葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「出口はどこですか?」は最終話まで毎日投稿します。 どう…

葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「出口はどこですか?」は最終話まで毎日投稿します。 どうしようもなくなって詩を吐き出すこともありますが、書きたいものは小説。小説を読んでくださる方々に心から感謝しています。ありがとう

マガジン

  • 【詩など】苦しみの産物

    人を喰う詩らしいので、閲覧注意です

  • 極秘任務の裏側

    軽快でドタバタな一ノ瀬たちの活躍をぜひ!【全18話】

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【小説】出口はどこですか? 第13話

Prev……前回のお話  真尋が予約してくれている店は分かりづらい場所にあるらしく、駅前で待ち合わせることになっていた。駅の東口を出て右側、円状のベンチがふたつ並んでいるだけの、小さな広場に午後6時。沙樹と滉大はここを「丸いとこ」と呼んでいる。真尋にもつい、「丸いとこね」と言ってしまったが、ちゃんと通じていてなんだか嬉しかった。  相変わらず、沙樹は真尋より先に待ち合わせ場所に到着した。真尋が遅刻したことは、たぶん一度もない。沙樹の到着が早過ぎたこともない。それでも、必ず沙

    • 【小説】出口はどこですか? 第12話

      Prev……前回のお話  沙樹は混乱する頭を落ち着かせるために、一度目を閉じてみた。  こいつは、なんの話をしているのだろうか。真尋が恋愛感情を知らないだって? 正直、自分はそれに関して否定することはできない。むしろ納得すらしてしまう。しかしそれをなぜこいつから聞かされているのだろうか。恋人だと知っていながら……こいつ、どういうつもりで――。 「本人が気づいてないことを、なんでお前が知ってんだよ」  ここに来て、初めて滉大が口を開いた。 「それをこいつに言って、お前どうした

      • 【小説】出口はどこですか? 第11話

        Prev……前回のお話  風車の丘から車に乗り込む際、沙樹はユウヤが指をさしていた遠くの建物に目を遣った。何も知らなければ、ただの白い豆腐のような建物だが、今の沙樹にはユウヤの弟が眠る、大きな四角い卵殻のように見えた。なぜ卵殻などと思うのだろう。不思議とそれは、病人が眠る建物には見えず、息づくなにかを覆う大きな殻のように、沙樹は感じた。  見たこともない、なんなら存在すらさっきまで知らなかったユウヤの弟が、長い間、悪夢の中で彷徨っている姿を想像して、どうにかして救ってあげた

        • 【小説】出口はどこですか? 第10話

          Prev……前回のお話  月曜。仕事を終え、沙樹はエレベーターを降りると、吹き抜けになった広いロビーに出た。午後7時半。今日はもう少し早く上がることもできたが、チームリーダーから提出した資料のチェックがなかなか返ってこなくて、結局いつもとそれほど変わらない時間になった。それでも、忙しい時期は終電ぎりぎりになったりもするので、この時間に上がれるのはありがたい。飲料メーカーの商品企画という仕事は、他社だったらもっと忙しいのかもしれない。沙樹は流行やニーズのリサーチ能力を買われて

        【小説】出口はどこですか? 第13話

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        • 【詩など】苦しみの産物
          7本
        • 極秘任務の裏側
          19本

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          【小説】出口はどこですか? 第9話

          Prev……前回のお話 「行くわけ、ないだろ」  折原の沙樹を見る目は不気味だったが、迷うこともない。行かない理由はたくさんあっても、行く理由などひとつもない。そんなこと、折原もわかっているだろうが。 「まあ、そうだよね。そりゃそうか」  折原は沙樹から目を逸らし、寂しそうに笑った。こういう顔を見ると、ますますこの人がわからなくなる。沙樹は妙な苛立ちを感じた。 「あれは異世界の扉なんかじゃなく、出口だって言ったのはあんただろ。この先は無だって、あんた言ったよな? そんなの聞

          【小説】出口はどこですか? 第9話

          【小説】出口はどこですか? 第8話

          Prev……前回のお話 「えっと……」  折原は困惑しつつも、笑みは絶やさなかった。 「出口の噂話が知りたいと」 「おお。その手の話、よく耳にするが、出口ってのは珍しいからな」 「なるほど」  桧山はナッツを一粒口に放り込み、嚙み砕きながら折原を見上げている。表情からは読み取れないが、噂話をワクワクと楽しみにしている顔には見えない。だからこそ、折原は少し警戒しているのだろう。ユウヤに吹き込んでいたようなノリにはなれないようだ。デマを吹き込まれたユウヤの前で、折原は桧山になん

          【小説】出口はどこですか? 第8話

          【小説】出口はどこですか? 第7話

          Prev……前回のお話  そんな話、聞くな!  戦意なんて残っていなかったが、わずかな抵抗を目に宿して、沙樹は折原を睨んだ。ユウヤは突然のことに動揺している。 「どうしたの、沙樹君。いつも興味なさそうに黙ってたのに。ついに我慢できなくなっちゃった? そんなにやだったん? こういう話」 「いや……」  あんなこと、言うべきではなかった。言葉を発するつもりなんてなかったのに。 「大丈夫だよ、沙樹君。都市伝説だって! まさか沙樹君が本気にするとは思えないけど。噂話だから、こんな

          【小説】出口はどこですか? 第7話

          【小説】出口はどこですか? 第6話

          Prev……前回のお話  昨夜はまったく眠れなかった。思えば、途方もなく長い一日だった。滉大から起こされ、平和に男同士の休暇を楽しんでいたところから、真尋の誘いで久しぶりのデート。そこら辺までは多少浮かれたり沈んだりすることはあっても、心を乱されるようなことはなかった。二軒目、星形の月に行ってからだ。帰り際に制御不能の感情吐露、そしてそれを目撃されただけでも立ち直れない大事件なのに、問題はその後だ。出口。無。夢だったと信じたい。いや、夢でなかったという証拠なんてないのだ。夢

