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AmiⅡ 第17章-船上の反乱①        

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アミの両親と愛情のこもった別れを告げ、どこか知らない場所に出航することになりました。
すると、光は1秒30万キロメートルで進むことを思い出し、その船の速度を知りたくなったのです。
「オフィルは、地球からどのくらい離れているの?」
「約800億キロメートルです。」
速度を計算する公式を思い出そうとしたのです。
その旅に費やした時間は10分ほどだったので…。
ですが、その大きな数字に頭がこんがらがってしまいました。
「私たちの移動速度を計算しようとしているなら、時間の無駄です。
私たちは瞬時に『配置』しているのですから。
すでに説明したとおりです。」
「でも、たとえ数分でも、ある場所から別の場所に移動するのには、時間がかかってるよね。
どうして、まったく時間がかかってないかのように言うの?」と聞くと、
「そんなことは言ってません。」
とアミは陽気に答えました。
「その時間を使って、この船のメカニズムが距離や行きたい地点の位置、『無空間・無時間』の次元から抜け出すための最適な方法を計算し、目的の場所に現れるのです。
もちろん、エアロリス(神秘的な大きな氷のブロックの落下)の軌道に乗らないように注意していますがね。
メリーゴーランドを降りて、反対側の馬のところに行くようなものです。
来るのを待って乗るのです。
しかし、これはさらに高速です。」
ビンカはあまり興味を示さないまま、
「アミ、これからどこに連れてってくれるの?」と尋ねました。
「あなたの家へ、キアへです。」
「直ぐに着いてしまうのね。」
と彼女が驚いて言いました。
僕は、胃袋に重みを感じ、まるで絞首台や死刑台にいるような気分でした。運命の時が目の前なのです。
数分後には、こんなにも温かい仲間を失ってしまう...。
まるで、自分の腕を切り落とされるより嫌な気分でした。
ずっと寒さを感じていたのに、突然、暖炉のある家に招かれて、カップに入ったホットチョコレートを飲んで、その状況を楽しみ始めたらアウト!
と言われた人のような感じです。
僕は、それを受け入れないつもりでした。
「ビンカがキアに残るなら、僕も残る。」
僕は、彼女と離れたくないという強い意志を持って、言いました。
すると、アミは、僕の勇敢な言葉に微笑み、父性的な口調でこう言ったのです。
「ペドロ、ビンカ、分離されることに慣れなければいけません。
人生は、自分が望む表面的なものではなく、宇宙と完全に調和している本当の自分として、生きるものなのです。」
「僕の中には、たった一人の僕しかいないよ。」
僕は、反抗的に言いました。
「君に言われたからと言って、ビンカと別れるつもりはないよ。
君は、異世界の宇宙船のパイロットかもしれないけど、僕は男の子なんだから、自分の人生は自分で決めるんだ。
ビンカと一緒にいるんだよ。
そして、もし、僕がキアに留まれないのなら、彼女は僕と一緒に地球に来るんだよ。
そうだよね、ビンカ?」
「そうよ、ペドロ!
これが、私達の決断なのよ。
私たちは、一緒に進むの。
アミは、私たちを止めることはできないわ。」
と、ビンカが、激しく同意してくれました。
アミは、大きな穏やかな目で口元に笑みを浮かべ、僕たちを見て言いました。
「テリは、キアにだけ、いると思ってましたが。。。」
その言葉で、僕たちは、自分たちがテリと同じようなことをしている、とすぐに気づいたのでした。
そんなのあり得ない。
緊張を解して、恥ずかしそうに床を見てから、すぐに顔を上げました。
すると、アミは、いつものアミでなく、光っていたのです!
彼は、並外れた精神的高揚感を持つ、光り輝く存在に変貌していたのです。
僕は、汚れた、小人、昆虫、微生物になった気分でした。
その光に満ちた穏やかな瞳の強さに耐え切れず、下を向いてしまったほどです。
アミは変貌していたのです。
普通の子供のように見える仮面をとり、本当のアミを見せたのです。
輝かしく、神々しい存在でした。
隣で泣きじゃくるビンカも、同じように顔を上げられませんでした。
「どうして本当の自分を見せなかったの?」
僕は下を向いて、自分の汚い、無礼な勇敢さを正当化するための無駄な検索をしながら尋ねました。
すると、アミの笑い声が、その場のドラマを消してしまったのです。
「何を言ってるのかわかりません。
私を見て、何か変なところがあったら言ってください。」
ゆっくりと、そして恐る恐る、僕たちは顔を上げ始めました。
そこには、当たり前のように微笑む彼がいたのです。
彼は、もうあの光り輝く存在ではなく、単に僕たちの小さな宇宙の友人でした。
いや、彼は、もう同じではなかったのです。
「もう一人の彼」の記憶や感覚が、まだ僕の中に残っていましたから。
今の彼のいつもの姿さえも、変貌したアミ、神のアミへの、入り口を示していました。
彼の姿は元もままでしたが、その後ろに奇跡的特徴を持つ存在が、隠れていることを、否応なしに思い知らされたのでした。
ビンカは、彼の方へ進み、彼の前にひざまずこうとしました。
そして、「あなたの偶像を崇拝させてください。」と言ったのです。
彼は、笑いながら、彼女がひざまずくのを防ぎ、
神性は目には見えません。
親密な間柄、内なるコミュニケーションの孤独の中で、瞑想や祈りの中でだけ、その見えない存在の前に、尊敬と謙遜のしるしとして、ひざまずくことができるのです。

