Ami 第11章-水面下①

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青い大きな湖にさしかかりました。
その上を帆船やモーターボートが滑るように走っています。
土手では、様々な世界の人々が水中や浜辺で楽しく遊んでいるのが見えました。
その爽やかな澄んだ世界に、僕も浸ってみたいと思ったのです。
「それは、出来ません。」
「僕の微生物が原因なんだよね。」
「その通りです。」
そこには桟橋があり、豪華なヨット、小さな手漕ぎボート、ペダルボート、セイルボート、モーターボートなど、あらゆる水の乗り物がありました。
そして、それに自由に乗りに来る人たちもいたのです。
また、大小さまざまな美しい透明な球体や、水上自転車、マリンバイクなど、さまざまなタイプのものもありました。
ジェットスキーを楽しむ人や、大きな凧やパラグライダーで飛ぶ人を引っぱる船もありましたた。
「ここでは何でも自由に使えるんだね。」
「もちろんです。」
「ほとんどの人が豪華なヨットを探すと思うんだけどね。」
「それは間違いです。
多くの人はペダルを漕ぐのが好きだし、小さなボートやサーフボードで遊んだり、水を身近に感じたり、運動したりする事も好きなのです。」
スキューバダイビングの道具を使って潜る人もいました。
「なぜこんなにたくさんの人が楽しそうに遊んでいるの？
今日は日曜日？」
「ここでは毎日が日曜日です。」
と、アミは笑いました。
「水中では何をするの？
銛で魚を突くの？」
アミは僕の質問に驚きましたが、すぐに理解したようでした。
「釣りですね......。
弱い生き物を追いかけて殺す？
いや、ここでは誰もそんなことはしません。
ここは善良な世界なのです、ペドロ。」
「そうなんだね。
ただ想像しただけなんだ…。
じゃあ、彼らは水中で何をするの？」
「探検、出会い、人生を楽しんでいます。
あなたは、湖の底に行きたいですか？」
「うん、でも船から出られないって言ったじゃない。」
アミは何も言わず、ウインクしながら船を湖のほうに走らせました。
そして、僕たちは、その水晶のように輝く水の中に飛び込んだのです。
水中世界が現れたのには、とても興奮しました。
多くの人や乗り物が水面下を移動していましたが、ほとんどが、あの透明な球体を使っていたのです。
すると、潜水眼鏡をかけ、足には水中フィン、背中には小さな酸素ボンベを背負った子供が近くを通りました。
僕たちの顔を見ると、にっこり笑って船に近づき、窓のガラスに鼻をくっつけ、おかしな顔をするのです。
アミは笑いましたが、僕の世界では水中に潜っている時に、潜水艦のUFOにそんな自信満々で近づかないだろうと思いました。
でも、どうやらあの人たちは、僕たちとは違って、見知らぬ人に恐怖心いっぱいで生きているわけではないらしいのです。
湖の底に、さまざまな色の光を放つ巨大な透明ドームが出現しました。
なんと、水中のその大きな泡の中では、呼吸ができるのです。
そして、そこにはレストランのようなものもありました。
中にはテーブルがあり、小さなバンドやアーティスト、ダンスフロアもありました。
ある人は陽気な音楽のリズムに合わせて踊り、ある人はアイスクリームや食べ物、飲み物が置かれたテーブルから、アーティストを眺めながら手を叩くのが見えました。
「ここでもお金は必要ないの？」
「もちろんです、ペドロ。
前にも言ったように、ここにはお金がないのですから。」
「それなら、ここは天国よりいいよね！」
「私たちは『空の上』にいるのです.....。
天国にとても近いのでは？」
そんな世界に住むことが、どんなに素晴らしいことなのか、だんだんと解かってきたのです。
「この特権は勝ち取らなければなりません。」
とアミはそう言いました。
僕たちは、奇妙な魚や植物が生息するその湖の底をゆっくりと進み続けました。
すると、藻と珊瑚の間にそびえるピラミッドが現れたのです。
「何これ、沈没したアトランティス？」
僕は驚いて尋ねました。
「あれは水中研究施設です。」
「この辺りにサメはいないの？」
「サメもピラニアも、ヘビもクモも、野生動物もいません。
人間に対して攻撃的なものや毒を持つものは存在しないのです。
ここは進化した惑星なので、原始的な種はありません。
そういう種は、進化していない世界にしかいないのです。」
「わあ！ここはなんて上質で優雅なんだろう。」
「しかし、それは偶然そうなったのではなく、我々の遺伝子工学者や生態学者が何千年もの間、自然を助ける役割を担ってきたからなのです。」
「自然を助ける？」
「そう、砂漠に美しい庭園や公園が作られるようにね。」
「なるほどね。
