へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオ…

へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオンライン文芸コミニティ「星々」の運営に参加。一杯の珈琲のようなお話が目標。

マガジン

  • ショートショートnote参加集 WEEKS

    たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」への参加作を集めています。お題に従った410文字。週替わりの一杯どどうぞ。

  • ただの日記

    キラキラでもハラハラでもない、ねこの中の人のただの日記。

  • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099

    水上洋甫さんの朗読による画像付きショートショート集です。ショートショートのお砂場。こんなんできるんだなあ、というのが作れたら、いいのに、なあ。

  • エッセイ集 へいたのはなし

    エッセイ集です。ここに書いていることだけは本当の話です。おそらく、多分、だいたいは。

  • ショートショート集 ARRANGED

    パスティーシュ集です。日本古典と近現代文学が主です。ミルクコーヒーにロシアンコーヒー、アイリッシュコーヒーもいいですね。アレンジ作品がお気に召したらどうか原作をご覧ください。ベースが良いからこそのアレンジです。(台無しにしないように気をつけますね!)

最近の記事

  • 固定された記事

ショートショート(と、朗読)  星と大金持ち【SAND BOX 1099】

ー「語り合う友にはならんか」ー  大金持ちがいました。摩天楼のてっぺんに住んでいて、寝る前にいつも街を見下ろします。宝石を散りばめたような夜景です。ため息をついて言いました。 「あの灯のどこにも、私が語り合える友人はいない」  孤児から成り上がった大金持ちには商売敵がたくさんいました。ひとりぼっちの部屋を見回すと、高価な美術品が所狭しと飾ってあります。 「語り合う友にはならんか」  壁にかかった絵をなでました。外国の貴族が描かれた肖像画です。大金持ちの方を見て、微笑んでいる

    • ショートショート ビンゴゲーム

       木枯らしが吹いて肩を縮めた。久しぶりに訪れた公園は遊ぶ子供もなく、古い遊具のペンキがはげかかっていた。  ちょうど十年前の午後だ。競馬でひどく負けた日だった。財布にはかろうじて小銭が残っているだけだったが、帰り道にコンビニで酒を買った。家まで辛抱できる心境でもなく、道沿いの公園のベンチに座った。蓋を開けて、あおる。音を立てて風が吹いた。公園の砂が舞い上がって、思わず目を閉じた。 「やあ」 まぶたを開ける前に声がした。左の耳のすぐそばだ。目を開けて、声の方を向くと同じベ

      • ショートショート 真夜中万華鏡

         坂本の爺さんは飲兵衛でな。真昼間から酒くらっては、道端で寝っ転がってた。村の人から咎められはしなくてな、酔っぱらいの割には悪さはしねえし、何よりたまに面白えことを言うんだ。  ある日、爺さんがビールをひと瓶平らげちゃって、意地汚いもんだから、残ってねえもんかとひっくり返して眺めててな。すると、この辺じゃちょっと見ないくらいの身なりのいい紳士が爺さんに尋ねたんだと。 「何か見えるんですか?」  爺さん、罰が悪くて苦笑いだ。苦し紛れに瓶をくるくる回してみせた。 「瓶じゃねえ

        • ショートショート 放課後ランプ

           授業が終わった後の学校は真っ暗闇だ。僕みたいな陰気な人間にとっては。  帰りの会が終わると同時に鞄の中に教科書をしまう。目立たないようにするのが肝心だ。教室には恐ろしい生き物がうじゃうじゃしている。  シアイニムケテレンシューシヨーゼ。汗臭い野獣ども。カラオケバイトゲームナニスル。ピイピイうるさい鳥たち。ナヤミガアッタラショクインシツニオイデーナ。担任。一番厄介な妖怪。  鞄を抱えて席を立った。机と机の間を身を細めて抜ける。授業が終わった教室は無法地帯だ。安全な場所など

        • 固定された記事

        ショートショート(と、朗読)  星と大金持ち【SAND BOX 1099】

        マガジン

        • ショートショートnote参加集 WEEKS
          201本
        • ただの日記
          16本
        • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099
          29本
        • エッセイ集 へいたのはなし
          105本
        • ショートショート集 ARRANGED
          16本
        • 【クリスマスまでの25のおはなし】赤い炎とカタリのこびと
          25本

