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Ami Ⅱ 最終章①-別れ

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ビンカとの別れの時については、僕にとってとても個人的な悲しいものであり、それゆえ、詳細を述べることは避けたいと思います。
どうかご理解ください。
愛の価値を理解している人々、魂がそれほど変形していない人々だけが、僕たちの本を読んでくれれば構わないのです。
しかし、いつ、どの世界にもいる「テリ」が、物陰に潜んで、都合の悪い時間に目を覚まし、善良で平和な地球外生命体の存在の可能性も、より良い世界のために働こうという意図も、普遍の真理も、すべてを笑い飛ばすかも知れません。
『愛が宇宙の根本的な法則である』なんて言えば、彼らは笑い転げるでしょう。
だから、真実や感情といった深い話はしないほうがいいのです。
ビクトルの本で読んだ中国の古い格言にもありました。
僕の記憶によると、
『ひねくれた魂を持つ人が愛について語る時、声を上げて笑います。
彼は真の愛を知らないのです。』

というような内容だったと思います。
ビンカが去って、僕は寂しくなりましたが、夜、眠る前に目を閉じて心を落ち着かせると、数分後には、彼女が僕の中に、あるいは僕が彼女の中に入り込んでいるような気がするのです。
まあ、無知な愚か者だと思われるでしょうが。。。
地球に戻る間、アミは僕に過去の映像を見せようとしました。
動くイエス、ジュリアス・シーザー、マイケル・ジャクソン、その他は覚えていません。
彼は、僕が赤ん坊だった頃の写真も見せて、僕の興味を引こうとさえしましたが、何の興味も持てませんでした。
僕は、瞑想室に閉じこもり、アミが迎えに来るまでそこで静かに過ごしました。
僕たちは、地球が滅亡した場合に、救出された人たちを収容するために準備されている世界に到着したのです。
「一緒に見ましょう。」
僕は、好奇心というより、礼儀として見に行ったのです。
海岸沿いの町の浜辺に立っていました。
夜明けでした。
「ここは地球だよね!」
僕は、理解できないまま、ぼんやりと叫んだのです。
「確かに、ここは、生存者が住むことになる惑星です。」
「でも......別世界だと思ってたよ。」
「ここが、もうひとつの世界、平和と正義と愛の世界となるのです。
もし破壊されるような出来事が起きても、完全に滅亡されるのを防ぎ、大きな悲劇が起きる前に、それに値する人々を救い出します。
そして、地球上のあらゆる汚染や不純物を浄化していくのです。
そして、救出した人たちをここに定住させ、良質の世界を築けるように準備しています。
もちろん、破壊することなく実現することが望ましいのですが。」
「別の惑星を用意していると言ってたよね......。」
「別の惑星とは言ってません。
私は、ある世界のことを話しましたが、その名前は言いませんでした。
ここがそうなのです。
あなたが見た地質学的な作業も、私たちが行っている準備の一部です。
精神性を高めるのです。
そうすれば、地球が完全に破壊されることはないのですから。」
それでも、僕には、喜びも悲しみもなく、ビンカのことだけを考えていました。
アミは、僕の気分を良くするために楽しい会話を続けてくれたのです。
「じゃあ、次の旅行でその写真を見せてあげましょう。
おむつ姿のペドロなんてどうですか!
ビンカがどんな風に喜ぶか想像できますか?」
中々気分が変えられない事を彼に謝ると、彼は、「役に立たない無駄な悪ふざけだと、すぐに立ち直れる、でも僕のことは理解している」と言ってくれました。
ドアが開くと、黄色い光が現れました。
僕たちは強く抱き合い、別れを告げ、海辺に連れて行ってくれるであろう光に身を任せたのです。
「さようならではなく、また会いましょう。」
と、励ますようなアミの声を聞きながら降りていきました。
前回同様、砂浜にたどり着き、上を見上げると、空には何もありません。
UFOは見えませんでした。
その瞬間、ビクトルのテントで大騒動が起きたのです。
「いったい何が起こってるんだ!!ああ!」
彼が、乱暴に入口から現れ、逃げようとしていました。
少しして、彼が立ち止まったところで、僕は一気に現実に引き戻されたのです。
「ビクトル、どうしたの?」
「ペドロ、これは大変だ......。
そこに巨大な…がいるんだ。」
彼が、頭を搔きながら言いました。
「ビクトル、何がいるの?」
「象だ。」
「えっ、象?!
ありえない、あの小さなテントの中で?」
「でも、そこそこ大きい象なんだよ。」
突然、その大きな前足が僕の胸に触れて、僕は目を覚ましたのです。
幸いなことに、なんとか逃げ出すことができましたが......。
アミが、遠くから催眠術を使ってビクトルと遊び、僕を悲しみから解放してくれたのだと理解しました。
彼は一応、成功しました。
僕は、意を決してテントに向かおうとすると、ビクトルが「注意しろ、やめろ!」と言うのです。
そして、僕が入口のひだを持ち上げると、テントの中は空っぽでした。
「見てよ、何もいないじゃない。」
「で、でも。。。」
従兄弟は困惑していました。
「君は夢を見ていたんだよ。」
そして、ガスコンロに火を入れ、朝食の準備を始めました。
「なんかおかしいね。何がそんなに悲しいの?」
と、彼は僕の気分を察して尋ねてきました。
その時、僕はこの問題を永遠に封印する方法を思いついたのです。
「岩を見に行ったんだ...。」
「いつ?」
「君が目を覚ます前に。
僕、テントの外にいたでしょ。
岩から戻ってきてたんだ。」
「君は不従順な男だな。 さて、それで?」
「どうして、僕が悲しいと思ったの?」
彼の好きなように考えればいい。
僕はもはや、アミの存在について誰かを説得する必要はなく、これからは自分の信念と、何よりもビンカへの愛があれば充分だと思ったのです。
「見たか?やっぱり夢だったんだよ。」
「ビクトルが見た象のように?」
「そうだよ。その通りだ!」
現実のような夢もありますが、それはあくまでも夢なのです。
空想と現実を混同するのは止めときましょう。


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