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キラキラカレシ マキオ11|現実と妄想の境目

魂の純度はことばの使い方にあらわれる。


親友と彼女と

マキオが大学時代に所属していたサークルの写真をみせてもらった

グループの中にひときわ目立つ細身の美人さんがいる。
わたしは思わず「わあ!この人キレイ!」と言った。

すると、マキオは少しもったいぶったような言い方でこう言った。

「ああこの子ね。ワタベと、付き合ってる」

ワタベさんね!すこし前に紹介してもらったマキオの親友よね。彼ってモテるんだ。

「まあね。でもこの子、可哀想でなぁ」

ん?かわいそう?

「そ。最初はかわいい子だなぁって。でもワタベとくっついた。それから、『あたしはいいから、いいから』って感じ。サークル仲間と距離とるようになったんだ。飲み会とか一切来ないよね。なーんか可哀想だよ。かわいいけど。可哀想になぁ」

その子の話をする間、マキオは30秒に1回は「可哀想」を連発した。

彼女がなぜ仲間と距離をとるようになったか具体的なエピソードは1㎜も出ない。
マキオはオウムのようにただ「可哀想」とくりかえす。
しかもほんのり嬉々としている。

彼が何を言ってるのかさっぱりわからなかった。

ただ、この時の様子から察したことをひとつあげるとすれば。
マキオにとっては「仲間たちと居る」が正解で「仲間から離れる」は不正解。だから不正解で可哀想な子…という固定された価値観があるらしいってこと。

マキオは、ノリはいい。
でも会話中に「????」なことが非常に多い。
仕方ないのでその場ではテキトーに流し、後から考える。
もともと、とことん考えたい性格だったわたしはさらに考え込むようになった。


何に満足する人か

「可哀想」と決めつけて見下す態度をとるマキオ、マキオの親友、その彼女。
3者のあいだで何があったのか、そんなことわたしには知る由もないし興味もない。

だがマキオは?
親友であるマキオはすくなくとも関係者だ。
そこそこ深いつながりはあるはずなのに、現実のエピソードや彼や彼女の心情にはまるで言及がなく、注意を向けてすらいない様子が見て取れる。マキオは親しい人の気持ちにもあまり興味がないようだ。

ふだんの彼の考え方は、評価軸が一本あるのみ。
「上か下か」
シンプルにそれだけだった。

勝ちか?負けか?
優位なのはどちらで不利なのはどちら?
おかしなことを言ってるのはどちらで、冷静沈着クレバーなのはどちらか?
誰が損して、誰が得してる?
上位の者が正義、下位の者は黙って従え。

それが基本的なマキオの世界認識だ。
彼は「上」であることに異常なまでにこだわりをもっている。

そしてそれは向上心ともすこし違った。
「可哀想」とオウムのように連呼するだけでもいいらしい。
シームレスに自己欺瞞を伴うものだった。

妄想的な「上」でも構わない、そういった根本的な性向があのカオスの中心には渦巻いていた。



*モラハラ・ポイント

  1. 見下すためにサラッと自己欺瞞

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