このとても進化した魚は何を食べてるの？」
僕は、ある種の隠れた羨望を込めて、こう尋ねました。
「あなたの星の牛や馬と同じ植物です。
このような世界では、生きるために動物を殺すことはありませんし、また、他の動物を食べることもないのです。」
「なるほど、だから君は肉を食べないんだね…。」
「何が言いたいのですか？
悪気はなかったのですが。」
とアミは笑いました。
「私は動物界に属していますが、正確には動物ではありません。
もちろん死体は食べませんがね！
あの罪のないヒヨコや豚や牛を殺すなんて、なんという残酷なことでしょう。
そう思わないのですか？」
それを聞くと、残酷な行為に思えてきたのです。
そして、もう二度と肉は食べないと決めました。
「食べ物のことだけど......。」
僕は、お腹が空いたので、そう言いました。
「お腹空きましたか？」
「すごくね。
何か美味しい地球外の食べ物があるんじゃないの？」
「もちろん、あそこを見て下さい。」
彼は、コマンドチェアの後ろにある棚を指差しました。
そして、僕がそのスライドする蓋を持ち上げたのです。
小さな食料庫に、合板のような素材の容器がたくさん並んでいて、奇妙な印が付けられていました。
「青い点のあるものを開けてください。」
気密性が高いようで、どうやって開けるのか分かりませんでした。
アミは、そんな僕の困惑を笑い飛ばし、「その青い点を押すのです。
それはただの装飾ではありません。」
と教えてくれました。
そうすると、蓋がそっと持ち上がったのです。
薄い琥珀色で、どこか透明な、色の薄いレーズンのような、木の実のようなものが出てきました。
「これは何？」
「１つどうぞ。」
それは、スポンジのような柔らかさでした。
少しだけ舌先にのせて食べてみると、かなり甘かったのです。
「どうぞ食べなさい。毒ではありません。」
アミは、僕の動きを見逃さず言いました。
「私にも１つください。」
僕が容器を持って行くと、彼はその果物のようなものを１つ取り、腕を伸ばして、遠いところから口の中にうまく放り込んだのです。
僕は、その狙いと技術に驚きましたが、何も言いませんでした。
彼は、美味しそうに食べました。
ぼくも少し噛んで、じっくりと味わったのです。
アーモンドのような、クルミのような、ヘーゼルナッツのような、そんな味でした。
それはとても繊細で、僕の好みの味でした。
既にもう抵抗がなくなっていたので、２口目からは、絶妙の味に思えてきたのです。
「おいしいね！」
「3～5個以上は食べないで下さい。
タンパク質が多すぎるのです。」
「これは何なの？」
「ミツバチのハチミツ みたいなものです。」
 彼は笑いながら言いました。
「僕は好きだよ。
おばあちゃんに少し持って帰ってもてもいい？」
「もちろん。
でも、容器はここに置いて行ってください。
そして他の人には見せないように。
そして、全部食べるのです。
少しも残さないでくださいね。
約束ですよ。」
「約束するよ。
うーん ... 美味しいね。」
「私の味覚としては、地球のおいしい果物ほどではありません。」
「どの果物？」
「あなたがアプリコットと呼ぶものです。」
「好きなの？」
「はい、美味しいですね。
私の世界ではとても喜ばれているのです。
私たちは、それを私たちの土壌に適応させようとしましたが、まだその特別な味を作ることはできていません。
だから地球のアプリコット農園には、UFOが頻繁に出没しているのです。」
と、アミは、赤ん坊のような笑い声を上げたのです。
「君たちは......それを盗んでるってこと？」
僕は大変驚いて、こう尋ねました。
「盗む？盗むって何ですか？」
 彼は知らないふりをしているのだと思いました。
「もちろん、他の人のものを取ることだよ。」
「なるほど、物質的なものへの執着、所有物、利己主義ですか。
そうなると、私たちの世界の『悪い習慣』を避けることができませんね。」
と彼は、また笑いました。
「私たちは、果物でいっぱいの木から、5個か10個くらいのアプリコットを『盗む』のです。」
僕は何か気に入らなけど、ちょっとおもしろいと思ったのです。
「果実でも100万ドルでも、盗むことは盗むことだよ。」
と僕は彼に言い返したのです。
すると「なぜ地球上では、必要な人がお金を払わずに、それを取るようにしないのですか？」
とアミはとても面白そうに尋ねました。
自分の質問がどれほど馬鹿げたものに聞こえるか、彼はよく知っていましたから。
「アミ、正気なの？
何も得られないなら、誰もわざわざ働かないよ。」
彼は、僕たちをバカにしながらも、ユーモアを交え、非難することなく、厳しいことを伝える特別なスタイルの話術を持っていたのです。