          【小説】出口はどこですか? 第6話

          【小説】出口はどこですか? 第5話

          Prev……前回のお話  どういうこと?  動悸が激しいのに、呼吸は止まっているようだった。頭部には酸素も血液も足りないようで、沙樹は自分がパニック状態なのか放心状態なのかの区別すらできなかった。  絶対に他人に見られたくないものを、絶対に見られたくない人間に見られた。そこまでの現実で十分ダウンを取られているのに、追い打ちをかける衝撃の謎パンチ。  「出口の場所、君も知りたいかい?」  店内であれだけ話していれば、折原の耳に入っていてもおかしくはない。酔っ払いの戯言だ。

          【小説】出口はどこですか? 第5話

          【小説】出口はどこですか? 第4話

          Prev…前回のお話 「いらっしゃ……おお、珍しいね」  星形の月の重いドアをくぐると、空いたグラスをトレイに乗せてフロアを歩いていたユウヤが振り返り、沙樹の後ろに真尋の姿を見つけて、嬉しそうな声をあげた。  前回ふたりでこの店に顔を出したのは、いつだったろうか。常連の人たちには関係も知られていて、つき合い始めの頃は、よく揶揄われたものだ。それでも真尋はまったく動じることはなかったし、沙樹もそういうノリは学生の頃に慣れきっていたので、酔っ払い相手に照れたり、ムキになることも

          【小説】出口はどこですか? 第4話

          【小説】出口はどこですか? 第3話

          Prev……前回のお話  待ち合わせ場所は、前に行ったことのあるカジュアルなイタリアン「こんにちボーノ」だった。星形の月と同じく、沙樹の最寄り駅にあるその店は、駅から少し離れた住宅街にある。真尋とふたりで見つけた店で、あれはたしか二回目のデートだったか。三回目だったかもしれない。四回目ではないはずだ。そんなに数えるほどデートは実現していないから、必死に思い出そうとすれば全部思い出せそうだった。  イタリアン。まだ明るいけど、たぶん夕飯だよな? こんなことなら、ファミレスで「

          【小説】出口はどこですか? 第3話

          【小説】出口はどこですか? 第2話

          Prev……前回のお話  土曜の朝。せっかくの休日だというのに、沙樹は電話で起こされた。 「え、今何時?」 「9時過ぎ。寝てた?」 「おー……」  電話の主は滉大。中学からの友達で、多分世間でいうところの「親友」ってカテゴリーに分類される程度の仲である。とはいっても、沙樹も滉大も「おまえは俺の親友だぜ」と熱い握手を交わすような人間ではないので、ずっとなんとなく一緒にいるうちに「多分この先もこんな感じで一緒にいるんだろうな」とお互いがなんとなく考えているような、そんな仲である

          【小説】出口はどこですか? 第2話

          【小説】出口はどこですか? 第1話

           目覚ましが鳴る。午後5時。仮眠室のベッドは硬いし狭いし、正直、寝心地が良いとは言えない。  また、あの夢をみた。遠い、遠い、悲しい記憶。夢だけれど、夢じゃない。あなたが届けた悪夢なら、いつまでも彷徨えるのに。  時間に余裕もあるし、のんびり店の準備をしよう。仮眠室の薄い扉を開けると、何の変哲もない細い廊下。軋む階段を降りる前に、隣の大きな扉を振り向き、そっと手を触れる。重厚感のある、黒鉄の、誰も知らない特別な扉。どんな手を使ってでも、必ず連れ戻してみせる。待っていて。  は

          【小説】出口はどこですか? 第1話

          【詩】守護天使

          くだらない 吐き棄てなければ崩れてしまう 全ての光を錯覚にして どろどろに塗り潰す 小さな虫けらの抵抗は 暗い引力に届くだろうか まだここに 立っていたい 自分の足で 立っていたいのに 虚しく叩き落とされるなら 優しい破壊に手を貸そう 口の裂けた守護天使 貴方の異常なシナプスが愛おしい 気持ちいいね 熱い舌が記憶を舐めあげて さあ 地の底へ案内しよう 何度も聞いた 奴の声 そもそも貴方という存在は? 不快の種という自覚はあるのか? 排除される前に自ら進んで? 退室するべき

          【詩】守護天使

          【死ンダ君モ愛オシイ】 あとがき的なやつ

          この記事は「死ンダ君モ愛オシイ」を読み終えた方のみ、お読みください。なんとなく綴ってみた、「あとがき的なやつ」です。 最初から最後まで、一貫して問題作として仕上がりました。だいぶ尖っていましたね。途中で丸くならずに、尖ったまま終えることができて、そこは満足です。なかなか伝えたいことが伝わらなかったようで、悔いが残る部分もありますが、魂を込めて丁寧に練り上げた作品なので、思い残すことはありません。まあ、連載のリスクではあるのですが、数ヶ月も前の伏線なんて覚えてないよなーってい

          【死ンダ君モ愛オシイ】 あとがき的なやつ

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第28話【最終話】

          Prev……前回のお話  んなわけねぇだろ!!  一矢は大声で叫びながら、K町のゴミ溜め通りを抜けた。周囲のゾンビ達がチラッと振り向くが、彼らにとっては日常のことなので、驚きはしない。それどころか、ぼったくりバーの案内人が声を掛けてくる。うるさい。うるさい、うるさい! お前らもアズサの話で惑わせるつもりか? 知らないくせに。なにも知らないくせに!  なんでこんなことになったんだ。あの女に会って、何をしようとしてたんだっけ。間違ってはいないはず。正気じゃないって? 何を飲

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第28話【最終話】