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好きな「つまらないラジオ番組」

好んで聴いている"つまらないラジオ番組"がある。
それは40過ぎくらいのコンビの芸人さんと若い女性のアシスタントによるローカル局のもので、毎週ある曜日に2時間生放送をしている。
もう何年か続いており、そこそこの人気番組ではあるのだと思う。

まず、その芸人さん自体の"つまらなさ"がある。
私は極力、特に芸人さんに対してつまらないという表現は避けるようにしており、それはきっと自身がその面白さを"わからない"だけなのだろうと、そういう、ある種キチンとわきまえた、遠慮の意識を持っている。
しかし、その奥ゆかしい私でさえも、つまらないと堂々と言えてしまう、つまらなさである。
ただ、ネタなどは知らないし、他の場面においては違う特性を発揮するのかもしれないが、とりあえずこのラジオにおいては、そうである。
加えて、アシスタントの若い女性も、彼らのセンスとノリを尊重して、そこに乗っかるため、つまらないのハーモニーが生まれる。

そして、これを好んで聴いているわけだが、決して「つまんねー」とバカにして、歪んだマウントを取っているわけではなく、言うなれば、心地良いのである。
喫茶店などで、隣の会話が聞こえる、聞いている感覚に近いような気がする。
若かりし頃の大竹まことが喫茶店にいた際、後ろの席の人の会話が異常に面白く、実はそれが無名時代のビートたけしだった、との話を聞いたことがあるが、ちょうどその逆である。
一般人の一般的な会話といった感じで、ひとつ違うのは、内輪ノリとかではないということ。
あくまでこちら側を意識して"おもしろ"を狙った上での"つまらな"である。
その業界にいるのに、芸能人の情報や豆知識的なもの、あるいは結構知られているようなちょっとした雑学などにも疎い感じが、その一般具合に拍車をかけ、良い仕上がりとなっている。
また、これを素直に面白いという感覚のリスナーのメールやハガキにより、各コーナーが彩られており、抜かりなく、盤石である。

そして私はこのラジオ番組を主に、"寝る時"に流している。

普通に会話をしているのを盗み聞きするようなコンセプトの番組も幾つか存在するが、それなりに中身が濃く、考えさせられるものだったりして、最低限の頭は働いてしまう。
しかし、この番組は、全くもって私の食指を動かさない、聞いても聞かなくても何も損することはないとの安心感により、ダダ流しすることができる。

これとは反対に、素直に面白いから聴いている「又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間」という、大好きなラジオ番組がある。
その中で、パンサーの向井がラジオ好きで、何時でも、寝る時も聴いているとの話になった。
それだと寝られないのではないか?との問いに対し、
「寝る時はつまらない番組を聴いているから大丈夫」
といったような返答をしていた。
慌てて「いやっ、つまらないというか…」とフォローしていたが、言わんとしていることはわかる。

向井にとってのそれは、どういった番組か分かりかねるが、私のそれはその"つまらない番組"である。

ところで、"向井"と敬称略しているが、今どきはこういった場でも、割と近しい感じで"向井さん"とする風潮にあるようにも思う。
しかし、やはり私にとって芸能人は関わることのないスター、雲上人みたいな感覚があるため、タモリ・たけし・さんま同様の、向井である。
タモリはタモさんと言ったりもするか。

昔、姉がタレントの野沢直子と縁あったことがあり、そんな時期の何かの会話の際に「直子さんが〜」と言ったのを聞いた刹那、自身の中で何かを取り締まる警察心が発動したことを、ふと、思い出す。

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