最遅本命発表~スプリンターズS編~

三浦皇成という男がいる。

1989年12月19日生まれ、31歳。


2008年に騎手としてデビューを果たし、デビューから5か月にして重賞初勝利。
更に勢いは留まることを知らず、武豊の持つ新人年間最多勝記録を更新し、一躍時の人に。

2011年にはタレントのほしのあきとの入籍を発表し、正に公私共に順風満帆。
世間的な知名度も上昇し、三浦大輔、三浦カズの二大巨頭に迫る三浦界のスターへと成り上がりを果たした。

記憶に新しい所で言えば、2021年8月22日の騎乗でJRA史上44人目となる通産10000回騎乗を達成。
10000回に及び真剣勝負の場に立った事実は偉業に他ならない。

参考までに、NPBにおける生涯通算打席数ランキング上位十傑を紹介させて頂く。


1
野村 克也 11970打席
2
王 貞治   11866打席
3
張本 勲  11122打席
4
衣笠 祥雄 10634打席
5
金本 知憲 10431打席
6
谷繁 元信 10336打席
7
門田 博光 10304打席
8
福本 豊  10130打席
9
立浪 和義 10033打席
10
石井 琢朗 9967打席


ご覧の通り、生涯通算打席数が10000打席を越えているのはわずか9人のみ。
仮に三浦皇成がプロ野球の道に進んでいた場合は名球会入りを果たす大打者となっていたことは自明の理だ。

しかし、そんな大打者三浦皇成を語る際に絶対に付きまとう不名誉な記録がある。

【G1未勝利】

そう、これだけの偉大な名手三浦皇成のキャリアにおける唯一の不名誉な記録である。

大舞台でこの騎手を買いにくいと考えているファンも多いだろう。

正直に言えば、私がそうだ。

G1の三浦を買うぐらいなら、転売屋からPS5を買うことも辞さないぐらいだ。


…だが。

スプリンターズSが開催される2021年10月3日。
この日の星読みをしてみると、明らかに射手座・男性の運命を強く守護する並びとなっていた。

星とはすなわち運命の羅針盤である。
星の声を聴いた私は、このレースにただならぬ波乱の未来を感じたのだ。


全ての物事には、必ずやいつか終わりが訪れる。
そう、彼が持つG1未勝利という記録もまた、永遠ではないのだ。

第一、彼には守るべき最愛の妻と子がいる。
守るべき誰かを持つ者とそうでない者とでは、重要な局面において発揮される底力に必ずや差が生まれるものだ。

私がまだ学生だった頃のことだ。

奇しくも三浦騎手と同じ名を持つ「コーセイ」というクラスメイトがいた。

詳細を語る手間を省かせて頂くと、コーセイはデブだった。

言葉が悪いことは自覚しているが、遺伝や先天的な体質を愚弄する「チビ」や「ハゲ」に比べると、確実に本人の不摂生が少なからず関与している「デブ」という言葉は悪口界においては合法寄りのフレーズだと誰かが言っていた。

コーセイは何かと不良達に絡まれ、いじめられていた。
いじめに加担する程の悪人ではないものの、いじめを止めることができる程の勇気を持たない自分が、かつては嫌いだった。

どれだけ馬鹿にされようとも何も言い返そうとはしないコーセイを見て内心、

「男なら少しぐらいやり返せよ…」

と煮え切らない想いを抱いていたことも事実だ。


だが、ある日私はコーセイの中に宿る熱い闘志を知ることになる。


いつもコーセイをいじめていた不良達が、クラスの美女アキちゃんに絡み始めた時のことだ。

嫌がるアキちゃんを尻目に、下品な下ネタで絡み続ける不良達に対し、突如として立ち上がったコーセイは一言、

「そういうのダセエからやめろよ!!」

静まり返る教室。

コーセイの檄を皮切りに、周囲の女子たちからも不良達を揶揄する声が上がり、かくしてアキちゃんは無事に救われることとなったのだ。

そう、コーセイは人知れずずっと長い間、アキちゃんに恋心を抱いていたのだ。


この時、私は知った。
たとえどんなに日ごろはぜい弱な者であろうとも、守るべき大切な誰かができた時に、人は最も強くなれるのだと。

あんなにもさえない男であったコーセイが、この時は本気で輝いて見えた。
いつか自分もこんな男になりたいとさえ思えた程に。

余談ではあるが、上記の出来事の数日後、私はアキちゃんに告白されて交際を始めた。


本レースの予想をしている際に、自然と私はコーセイのことを思い出していた。
そして、出馬表に並ぶ皇成に、あの時コーセイから感じた本当の闘志を感じたのだ。

その背に三浦皇成を乗せ、いざ大舞台へと臨むはタイセイビジョン。

実を言えば、前走のセントウルSでも筆者はこの馬に注目していた。

当レースの堅軸にピクシーナイトを挙げる人を指名していたファンは多かったが、CBC賞を目安にすると、

両者のタイム差は0.2秒。(タイセイビジョン最後の直線不利有り)

斤量は
ピクシーナイト53
タイセイビジョン57

これがセントウルSでは
ピクシーナイト54
タイセイビジョン56

4キロ差から2キロ差へ。

展開一つで十分に逆転が可能であると判断しこの馬を狙ったが、出遅れもあり勝負は不発に終わってしまった。


が、あの時と今回では大きな差がある。


【鞍上:三浦皇成】


G1に関して不名誉な記録を持つ、彼にこそ私は期待したい。


彼には、守るべき大切な人がいる。


彼には、勝たなくてはならない理由がある。


穴党をもってしても、今回のスプリンターズSは堅い決着を予想するファンも多い。

だが、本当にそうだろうか。

勝負に絶対はない。

この世界にもしも絶対と呼べるものがあるとしたら、それは「必ず最後に愛は勝つ」という法則なのではないだろうか。


「三浦にG1は取れない」


彼を嘲笑する全国の競馬ファン達よ。

どうかその目を見開き、衝撃の結末を見逃すべからず。

その目に焼き付けろ、愛する者を守ろうとする男の意地を。

そして知るのだ、愛に勝る力は無いのだと。



…ここまで前置きが長くなってしまったが、最後に筆者の本命馬を発表させて頂き、この記事の結びとする。

2021年10月3日、中山競馬場にて行われるスプリンターズS。

筆者の本命馬はレシステンシアとさせて頂く。

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