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アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 Pixivで公開してきた小説以外の文章を、
 noteに移して行きます。

(文字数:約800文字)


  ドキュメント72時間inキューバ

  『老人と海』
    1952年 アーネスト・ヘミングウェイ
    昭和41年発行 平成27年118刷 
    福田恆存訳  新潮社文庫

あらすじ:
  不漁続きのサンチャゴは、
  頼りにしていた少年も、
  少年の親の反対で伴えなくなり、
  一人だけで沖へ出る。

  掛かったカジキマグロは、
  サンチャゴが乗った小舟の長さも、
  優に越える大きさで、
  マグロが泳ぐに任せて海原を進むしかない。


『異邦人』の次、
という事で、
ノーベル賞作家の名作だけれども、
実は読んだ事ありませんつながり。

その世界観を書き表すに当たって過不足無い文章、
そこにシビレる憧れる。

私の好きなペーソス要素もふんだんだ。
臭いがキツくて漁師仲間すら誰も飲もうとしない鮫の肝油を、
毎朝ヒシャクに一杯汲んで飲んでいるから、
年を取っても目は健康だ、
なんて細部の描写が味わい深い。

基本的に読書は一文、一場面が、
心に残れば充分だと思っていて、
今回気に入った一文は、
掛かったマグロに向けての老人の独白。

(……)あれ一匹で、ずいぶん大勢の人間が腹を肥やせるものなあ、とかれは思う。けれど、その人間たちにあいつを食う値打ちがあるだろうか?あるものか。もちろん、そんな値打ちはありゃしない。あの堂々としたふるまい、あの威厳、あいつを食う値打ちのある人間なんて、ひとりだっているものか。

気に入った一場面は、
三日後にようやくマグロを仕留めた直後の情景描写。

一面の赤と青と銀色と、斜めに突き立った太い銛。

この景色を美しく思わずして何に対して思うべきか。
しかしながらこの感慨に至るのも、
私が海のそばで育ったからだ。

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