、エンゲージメントの数字の元に施策検討を進めていく方針です。それに、エンゲージメントメトリクスは定点観測が大事だと言われているため継続的に観察する運用にしていく想定です。

バックグラウンドの違いによってコミュニケーションエラーが発生しやすくなる課題

従業員の数が多くなってきたことで、組織内の多様性が自然に増加してきました。特にヘンリーの場合、中途入社の方がほとんどで、出身企業の違いは一番印象に残ります。医療機関で勤めていた方もいれば、Webベンチャー出身の方もいます。他にもコンサルティングや金融、官公庁など多種多様なバックグラウンドになっています。こういった背景によりクロスカルチュラルコミュニケーションの障壁をよく実感するようになったため以下の打ち手を講じました。

コミュニケーションの土台を固める

まずベースをしっかりと固めたく、ヘンリーに勤めているすべてのメンバーが気持ちよく働けるように、ヘンリーはDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の促進施策を進めています。去年12月にDE&I Statementを打ち出したほか、定期アンケートの設計や外部講師によるDE&Iの研修を企画しました。土台にあたる部分なので一回やって終わるではなく、継続的に推進することで固めていきたいと考えます。

Henry's Statement

また、ヘンリーはフルリモートに対応し、岡山や新潟など首都圏外に住んでいるメンバーが多くいるため、会社として早期からコミュニケーションガイドラインを用意しています。メンバーの増加により、各例外状態下のコミュニケーションフローや議事録の方針など、これまで暗黙の了解に留まっていた部分がハイコンテクスト化してきました。言語化してガイドラインの改訂を繰り返すことでコミュニケーションの土台担保に努めています。

単純接触のきっかけを担保

従業員の増加によって分業化とチーム分割が必然的に進みます。そうなったときに、集団間のコミュニケーションが重要になってきます。実際に多くのコミュニケーションエラーは誤った前提によって発生するため、単純接触効果によるステレオタイプの低減へ力を入れました。
その中、ヘンリーでは特に各自の価値観と個人特性の相互理解に注目しました。価値観と個人特性は人によって異なり、良し悪しで判断すべきではない一方、言動の元となる重要な要素です。お互いの特性と価値観の違いを認識せずに議論を重ねると対立が起こりやすいと考えられます。特に価値観の違いによる対立は、自分の主張を譲ることが難しく感情的な問題に発展しがちです。よって、相互理解の重要性が高いと判断しました。
ヘンリーは従来よりオフラインの企画にほ取り組んでおり、会の1セッションとしてワークを複数回企画しました。例えば、各メンバーの自己理解と相互理解を深めるために、ヘンリーにジョインされる際StrengthFinderのテストを受けていただき、自己紹介で共有いただくようお願いしています。1月のオフライン会ではその結果を活用し、各自の強みを語り合うワークショップを企画しました。
同期的なワークだけでなく、一般社団法人チームスキル研究所さんが提示している価値観カードを活かし、非同期的なコミュニケーションを可能にしたブレイクアウトセッションも企画してみました。ホワイトボードに35点の価値観を貼り、みなさんにドットシールを使って最も大切にしている5つの価値観を選んでいただきました。また、オフライン会に参加できないメンバーもいますので、FigJam上で同じホワイトボードを再現し、スタンプによる投票を可能にしました。最終的にはオンラインとオフラインの投票結果を集計し、可視化を実現しました。

オンラインホワイトボード

ただ、可視化はあくまで相互理解を促進するためのスタートラインだと理解していますので、今後のコンテンツ企画に有効活用することが大事だと考えています。

知識差起因のハイコンテキストを低減

バックグラウンドの違いは知識差にも繋がります。Aさんが当たり前に使っている言葉はBさんにとって初耳のケースはよく見当たります。その知識差はコミュニケーションギャップに繋がりえるため、ヘンリーでは下記の施策を行ってきました。
まずはヘンリーがいる医療業界と事業にまつわる情報など一定の知識を各メンバーに備えていただきたく、重要なファクトとデータを集めてオンボーディング資料に組み込み、業界理解を促進するための勉強会を継続的に行ってきました。そのほか、みんなに病院の業務フローを理解してもらうためにロールプレイのワークショップが有志によって企画され、オフライン会にて実施しました。
業界知識に加えて、ヘンリーの業務で欠かせないサービスの習熟度も重要な課題として取り上げました。特にNotionとSlackはWeb業界に馴染みの深いツールですが、新入社員の中には未経験者もいます。そのため、SlackとNotionの入門資料を整理し、Notionのハンズオンワークショップを開催しました。しかし、資料の閲覧や一度きりのワークショップだけでは理解しづらい側面があり、より効果的な方法を模索しています(良いアイデアがあればぜひご教習いただきたいです)。

