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トーマスと共同体感覚

先日息子が小さい頃に使っていた
おもちゃや道具を知り合いの男の子に
譲る機会があった。

息子ももう小学5年生になり
生意気なことも言うようになったが、
あんなおもちゃで遊んでいた時代があったのかと
親としては感慨深い気持ちを味わっていた。

仮面ライダーシリーズのおもちゃは
既に私がメルカリで売却してしまい、
アンパンマン関連のおもちゃは
別の知り合いの女の子にあげたので、
主に残っていたのはカーズと機関車トーマスの
グッズばかりであった。

息子は小さいときこの両者にとてもハマった。

カーズの映画はビデオテープなら穴が開くほど見たし
機関車トーマスは録画したものを
ちょっとした暇があるといつも見たものである。

カーズはいかにもディズニーな感じの
サクセスストーリーがとても見ていて気持ちよく
大人がみても感動するシリーズ。

そして機関車トーマスは私が子供のころから続く
ロングランのシリーズである。

だが、息子が見ていた機関車トーマスは
人形劇のようなシリーズではなく、アニメ版。
私が子供の頃に見ていたシリーズよりも
幾分マイルドな感じのものであった。

前述したようにそんな機関車トーマスを
息子はしょっちゅう見ていたので
当然ながら私達親も見ることになる。

この話は色んな機関車が登場するので、
最初は誰が誰なのかイマイチピンとこなかったが、
数話見るとパッとみてどのキャラかが
判別できるようになってきた。

なぜなら、それぞれのキャラはとても
個性が強く、覚えやすいからである。

勝ち気で傲慢なゴードン
優しく弱気なパーシー
うぬぼれやでお調子者のジェームス

そのほかにも色んな個性的なキャラクターが
話の中に登場するのだが、
どの機関車(中にはクレーンなどもいるが)も
とある共通のメッセージを言葉に出すのだ。

それは「役に立ちたい」である。

機関車たちは走ることで別に収益を
得ることができるわけではない。

あくまで収益が出るのは機関車を運営する
会社の話であり、
この話の中でも機関車たちに報酬らしいものが
与えられるのを見たことがない。

機関車なので、石炭や水はチャージされるが、
それが食事の様に描かれることもないし、
インセンティブのような扱いもされていない。

だが、トーマスの世界の機関車たちは
自分たちの意思で動き、働いている。

そんな彼らを動かす原動力となるのが
「人の役に立ちたい」という気持ちなのだ。

言うまでもなく現実の世界では機関車は
人が動かす機械なので、
働き、人の役に立つことが大前提で
開発・製造されたものである。

なので、ある意味彼らが「人の役に立つ」と
思うことは、
作られたミッションを果たす事に他ならない。

役に立つことができなくなった
機関車がスクラップにされるという会話が
過去の話の中にあったが、
トーマス達機関車はそれを恐れるというよりも
どちらかというと純粋に「人の役に立ちたい」と
前向きな感情で言っているように描かれている。

そして、クセのある機関車たちはどれも
人の役に立てることでとても喜びを感じている。

時にはそれが自己満足で、雇い主である
トップハムハット卿に叱られることもあるが、
それでも彼ら自身は役に立ったという感覚を
とても大事にしているのだ。

この感覚はアドラー心理学で出てくる
共同体感覚に似ているのではないだろうか。

共同体感覚とは共同体の中にいる人に興味を持ち、
その人たちの役に立つことで得る貢献感のような
感覚のことを指す言葉で、
アドラー心理学の中では承認欲求ではなく
この共同体感覚を求めよと言われる。

一見すると共同体に対して貢献して
貢献感から来る幸せを感じることは
他者に承認されることで得られる承認欲求に
似ているように見えるが、
そこには決定的な違いがある。

それは、共同体感覚は他者の評価に
全く依存しないという点である。

つまり、共同体感覚は本当に周りに貢献できたか
どうかは関係なく、
自分が貢献したと自己満足できるだけでOKなのだ。

承認欲求はここに明確に他社の評価が
入ってしまう。

この大きな違いがそこにはある。

機関車トーマスの登場人物はそれぞれ
与えられた仕事があるので、
それをちゃんと遂行しなければならないし、
うまくできなければ叱られてしまう。

ここには間違いなく他者の評価は入ってしまうが、
自分が「役に立った」ことを感じられる指標は
あくまでそれぞれの機関車の中にあるのだ。

勝ち気で傲慢なゴードンはその機動力を活かし
急行列車として乗客を運ぶこと、
トーマスやパーシーはそのコンパクトな
ボディの特性を活かし、
小回りが求められるような仕事を的確にこなす。

それぞれやっていることは全く違うが
皆がそれぞれで貢献した感覚をもとめて
日々動いているのである。

その様子が何だかとても素敵に見えて
当時の私は息子と一緒に機関車トーマスを
見るのがとても好きだった。

仕事に行くと、嫌でも人の評価を気にしなくては
ならないシチュエーションが出てきてしまう。

会社員である限り、
組織の意向には従わなくてはならないし
上司に認められなければ立場も危うくなる。

私達はそんな他人の評価軸で自分の貢献度を
測りがちであるが、
私達に必要なのは貢献したと感じられる
自分の評価軸なのではないだろうか。

久々に機関車トーマスのグッズを見て
かつて思っていたことを思い出してしまった。

最近職場で色んな変化が起こり、
私なりに思うことが色々あるが、
これはそんな私に自分軸の評価基準を大切にせよと
天から来たメッセージなのかもしれない。

今日も自分なりの形で貢献感を
味わっていきたいと思う。

ちなみに機関車トーマスの中で
私の一番のお気に入りはトーマス思いの友人
パーシーである。

パーシーは緑の小型機関車で
決してパワーも強くないし、
どちらかというと怖がりなタイプで
顔も何となく幼い感じなのだが、
いざという時に頑張る名シーンが
お話の中には沢山ある。

私も決してパワフルではないし、
思い切ったことをするタイプでもない、
そして、実年齢よりも若く見られることが多いが、
実はパーシーに自分を重ねているのかもしれない。

もう録画は消してしまったが、
久々に機関車トーマスを見たくなってきた。

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