        記事

          ただの日記 #32 (2024.04.28〜2024.04.27)

          お子さんへの手紙をAIに書かせる上司のいるねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年04月28日(日)  スーツケースに(旧)制服を入れてクリーニングを出しに行く。家の近くのクリーニング店が平日の昼しかやっていないためである。  クリーニング店は随分減ったと思う。以前近くのスーパーの中にあった店ももうない。自分で洗えるものが増えたからだろうな。  旅行に行くわけでもないのにスーツケースを引いて歩くのが恥ずかしく、また車輪が大きな音でなるのが恥ずかしい。住

          ただの日記 #32 (2024.04.28〜2024.04.27)

          エッセイ お客さまは厳しくて、意外と優しい(#仕事のコツ)

           春に会社でちょっとした異動があり、席が変わらないまま立場が変わった。  やっていることは変わらないし、むしろ雑務が増える傾向にはあるものの、移った職位に見合うようにと、自分なりにではあるが色々とジタバタしている。  数年どころか数十年同じ会社にいるのに、まだ学んでいかないといけないことがあるのは有り難いような、情けないような、複雑な気持ちがする。「長く続けることに価値がある」などと言う気は毛頭ないが、最近になって分かるようになってきたことがいくつかある。単に理解力が遅くて

          エッセイ お客さまは厳しくて、意外と優しい(#仕事のコツ)

          北極日記 野良のぼり(#シロクマ文芸部)

           子供の日、というのはすっかり大人になってしまった今では縁がないが、せっかくなのでちまきぐらいは食べておきたい。中華ちまきではない。葉っぱに包まれた白いやつだ。あの、うすら甘いもちもちした甘味を存分に味わえるのは年に一度、子供の日くらいにしかないのではないだろうか。  おもち原理主義とでも言おうか、小さい頃から餅好きのあまり他の和菓子に厳しい子供だった。牛皮はお餅の偽物、くらいには思っていた。不必要にびよびよと伸びる牛皮菓子に冷ややかな視線を浴びせてきたが、不思議とちまきだ

          北極日記 野良のぼり(#シロクマ文芸部)

          エッセイ 水深二尋【ねこの悪だくみ2024年5月】

           毎月、月初めに計画などを書いています。  達成できたりできなかったりします。悪しからず。  6月に文学フリマ岩手に参加します。有給もちゃんと取得済みです。  今年は何を見て、何を食べようかな……とか、観光計画を立てる前に、本を作ろうと思います。「面白すぎないおとぎ話」のその2です。  去年作った本にはいくつかの反省点があります。いちばんの反省点は余白が異常に少ないことだと思う。本を印刷するのが初めてなのに、自分でレイアウトをしたせいですが、やっぱり今年も自分でやろうと思

          エッセイ 水深二尋【ねこの悪だくみ2024年5月】

          ショートショート ラムネ炭酸寝顔

          「#ラムネ炭酸寝顔」で検索すると、あたしの寝起きの動画も出てくる。弟が撮ってあげたやつ。あれはまじ最悪だった。考えてもみてよ。寝てるところにいきなりソーダの噴水ぶち込まれるの。目に染みるわ鼻に入るわ、おまけに寝巻きはべちゃべちゃになるわ。コーラじゃなかったのはせめてもの救い。黒いシミまでできてたらたまったもんじゃない。「色付きじゃないのは優しさだよ」って弟が得意げに言うもんだからあったまきちゃって、あたし、ソーダでびちゃびちゃの枕投げつけてやった。弟、慌ててスマホ庇ってさ、代

          ショートショート ラムネ炭酸寝顔

          ショートショート トラネキサム酸笑顔

           カメラマンの宝さんはため息をついた。こいつは厄介だ。肩掛け鞄の紐を掛け直す。「こっち向いて笑って」もう一度呼びかけた。 「ああ。はい」  ようやく椅子に座った老院長が顔を上げる。口がぼんやり開いていた。 「写真撮ります。チーズ!」  カメラを構える宝さんに院長の眉毛が動く。 「チーズは、控えめに。若い人ならいいがあんたみたいな中年は何でもかんでも食えばいいってもんじゃない」 「すいません」  看護師が宝さんに謝った。開業30周年の記念写真をと宝さんを呼んだのは院長の方な

          ショートショート トラネキサム酸笑顔

          ただの日記 #31 (2024.04.21〜2024.04.27)

