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読みきり(現代)短編小説

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短編小説をピックアップしてみましたよ(。•ㅅ•。) シリーズもの時代小説よりは、ずっと短い文章なので、10分くらいで読めます。
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『謎のマスク男』

『謎のマスク男』

 ふるびた劇場のビロードの椅子に腰をかけると、私は手元に残ったチケットをまじまじとみた。先ほど入口で半券をちぎられた、紙のギザギザになった断面を指でなぞってみたりもして。
 一夜限りのミステリー。
 チケットには、「この劇は一度きりしか上演できません。みなさまおまちがえなく」とちいさく説明文が書かれてあり、その血のにじんだような字体が恐怖感をあたえる。
 
 ひさしぶりの演劇鑑賞。胸にときめきをお

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追憶(ついおく)

追憶(ついおく)

 私は大型のショッピングモールにきている。
買い物が目的ではない。この場所が、自分の中で、毎日の散歩コースになっているからだ。
 妻と死に別れて、早や10年。私は今年、78歳になる。
 
 ここは、衛生的(えいせいてき)で綺麗なトイレがたくさんあってよい。公園よりもショッピングモールの方が、散歩コースとして私に合っている理由をあげれば、この点が1番であろう。
2番目には、飲食店に入

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人魚柄の鯉

人魚柄の鯉

 とある寺の庭を散策していると、ひどく老け込んだ尼さんに出くわした。
 
 ここは観光ガイド本にも紹介されていない、どうということもない普通のさびれた寺のようだ。私も、たまたま道に迷ってきてしまっただけで、べつに用事もなければ、とくに関心があったわけでもない。
 なにも期待しないで門をくぐってみたところ、きれいな鬼灯(ほおずき)の実がなっているのに気がついた。だから、そのまま、ふらふらっと、その鬼

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闇のドラッグ市場

闇のドラッグ市場

 これは私が昨夜みた夢のお話しです。

 鼻づまり解消のため、サトウ製薬の「ナザール スプレー」が手放せない私。
 とくに夜寝るときには、絶対にかかしたくはない。
両方の鼻がつまっていると、口呼吸になってしまう。それだと、喉がカラカラに乾いてしまうし、途中で起きてしまって睡眠も浅くなるばかりだ。
 睡眠薬や安定剤を飲んで眠る私は、どうしても、安眠のためにはうるさくなってしまう。
 うつ病というの

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