たとえ、より大きく、より高度であったとしても、兄弟の前で、することではありません。
さあ、この船の別の部分をお見せしましょう。
そこでは、至高の神性とコミュニケーションをとることができます。
彼は、僕たちを司令室の後ろのスライド式のドアに案内し、それを開けました。
部屋は、ごく小さな明かりが1つ照らしているだけで、暗闇の中にありました。
そして中に入ると、
「私たちの船には、すべてこのような部屋があり、船の人数に合わせて大小さまざまな部屋が用意されています。」
彼がドアを閉め、薄暗がりに慣れてくると、細い柱で床に付けられた4つの椅子が、部屋の両側に2つずつあることに気がつきました。
奥の小さな照明の前に、ひざ掛けのような細長いクッションもありました。まるでチャペルにいるようでした。
アミの声は、より厳粛な口調になり、
「奥の方にひざまずいてもいいですし、ご希望であれば椅子に座ったままでも結構です。
ここでは、瞑想するか、祈るか、どちらかです。
私達にとって、より良いのは瞑想です。
祈りにおいては、私たちは二人ですが、瞑想では『神聖なる臨在』と一体となり、その中に溶け込めるのです。
私たちは跪くことを選びましだ。
必要だったのでしょう。
僕たちがクッションに落ち着くと、アミが何かを引き起こしました。
すると、ピンク、ゴールド、ライラック、スミレなど、さまざまな色が壁一面に踊り、混ざり合いながら、想像以上に美しい色彩で室内が柔らかく照らされました。
異次元にいるような印象でした。
ビンカは、その様子を魅力的な笑顔で見つめました。
目を閉じて、自分の中にいるのか、外にいるのかわからない、とても大きくて穏やかで心地よい存在に身を委ねたいと思うようになったのです。
恐らく最後に考えたことは、自分が宇宙船に乗っていることに気付くことでした。
少しずつ、自分が創造の中にいることを感じるようになりました。
その後、僕の意識を満たしたのは思考ではなく、知性を通さず、僕の存在の核心にまっすぐ届く経験でした。
もはや考えるのではなく、強烈に生きていたのです。
すると、金色の光が僕を包みました。
しかし、この光は存在であり、突然、この存在が、僕自身であることを理解したのです。
大きく、大きく、無限で、永遠で、純粋に意識的な至福を感じていました。すべての答えを持っているからこそ、何も疑問が浮かばなかったのでしょう。


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