指数的に増加する負担が出てくる課題

前述の通り、従業員数の増加に伴い、分業化とチーム分割が自然と進んでいきます。それはインタラクション数の増加も意味しています。インタラクション数をわかりやすく表現しているのはミーティングの数です。しっかりとしたインタクションの構造を設計していなければ、ミーティングばかりの日が続き、本当にフォーカスしたいタスクに注力しづらくなってしまいます。

同期コミュニケーション負荷を低減

ヘンリーは初期から同期コミュニケーションによる負荷を重要視していたものの、それでも結局一時期ミーティングの数に圧倒され、各メンバーが疲弊してしまう状況に陥ちいてしまいました。そこで10Xさんのノウハウを拝借し、ヘンリーバージョンの会議ビッグバン(会議優先度を深く吟味せず、とりあえず一度まとめて削除する施策)を行いました。最初は「流石に乱暴すぎるかな」と心配しましたが、案外ポジティブな意見を頂き、やって良かったと感じました。

会議ビッグバン施策へのポジティブフィードバック

とはいえ、これは応急処置に近い施策だと受け止めています。中長期的な健全性を保たせるために、ミーティングの内容を俯瞰的にレビューし、参加者と頻度を調整する仕組みの用意は不可欠だと理解し、同期コミュニケーション負荷を低減する更なる施策が必要だと考えています。

ボール受け渡し上の混乱を抑制

指数的に増加する負担として、新入社員のオンボーディングオペレーションはもう一つ顕著なトピックになってます。チームを跨いだ連携が多く発生するオペレーションなので、量が多くなることにつれ混乱がますます生じやすくなり業務効率が指数的に下がります。対策するために、初手としてフローの可視化を行い、各チームが担当する業務及び引き渡しのタイミングをしっかりと表現することで混乱の種を抑えるように努力しました。
ただ、オペレーションフローを可視化するだけでタスクの負荷を軽減できる限界があります。今コーポレートITチームを中心にオペレーションの自動化を進め、より効率的なオンボーディングを目指しています。

学び

もちろん、従業員数の急増に関連する組織課題は、上記のいくつかに限られません。例えば、情報の過負荷が起こりやすかったり、組織のアラインメントが行いにくかったりするイシューが目立つようになっています。多種多様な組織課題に対応し、組織施策を繰り返して来た中、以下の三点の重要性が特に実感できるようになり、これから施策を行う際に心掛け続けたいと考えています。

丁寧に対話して期待値を揃え、施策の認識違いを抑えること

あらゆる施策に言えると思いますが、組織施策に関して期待値揃いは格段に重要だと考えます。わかりやすい一例として、アンケート結果の情報共有スコープが挙げられます。回答者が想定していなかった範囲まで回答結果を共有してしまうと、今後のアンケート調査施策に不信感を抱いてしまい、施策の効果が減ってしまうリスクがあります。一方で、情報を過度に秘匿すると、策定した施策が誤解されたり、理解が得られなかったりする可能性があります。施策側の想定に頼らず対話を通して認識の齟齬を減らすことが重要です。実際に、情報共有範囲のみならず、施策の目的や対策したい課題のスコープなど期待値の認識合わせを丁寧に揃えるべきケースが多々あると実感しています。

やりっぱなしにせず、執行と振り返りを繰り返すことで改善へ繋げること

ヘンリーのバリュー「爆速アウトプット」で強調されているように、幾度ものトライとフィードバックの上にとんでもない成果を作り出すことが重要です。特に組織課題は多角な要因によって構成されることが多く、対応する難易度が非常に高いと考えます。経験学習サイクルを積極的に回すことで施策がますます洗練される上、施策に対する期待値のすり合わせがやりやすくなり、最初の一歩を踏み出す難易度も一段下がると感じます。

積極的に巻き込み、組織施策の民主化を実践すること

前述の通り組織課題はとても難しく、抽象化と構造化力だけでなく、実体験によるノウハウはより役に立つと考えます。よってLayerXの福島さんが言及したように、「1人の天才の思考よりも100人の自律した思考が勝る」と感じるケースが度々出てきます。施策の検討と推進を一部のメンバーに限定せず、社内外ノウハウのエッセンスを取り入れ、みんなの力を積極的に活かせば、課題の解きやすさも実行の速度も良くなると感じています。

終わりに

これから事業と組織がさらに成長するのでもっと多くの組織課題が出てくるでしょう。都度都度出てくる課題を適切にカテゴライズし、優先順位をしっかりと吟味した上で効果的な打ち手を講じることが大事だと考えますので、厭わず対応していける組織精神を目指すべきだと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この文章が皆様の組織作りに少しでも役立つことを願っています。また、組織づくりやヘンリーの事業に興味を持っていただいた方は、どうぞお気軽にご連絡ください 🥰

* rawpixel.com写真を表紙として利用しております。