【短編小説集vol,12】鎌倉千一夜〜鶴を折る女(ひと)
第59夜 母娘托生「 今年の花は大きい気がする」
母と鶴岡八幡宮まで朝の散歩をするのが日課になって何年になるだろう。朝5時に二の鳥居で落ち合って段葛をゆっくり歩いて八幡宮を目指す。源氏池の島にある旗上弁財天への太鼓橋上から蓮を眺めるのが母のお気に入りだ。かつては源氏池には白の、参道を挟んだ平家池には赤の蓮の花が咲いていたそうだ。何もそんな血生臭い演出をしなくてもいいのにと思うが、天下双璧の両者には和のゆとりなどなかったのだろう。
「ひなちゃん、この大きな花もお昼になると閉じて