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仇になる付加価値

昨日は出張であった。

元々違う部署の人と同行して、
その人の運転する社用車で行く予定だったのだが、
昨日の朝になってその人のコロナ感染が判明。

急遽私が一人で電車で行くことになった。

車ならば1時間ちょっとの距離でも
電車なら2時間ほどかかってしまう。

しかし、その後のアポのことや
直帰できるメリットから電車を選んだ私は
会社で昼食を食べることをあきらめた。

昼食と言っても私はいつも自分で作った弁当を
持参しているので(ボイルチキンとブロッコリーだけだが)
それを職場の冷蔵庫にいれて翌日食べることにした。

11時頃に職場を出て、12時半ごろに
目的地まであと少しというところで
昼食をとることにしたわけだが、
目的地は少しこじゃれたオフィスの多い街中である。

私が一人で入れるような店がパッとみても
見当たらない。

謎にオシャレなカフェや少々お高めのイタリアンなど
明らかに私が一人で入れないお店ばかりなのだ。

しかし、迷っているような時間もない。

どうしようかと少し歩いていると
一件のロッテリアを発見した。

こんなこじゃれたところにロッテリアとは有り難い。

実際、その場に合っていないせいか、
昼時にもかかわらずあまり人はおらず
座席も余裕で座れそうである。

昼食を食べるという目的でいうならば
実に10年ぶりぐらいに私はロッテリアに入った。

わざわざ昼食を食べる目的と書いたのは
家族でショッピングモールに出かけた際に、
時々お茶をする目的で入ることはあったからである。

目的はふるポテ。

紙の袋の中に入れられたポテトに
3種類ぐらいの味から選べるパウダーを入れて
その袋を振って味を絡めて食べるというものであるが、
これが子供たちに非常に好評なのだ。

もちろん食べておいしいというのもあるが
日ごろやってはいけないと言われる行為に分類される
袋に入れた食べ物を振るという動作が
彼らにとっても面白いらしい。

そんなロッテリアで昼食として何を食べようか
メニューを見ると、
最大手のM社と同様にハンバーガー、ポテト、ドリンクの
セットが一番オススメなようであった。

オススメ=早く出る という解釈で問題ないなら
今の私にはこれしかない。

そう思い、揚げたチキンの入ったバーガーと
ポテトを選んだのだが、
ポテトと店員さんに言ったとき、
「ふるポテか普通のポテトどちらにされますか?」と
聞き返されてしまった。

普通のポテトならM社でも食べられるし
恐らく両者での有意差はないだろう。

せっかくロッテリアに来たのならふるポテにしなければ。

そう考えた私は「ふるポテにしてください」と答えた。

そして案の定、すぐにセットが用意されて
商品を受け取り、座席で食べ始めたのだが、
ここで私はあることに気が付いた。

今日は私がポテトに粉を入れて振らなければならない。

先ほども書いたように紙袋に入れられたポテトに
粉を入れて振り混ぜる作業であるが、
これがなかなかに音が出るのである。

静かにできなくもないのだろうが、
粉をキレイに混ぜようとすれば
少々大きめに振る必要があり、
ガサガサという音が響くのである。

家族でいるときならなんてことないのだが、
スーツ姿のアラフォーが一人で紙袋をガサガサと
音を立てて振っている様子は
何だかとても滑稽な気がして、
私は一瞬躊躇してしまった。

とは言え、何もしないことには味のないポテトを
食べることになってしまう。

そこで、意を決して粉を袋に入れて、
できるだけ静かに袋を振ってみた。

しかし私が思っていたよりも響く音。

周りには黙々と食べ進める人たち。

何とかポテトを振り終えて味のついたポテトを
食べ始めたのであるが、
何だか今度は妙なことを気にしている自分が
とても滑稽に思えてきた。

それと同時に、私と同じように
ポテトを振ることを恥ずかしいと感じる人も
案外いるのではないかと思った。

私の認識が間違っていなければ
ふるポテはロッテリアの差別化要素の一つである。

ある意味ウリになるポイントなわけだが、
それが特定の顧客によっては仇になっているのだ。

では、このような場合はどうすればいいのだろうか。

例えば、店員さんが「よろしければ振りましょうか」と
聞いてくれればいいのではないだろうか。

居酒屋でよくある生絞りサワーなどで
半分に切られたグレープフルーツと絞り器を
置くだけのお店と、
「よろしければ絞りましょうか」と言ってくれる店なら
間違いなく私は後者を選ぶ。

それは絞るのが面倒だからである。

それと同じようにロッテリアも
ポテトを振るという動作を選択性にしてくれれば
一人で食べに来た人も何の気兼ねもなく
振るポテを楽しめるのではないだろうか。

そんなことを考えながら、店の様子を見ていると
とても少ない人数で店舗を回している様子が
見えてきた。

この状況に店員さんにポテトを振る手間を
お任せするのも何だか忍びない気がする。

私の案はそっと心にしまい、
有難く本日のnoteのネタにさせて頂いた。

付加価値になると思ったものが
逆に仇になってしまうこともあることは
商品開発に携わる人間として肝に銘じておかねばならないと
感じさせられるエピソードであった。

この記事を書いていた思い出したのだが、
M社が1999年のミレニアムイヤーに出した
小さなチキンがあった。

その商品名が「ゆく鳥、くる鳥」というような
名前であったが、
当時学生だった私はそれを若い女性の店員さんに
伝えるのがとても恥ずかしかった記憶がある。

口に出さねばならない商品名は
恥ずかしくないものを選ばなくては
ならないのも重要なことであろう。


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