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リンについて*透析患者さんの検査結果*

前回のカリウムとセットかのように看護師から「気をつけてくださいね」と注意されることが多いリン。
今回はそんなリンについてのお話です。
採血結果では、P、またはIPと表記されていると思います。

 リンって何?!
リン(phosphorus:P)は、教科書的に言うと

骨や細胞膜、DNAなどの構成成分であり、細胞内のエネルギー代謝やシグナル伝達などに関わる、生命維持に重要なミネラル、とあります。

途中からなんか難しいけど、とりあえず人の身体に必要不可欠っぽい、ということがなんとなく感じられます。

リンの量は、体重の約1%!(だいぶある…)

そのうちの85%が骨に存在しています!←ここ重要!!!

体の中のリンはほぼほぼ骨にあるということですね。

食事や飲み物からの摂取で、尿として排泄されます。

体に吸収される分は、腸管から吸収されています。

なぜ透析患者さんはリンが上がってしまうのか?

 活性型ビタミンDの話

先ほど、リンのほとんどが骨に存在しています、とお話ししました。

実は骨って毎日生まれ変わってるんです。

古いのが壊れて、また新しい骨ができて…(このことを骨代謝といいます)

この骨代謝に、リンは大きく関わっています。

腎臓から出されるホルモンである活性型ビタミンDという子がいるのですが、

この子に誘導されて骨の構成要素であるリンは腸管から吸収されて骨にたどり着けるんですけど、

腎臓が悪くなると、そもそもこの活性型ビタミンDが出てこなくなってしまいます。

骨までのガイドさんを失ったリンは、吸収してもらえず、体の中をさまよってしまうんです。

その結果、血液中のリンが増えて、採血結果でリンが上がってしまいます。

そもそも排泄できない。

そしてリンは尿として排泄されます。

腎機能が落ちてくると、上手に尿が作れないし、尿量も減ってきます。

本来排泄されるべき分のリンも体の中に残ってしまいのでリンも上がってしまいます。

リンの基準値は??

透析患者さんのリンの標準値は
3.5〜6.0mg/dLとされています。

6.0mg/dL以上は高リン血症といわれます。

実はこの高リン血症がだいぶやっかいです…!!

リンが多く含まれているものは?

リンは肉や魚、インスタント食品や乳製品、食品添加物などに多く含まれます。

食べるもののほとんどに、リンが含まれているようなもんです。

普通の食生活をしてると、リンを摂らないようにするのってほぼ無理なんですよね。

そのため、リンの吸収を抑える薬がたくさん開発されていて、患者さんによっては3〜4種類もリンを下げる薬を飲んでいる方もいます。

高リン血症になるとどうなる??

透析患者さんは、慢性的にリンが高い状態が続きやすいです。

また高リン血症は、通常症状がありません。。

え?ならよくない??と思いがちですが、そこが厄介なところです。

先ほど、リンは骨に多く含まれている、という話をしました。

リンは骨の材料になるんですね。

血液中のリンが多い状態が続くと、基本的に骨になるリンは骨じゃない場所で骨になろうとします。

つまり、血管の壁などにくっついて固くなっちゃうんです!!

(これにはカルシウムも関係するのですが、それはまたカルシウムの記事で!)

固くなることを石灰化といいますが、本来固くなってほしくない場所で固くなっちゃっていることを異所性石灰化といいます。

 実は怖い血管の石灰化

急に怖い話になってしまいますが…

透析患者さんが亡くなる原因の第一位が「心不全」と言われています。

(ちなみに2位:感染症、3位:脳血管疾患)

リンが高いことが続き、心臓の弁や、心臓の周りの血管に石灰化が起きることで、

心臓の弁の動きが悪く(心弁膜症という)なり、心不全を起こしやすくなります。

つまり、リンが高いことは死因第一位の心不全に直結するというわけです!!

私たち看護師が、特に症状もないのに「リン高いですよっ」ってうるさいのはそーいうことなのです。

 患者さんに気をつけてほしいこと

検査結果をまずは毎回確認!

もし高かった場合、(6.0を超すような場合)何を食べたか頑張って思い出してください。

主に乳製品や魚・肉、インスタント食品などでリンは上昇します。

ピンとこない場合は栄養士さんや看護師に相談して、一緒に解決策を見つけましょう。

リンが高い患者さんへの対応(医療者の方へ)

 まずは原因を一緒に探す

リンは多くの食材に含まれているのでなかなか管理が難しいと思います。

ただ、原因が分からないと対策するにもしようがないです。

その患者さんは好きな食べ物や飲み物、日常的に食べるものを聞いて、何でリンが上がってしまっているのか一緒に考えましょう。

 具体的な解決策まで提示する

いろんなものに含まれているからこそ、「気をつけてくださいね」だけではまあ改善できません。

朝ごはんのパンにつけるバターやマーガリン+ヨーグルト+チーズみたいな理想的な朝ごはんではリンは上がり放題です。

原因が分かっても、そこから何をどうすればいいのか患者さんは分かりません。

栄養士さんにもアドバイスをもらうのがいいと思いますが、何をどのくらい減らすのかまで考えましょう。

患者さんの嗜好や生活習慣も大事に

患者さんの好きなものやこれだけはどうしても食べたい!!というのもあると思うので聞きながら解決策を見つけるのが一番です。

食習慣は結構生活に染みついているものです。

私は朝コーヒーを飲まないと1日が始まりません。

それを突然やめろと言われても「いや無理だし」ってなります。

患者さんが実行できそうな具体策を示すのが大切です。


今日のところはここまでです。

それではー!


coffee no ki./ushi.