          アイスクリームが欲しいとスクリームしがちなねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年04月21日(日)  来月に県内で古典籍のお祭りがあるのでワークショップの予約をとる。大学の頃から知っていたが、当時は実家からの往復が難しく、社会人になりたての頃は休日そこまで行くのが体力的に厳しかった。(名古屋に買い物に行くだけで発熱した)行けるようになるまでに随分かかったなあと思う。これからは体力が右肩上がり、という年齢でもなくなるだろうから、今行っておこうと思うし、

          ただの日記 #31 (2024.04.21〜2024.04.27)

          ショートショート(と、朗読)  行列のできるリモコン【SAND BOX 1099】

          ーいいぞ。もっと伸びろ。ー  インターネット配信を観るためのリモコンのはずだった。けれど届いたのは思っていたものと随分違う。『行列のできるリモコン』。パッケージにはそう書いてあった。『大人気』ってことだろうか。  誤配送ということで返せばよかったのだけれど、なぜか興味が湧いた。封を開ける。棒状の装置に『10分』『30分』『1時間』とボタンがあった。タイマーだろうか。電池を入れてテレビに向けてみる。変わった様子はない。何度も押してみた。  ふと、窓の外を見た。家の向かいの

          ショートショート(と、朗読)  行列のできるリモコン【SAND BOX 1099】

          嘘日記 あかつきの夢(#シロクマ文芸部)

           春の夢を彷徨うような早朝の散歩は踏みしめる道さえふわふわとしてどこか捉えどころがない。赤紫色と水色が混ざった空を吸い込んで酔っ払ったような気持ちになった私は千鳥足で神社に向かう。子供の頃から通う、馴染みの場所だ。  左右対称に反り返った瓦屋根の下に紅白の紐が垂れている。ポケットいっぱいの五円玉を鷲掴みにして賽銭箱に放り投げると黄金色に光ってシャランシャランと澄んだ音をたてた。  賽銭箱の横には、極彩色の龍がとぐろを巻いている。去年の年末に地区の老人会が制作したものらしい。

          嘘日記 あかつきの夢(#シロクマ文芸部)

          エッセイ ねこのひと、行きまーす(ネコ戦記2024年4月)

           毎月、月末あたりにその月の公募活動などをあけすけに書いています。なんてあけすけな! 恥を知れ!  ええわたくし、産まれて初めてガンプラというものを作りました。小学生の頃からなんとなく存在は知っていたものの、近くのプラモデルやさんには目ぼしいものが置いておらず(かつガンダムの知識もなく)棚の目立つところにあった彦根城やら大阪城やらを買い求めては黙々と作っていました。最近機会があって購入し、組み立ててみると球体関節でもりもり動くし、いろんなポーズで自立する。これは素敵なおもち

          エッセイ ねこのひと、行きまーす(ネコ戦記2024年4月)

          ショートショート 雪解けアルペジオ

          「卒業か」 松本吹奏楽部長が部室でつぶやいた。外には暖かい日が差している。 「合奏、してみたかったなあ」 『ラッパ部長』 陰でそう呼ばれているらしい。部とは名ばかり。先輩たちの卒業後、部員は自分一人だけだ。とはいえトランペットを『ラッパ』などと乱暴な言葉で呼ぶのはやめて欲しい。 授業後毎日ここで練習をした。夏休みの炎天下も冬休みの氷点下も問題にはならなかった。「帰れ松本」何度先生に言われたことか。 ポー。 聞き覚えのある音がした。少し濁ってるなと部長は思った。 パー。

          ショートショート 雪解けアルペジオ

          ショートショート 春ギター

           カッコカリは宇宙人だ。地球にスパイに来ているらしい。一郎(仮)、ルーシー(仮)。連絡するたびに名前が違う。面倒なので(仮)と呼んでいる。  (仮)は地球の文化に興味がある。スパイだから。あと写真が好きだ。中身は海外の人なんだろう。去年SNSで知り合って、不自然な日本語で妙なことばかり呟いて面白いからメル友になった。  今日は公園の桜の写真を送ってやった。 「桜咲いたよ! 春キター!って感じ」 「スゴク良い!欲しい!」 即レス。相変わらずちょっと変だ。  夜に通知がなっ

          ショートショート 春ギター