ヘーゼルナツコ

アーティスト&文筆家。家族のこと、仕事界隈のこと、世のうたかたを実体験をつづりながら当…

ヘーゼルナツコ

アーティスト&文筆家。家族のこと、仕事界隈のこと、世のうたかたを実体験をつづりながら当事者としての視座と解像度で。最近、古都に移住したので毎日を観光気分で楽しんでます。趣味はスイーツ探検。ただいま英語勉強中。

最近の記事

キラキラカレシ マキオ14|青空タッグマッチ

嵐の前のしずけさ わたしからはもう連絡しなかった。 季節はすこしずつ春へ向かい、窓の外の青空がほんとうにきれいだった。 ところが。 あれから3日間くらい音信不通になった後、またマキオがふらりと現れた。 「なんかオレのネェちゃん、話あるって。今から行ける?」 (・・・なんて?) うっかり削除ボタンを押して前回までの展開を全消ししちゃった? そんな唐突さでマキオは言う。 彼と話している時によく流れる脳内BGMがある。X‐ファイルのテーマだ。 そしてこの時ばかりはそれに

    • キラキラカレシ マキオ13|悪魔の正体

      スリルと悪魔 マキオは避妊しない男。 彼はふだんからよく自分のことを悪魔と形容した。 「スリルをとるのがオレ」 「悪魔と言われるのは最高のホメ言葉」 己について「君臨する何かしら」というイメージをもつ男、マキオ。 実際は? 彼のスケールからして悪魔は言い過ぎだ。 でも「誇大妄想とはどんなものであるか?」を人に説明したい場合にはマキオがちょうどいい見本として役立つ。 真の彼を知る人なら10人中10人が言うだろう。 「マキオか、あれは外側だけだ」 告知と悪魔 話を戻

      • キラキラカレシ マキオ12|解釈の自由

        橋を渡っていたよくばりな犬は、川に自分と同じような犬が肉をくわえて歩いているのを見た パニック お湯が・・・出ない! こんな時どうする?どうしたらいい? わたしは不安におそわれた。 なんなら軽くパニックだ。 とても寒い日。 マキオと出かけていて帰りがすっかり遅くなってしまった。 すぐに体をあたためたくて湯舟を張ろうとしたら。 お湯が出ない。 いや水の通る音が・・・しない? どうやら水道管が凍りついてしまったもよう。 あわてて業者を調べる。 引っ越してきたばかりの

        • キラキラカレシ マキオ11|現実と妄想の境目

          魂の純度はことばの使い方にあらわれる。 親友と彼女と マキオが大学時代に所属していたサークルの写真をみせてもらった グループの中にひときわ目立つ細身の美人さんがいる。 わたしは思わず「わあ!この人キレイ!」と言った。 すると、マキオは少しもったいぶったような言い方でこう言った。 「ああこの子ね。ワタベと、付き合ってる」 ワタベさんね!すこし前に紹介してもらったマキオの親友よね。彼ってモテるんだ。 「まあね。でもこの子、可哀想でなぁ」 ん?かわいそう? 「そ。

        キラキラカレシ マキオ14|青空タッグマッチ

          キラキラカレシ マキオ10|退屈の檻と日常の檻

          『チャーリーとチョコレート工場』に登場するウィリーウォンカとその従業員である小男たち、閉ざされた世界で彼らも夢をみる? なぜ逃げない 友達に会おうとすれば決まってマキオのジャマが入った。 外出した途端、なぜだかマキオから電話が入るのだ。 瞬間、わたしの気持ちはしぼみ全てが嫌になって帰宅したくなる。 ストレスから自分にブレーキをかけるようになっていった。 外出を避ければジャマされない。 なぜすぐに逃げなかったかうまく説明できないけれど、ひとつだけ言えることがあるとすれ

          キラキラカレシ マキオ10|退屈の檻と日常の檻

          キラキラカレシ マキオ9|カオスの住人との距離の取り方

          影響されまいとすればするほど、気づけばそっくり同じ軌道をたどる。 それがわたしたちだった。 約束しない宣言 マキオとは何の約束もしないほうがいい。 ネタを提供しないことだ。 「女子友に紹介したいから週末あけといて」などとマキオに頼んだとする。すると彼はかならずそこに何かぶつけてくる。 前日くらいに、 「あっ、ごっめーん。行けないわ」 「え?なんか計画とかあった?」 嬉々とした様子でそう言う。 「怒ってる?だってもう予定入ってて、みんなもオレ次第なとこあるし。だい

          キラキラカレシ マキオ9|カオスの住人との距離の取り方

          キラキラカレシ マキオ8|小さきものを攻撃する男

          時間は戻らない。 残酷にもこれだけは不変の真理だ。 黒猫 わたしは猫を飼っていた。 マキオはわたしの猫を嫌っていた。 ウチに来るたびにマキオは猫を追いまわし、猫たちがやるように「シャーーーー」と言った。 はじめは「変わった関心の示し方だな」くらいに思っていた。 無邪気な人だけど猫にもそうなんだな。 毎度「シャーーーー!」なんて、ふざけてるよ、ね。 のん気に見ていたのだけど。 それはだんだんエスカレートした。 マキオがふざけているのではないと気づいたのは、悲しい出来

          キラキラカレシ マキオ8|小さきものを攻撃する男

          キラキラカレシ マキオ7|外界を見ようとしない者はどちらか?

          追っかけ 千と千尋の神隠しに登場する坊は言う。 「行ったら泣いちゃうぞ」 「坊が泣いたらお前なんか ばあばが殺しちゃうぞ」 構ってちゃんも度を超せばカワイイを通り越してコワイ。 マキオがわたしを追って引っ越してきた。 約束したのに 一緒に過ごす約束をした日にマキオが現れなかった。 電話に出ない。 翌日も連絡なし。 さすがにおかしい。 ・・・事故にでも? あんな人でも事故にでも遭っていたらと思うと心配になる。 何度か電話する。 結局それからずいぶんたって、電話が

          キラキラカレシ マキオ7|外界を見ようとしない者はどちらか?

          キラキラカレシ マキオ6|転勤、引っ越し、そして背負ってきてしまったもの

          人生を変えるには、①仕事をかえる、②つきあう人間をかえる、③住む場所かえる、といいらしい。 つまり人生って環境次第ってこと。 訪問者 ということで じゃーーーん 引っ越しました! 新しい家、職場、仲間、家具も新品! ぜんぶ新しい。 文字通りの心機一転。 新居でひとりウキウキ踊っていたところ玄関のベルが鳴った。 ・・・誰?ご近所さん? 出てみると。 マキオが満面の笑みでそこに立っていた。 え。(あ、油断した笑顔作らなきゃ) えーと? どした? 今日はここまで

          キラキラカレシ マキオ6|転勤、引っ越し、そして背負ってきてしまったもの

          キラキラカレシ マキオ5|理想と現実の差をどう埋めるか?そこに愛はあるんか?

          道で拾ったブリトーの袋が周囲の人々には料亭の弁当箱に見えている、という現象に名前をつけるとしたら? キラキラと現実 フツーに言えばそれは彼氏のように見えるのかもしれない。 でもちっとも嬉しくない。 友達からは、 「カッコイイ彼氏羨ましい」 「あなたたちってテレビドラマみたい!」 と言われてしまう。 そうじゃない、実際ぜんぜん違う! 何度か友人に言ってみたことがあるが、ポカーンとされた。 実際の彼を知らない友人には愚痴れないが、彼はそんな人ではない。 わたしの理想が

          キラキラカレシ マキオ5|理想と現実の差をどう埋めるか?そこに愛はあるんか?

          キラキラカレシ マキオ 4|マウントをとらずにいられないのはなぜ?

          バッターボックスに立ったことのないコーチから指導を受けたがる者はいない。だがバッターボックスに立ったことがないにもかかわらず指導したがるコーチは多い。 否定 足のケガが治りようやく外出できるようになったころ。 マキオの母親と姉が餃子を振舞ってくれるとのことで、二人そろってマキオの実家へ向かうことになった。 車中で、学生の頃にボランティア活動をしていた話をした。 マキオはこうコメントした。 「はぁ?ボランティア(笑)?なーに偽善者みたいなことしてんの?」「や、だって偽善

          キラキラカレシ マキオ 4|マウントをとらずにいられないのはなぜ?

          キラキラカレシ マキオ3|期待する人、期待に応えない人

          そもそも道に落ちていたブリトーなのだから多少汚れていようが当たり前だし、それを食べようと思った方の頭がおかしいのだ。 普通の人間ならまず拾わない。 わたしは拾った。 だから汚れが目についても何も言うまいと頭の片隅で思っていた。 不自然な要素 マキオには不自然なことが多い。 電話してもつながらない。 依然誰にも「彼女」として紹介されない。 車や部屋の中に女性の持ち物がある。 「あっそれ?バーに来た常連のお客さんの忘れ物」 という。 平日の夜に会い土日はほとんど会

          キラキラカレシ マキオ3|期待する人、期待に応えない人

          キラキラカレシ マキオ2|口裏を合わせろと言われたら合わせる?合わせない

          魔がさす瞬間 ほんの一瞬、誰にでも魔が差す瞬間というのはある。 あれから半年ほど。 ちょうど交際していた彼氏とお別れした直後だった。 わたしの心にはぽっかり穴があいていた。 そこへまたマキオから連絡が入ったのだ。 「仕事辞めて2か月間自転車の旅をしたんです。沖縄まで行ったんですよ。旅の話、聞きにきませんか?」 同居人が去った淋しさで落ち込んでいたときだった。 わたしは魔が差したように誘いに乗ってしまった。 再々会 マキオは地元のバーでアルバイトしていた。 友人と

          キラキラカレシ マキオ2|口裏を合わせろと言われたら合わせる?合わせない

          キラキラカレシ マキオ1|ある日突然、土産を持って現れた男を家に入れるか?

          ザワつく出会い 突然家に来るような男を家に入れてはいけない。 マキオとわたしは職場で出会った。 わたしは地味目な新社会人、マキオは笑顔爽やかインターン生。 歓迎会の席。 わたしの向かいに着席したマキオは「オレ手相見れるよ。見てあげる」とわたしの手を取った。出会って数日のことだ。 初対面の男女とはいえ年齢が近ければこんなもの・・・だった? そうだったっけ? 居心地悪さ半分で手相を見てもらったものの彼の占いは占いとはいいがたいおしゃべりだった。 (女子の手を握りたかっただ

          キラキラカレシ マキオ1|ある日突然、土産を持って現れた男を家に入れるか?